はじめてカメラを買ったんです。その13 いい写真は、自分で撮った気がしない写真。

講師

菅原 「みんな、『いい写真』を撮ろうと
 しすぎなんじゃないかな」

司会

「なにが『いい』のかが
 わかってない気がします、わたし」
「同感ですー」
「ぜんぜんわかりません!」
司会
シェフ 「言われてみると、わからないかも。
 なにが『いい写真』なんだろね」
アロハ すごーく暗く撮れちゃった写真があるんです。
この写真なんですけど‥‥

菅原 これが、どうしたの?
とってもいいと思いますよ。
アロハ ちがうんです、こんなに暗くなかったのに
すごく暗く撮れちゃったんです。
シェフ そういうことか。
菅原 それはカメラがまんなかの
白い光源を感知して
それをきれいに撮ろうとしたんでしょう。
そのぶん、まわりが暗くなっちゃったんですね。
明るく撮りたかったら、
液晶画面を見ながら
「露出補正」をすればいいわけだけど、
でもね、冨田さん。
アロハ はい。
菅原 結果オーライでいいと思うんですよ。
これ、明るいよりも、
もしかしたら、いいかもしれない。
写真的かもしれないです。
アロハ ほんとですか?
おがわ うん。
シェフ 本人的には「うーん?」と
思ってるかもしれないけど。
アロハ いや、ビックリしたんです。
撮った後に、何でこんなに
暗くなってんのと思って。
シェフ 自分がいいと思う写真と、
他人がいいと思う写真は
一緒になんないもんですかねえ。
菅原 どうなんですかねえ。
ぼくもわからないです。
シェフ えっ、写真家はそれを
分かってるのかと思ってました。
だって展覧会を
やったりするじゃないですか。
「いい写真」を出すんですよね。
菅原 いや、でも‥‥うーん?
やっぱり、自分でも、
分かってないんじゃないですかねえ。
というか自分のことになると、
とりわけ、わからないものかもしれないです。
シェフ そうでしたか。
そういえばこのあいだ、
アニー・リーボヴィッツの
ドキュメント映画を観たんです。
巨匠と言われる彼女ですら、
写真集に掲載する写真を選ぶにあたっては
編集者の意見をかなり聞いてました。
部屋中に写真集用の写真を並べて貼って、
やっぱり悩むんだなあと思って。
ふーん!
アロハ アニー・リーボヴィッツって、
ジョン・レノンの写真を撮った人ですよね。
おがわ オノ・ヨーコさんに裸で抱きついてる。
シェフ そうそう(検索して)、
この写真撮った人です。
菅原 不思議なものでね、
いいなあ、いい写真だなって
自分で撮ったので思える写真ていうのは、
自分が撮った気がしない写真、
だったりするんですよ。
ああー!
菅原 そこには「自分」がいないの。
写真だけがあって、
別に誰が撮ったっていいっていうか、
別にオレが撮ってないっていうか、
そのくらいに感じる写真。
うまく言えないんですけど。
シェフ なんとなくですが、わかります。
菅原 「俺が、俺が」って撮った写真って、
撮った時に「いいじゃん」って思っても、
しばらくして見ると何かつまんないなあと思ったり。
ところが、それを人に、
これ、いいじゃんと言われたりして、
あ、やっぱいいのかなあと、
しょっちゅう、わからなくなってます。
でも、「いい写真は、自分で撮った気がしない写真」、
これはほんとにそうだと思います。
冨田さんが「ゆがむ」とか「暗い」と
言うんだけれど、
ぼくは、いいと思うんですよ。
写真、うまいと思いますよ。
アロハ やったー。
やったー。
菅原 撮る時の視点がはっきりしているんですよね。
この写真もおもしろいですよね。

菅原 この写真、スタイルのいい猫だなあと思って
撮ってるんだと思うんですが。
アロハ その通りです。
何頭身なの? っていうくらいのスタイル。
菅原 広角レンズで近づいたときならではのゆがみが
「足の長さ」を誇張することになって、
いい効果を生んだんですね。
シェフ あっ、これは吉本隆明さんじゃ?
アロハ そうでーす。
打ち合わせにうかがったとき、
お見送りしてくださったの。
とってもいい笑顔で見送ってくださったので
一枚、撮らせていただいたんです。
コウノ いいお顔ですー!
シェフ こっちまでうれしくなっちゃう笑顔だよね。
おがわ 足に貼ってあるカイロがまた!
菅原 すばらしいですよ。
アロハ わぁ、ありがとうございまーす。
菅原 冨田さんは、「わからない」ままでいいですから、
撮りたいと思ったものを
素直に撮っていきましょうよ。
僕もわかんないし、
自分のことは分かんなくていいんじゃないですか。
「ほぼ日」のみんなみたいに、
いいとか面白いとか言ってくれる人がいたりすると、
いいですよね。
普通はなかなか言ってもらえないものね。
シェフ みんな、下手だ下手だとか言いながらも
楽しそうですよね、撮るのが。
菅原 やっぱり楽しくないとね。
そういう意味では写真にセオリーは、
ないと思うんですよ。
こういうふうにしなければいけないとか、
こういうときはこういうタイミングで、
とかっていうのもないし。
楽しければいいんじゃないかな。
その気分が写ったら、
多分きっといい写真なんだと思う。
可愛いーって思ったときの
可愛さが写ったらいいんであってね。
可愛いーと思わないで撮っても、
そういう写真にならないです。
(つづきます!)
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2008-11-05-WED