MONEY IS… vol.01 貧乏と芸術の間の千円札。 赤瀬川原平さんの、とても正直な「お金」の話。
糸井 赤瀬川さんが「お金をばら撒きながら歩いてた」
‥‥って話を、(南)伸坊から聞いたんですよ。
赤瀬川 あれね。
糸井 赤瀬川さんが「こんなもの、こんなもの」って
お金をばら撒きながら歩いてた、
ただ「銀色のお金」は、うまくよけてたって。
赤瀬川 細かいところは、ちょっと忘れたけどなぁ。
糸井 ま、「よけてた」のあたりは
伸坊がネタにしてる可能性が高いんですけど(笑)。
赤瀬川 でも、そのときの感覚はすごく覚えててね。

あの、安部慎一っているでしょ、漫画家の。
それと鈴木翁二と、それから南と‥‥。
糸井 みなさん、当時、
本意か不本意か「貧乏」を売りにしていた
人たちですね(笑)。
赤瀬川 そう、そういう金のない連中が集まって、
阿佐ヶ谷で呑んでたんです。
で、気づいたら、
安部慎一のところで、寝てたんですよ。
糸井 うん、うん。
赤瀬川 前の晩のこと、ぜんぜん覚えてなかったんだけど、
「赤瀬川さん、お金をばら撒きながら
 歩いてたんだよ」って言われて、思い出した。

なんか、別のものを探してたんだと思うんだけど
ポケットを探ったら、お金が出てきたんで、
よどみなく、躊躇なく、ポイポイって捨ててたの。
糸井 はぁー‥‥「貧乏」なのに。
赤瀬川 あの感覚は、いまでも覚えてますね。
糸井 なるほど、なるほど‥‥。じつはぼくも、
大学生1年の18歳のとき、1967年ですけど、
同じようなことをやったことがあるんです。

だから、その「お金を捨てる感覚」については、
ぼくもちょっと知ってるんです。
赤瀬川 糸井さんも、やったんだ。
糸井 飯田橋の法政大学の前にお堀があるんですけど、
真冬、そこに氷が張ってたんです。

で、その凍った水面に向けて石を投げると、
「チンチンチンチンチンッ!」って。
赤瀬川 ああ、氷の上をね。
糸井 それが、おもしろくて、おもしろくて‥‥。
でも、えんえんやってたら、
手ごろな石が、なくなっちゃったんですよ。
赤瀬川 それで?
糸井 ぼくは、その遊びを、
もっともっと、やっていたかったんです。
それで‥‥もう「エイッ!」という感じで、
はじめは5円玉だったかな?
赤瀬川 どんな気分でした?
糸井 もう、天からスポットライト当てられてるような。
赤瀬川 わかるな、その感じ。
糸井 でしょう?

お金を投げはじめてからは
その「チンチンチンチンチンッ!」って遊びを
本当にやりたいのかさえ、
わかんなくなってましたね、興奮してて。
赤瀬川 事件。
糸井 事件です。この感覚、オレ、一生覚えてそうだなって。
で、後に、赤瀬川さんのばら撒き事件を聞いたんです。
赤瀬川 糸井さんも、ねぇ‥‥。
糸井 最初は5円、で、次に10円、
最後に50円までいっちゃたところで、
バクチで「すっからかん」になるみたいにして、
やめたんですけど。
赤瀬川 ああ、戻ってこないしね、もうねぇ‥‥(笑)。
でも、気持ちいいでしょうね、うん。
糸井 赤瀬川さんも、酔ってたけど感覚は覚えてたんだ。
赤瀬川 うん、覚えてますよ、あの感じは‥‥。

で、オマケのような話をするとね、
その場にいっしょにいたキョウコちゃんって女性が
ぼくがポイポイばら撒いてたお金を、
あとから、一生懸命、拾ってたんだって。
糸井 あはははは、そうですか(笑)。
赤瀬川 南によるとね。
糸井 赤瀬川さんがばら撒き、キョウコちゃんが拾い。
赤瀬川 その部分については、
覚えてるような、覚えてないような感じだけど。
糸井 でも、その一部始終を「見てた」伸坊っていうのも
「伸坊らしい」ですよねえ。
止めもしないし、すすめるわけでもないという。
赤瀬川 南はね、明治時代の成金がやった話を確かめようと、
風呂場で一万円を燃やしてみたんじゃないかな?
それでも、とくに、なんにも感じなかったと思うよ。
糸井 ああ、お金持ちが、暗いところで明かりをとるために
お札に火をつけた‥‥みたいな話ですね。

でも、たしかにそうかもしれない、伸坊は(笑)。
赤瀬川 だよねぇ(笑)。
糸井 ぼく、あとひとつ、あるんですよ。
赤瀬川 ほう。
糸井 だいぶ、むかしのことなんで
自分からやめたのか、人に止められたのか、
記憶があいまいなんですけど、
「ヤギにお札を食べさせてる写真」を撮って
雑誌の表紙にしようとしたことが。
赤瀬川 ああ‥‥やめたの?
糸井 ええ、結局は、やってない‥‥と思います。
赤瀬川 それって、もう仕事してるころの話?
糸井 そうです、そうです。

つまり、そのときの気持ちも、どこか、その‥‥
「お金を捨ててみたい」
「お札を燃やしてみたい」という気持ちと
同じだと思うんですよ。

そしてそれらは、すごく「性」に似てるんです。
赤瀬川 性‥‥。
糸井 性、セックス。
赤瀬川 うん。
糸井 その「やってみたい」の距離感が。
赤瀬川 それは‥‥わかるなぁ。すごく、感じますね。

だから、ぼくがいろいろ描いたりして、
事件になっちゃったのも、
結局、性の話に似てるんだよなぁ‥‥。
糸井 描いたりして、事件になっちゃって‥‥はい(笑)。
じゃあ、そのお話を、うかがいましょうか。

<つづきます!>


2010-05-26-WED