#11 無遠慮? 遠慮? 撮る撮られるの距離の巻

講師

菅原 「今回からまたテーマごとに
 いろいろお話しさせていただきます。
 『ほぼ日』のみなさんの写真を参考に
 させていただこうと思います」

今回の部員

シェフ 「同じ機械なのに
 持つ人がかわると写真も変わる。
 おもしろいですねー」
山下 「じぶんのカメラをひとがもって
 いい写真を撮っていたりすると
 ちょっとクヤシイ気もします」
シェフ 弊社に、あややという、
カメラをダンナさんに買ってもらったのに
すぐ飽きて2回しか使わないもんだから、
取り上げられて、
ダンナの会社の備品になってしまった、
という、カメラに興味がないのがいるんですよ。
それがですね、弊社の山下が買った
キヤノンのEOS KISS(一眼レフカメラ)に、
50mmの単焦点をつけた状態で渡したら、
いきなりノリノリで撮り始めて。
しかも、ものすごい距離まで近づいて、
バシャバシャ撮るんですよ。
その作例をいくつかごらんください。






▲撮影:あやや
すごい(笑)
山下 近づきすぎです。
よわります。
シェフ この近づきすぎというのが
この人の個性なのかなあ。
いっぽう。
山下 どうも、相手によっては
被写体に寄っていけない
モギというのがおりまして。
シェフ ほどほど近づくときもあれば。


▲撮影:モギ
山下 相手によっては、
とくに糸井さんには、いつも遠巻き。


▲撮影:モギ
菅原 なるほど。
シェフ この違いって、
なんなんだろうなー。と。
山下 ちなみにモギが使っているカメラは
GRデジタルです。
菅原 そうだね、これは、
一眼レフと、広角単焦点カメラの
違いが、まず、よく出ていますよね。
一目瞭然なのは、背景。
GRは、すみずみまで、
全部ピントが合ってますね。


▲撮影:モギ(GRデジタル)
山下 背景、ピント合ってます。
菅原 こっち、合ってませんよね。


▲撮影:あやや(EOS KISS)
シェフ 合ってないですね。
菅原 背景がぼんやりしているぶん、
人の顔が引き立つっていうのもありますよね。
山下 ああ〜。
菅原 けれど、逆に言うとね、
その分空気が、気配が写ってない。
そういうふうにも言えるわけです。
けど、もぎさんのほうは気配が写っている。
会社の感じであるとか。
シェフ なるほど〜。
菅原 そんな風に解釈したら、
どっちがいい写真かっていうことでは
なくなりますよね。
どちらも個性がある。
山下 そして、モギが、
「どうしても近づけない」って
思いこんでるだけということですかね。
菅原 たしかに近づけてないのも
あるのかもしれないですけど、
まずカメラの違いがすごく大きいと思います。
一眼レフとGRのようなカメラの
一番の違いっていうのは、
一眼レフはこう見るんですよ。
シェフ ええと今、指をさして突き刺す形をしました。
菅原 で、GRは、
こう見るんですよ。
シェフ 集音機のように、気配を自分に引き寄せる感じに
表現なさいました。
菅原 はい(笑)。
その違いですよ。
シェフ そっか。モギは、
自分はそのものを撮ろうと思って、
「えいや!」って行ってるんだけど、
カメラが捕らえるものは、
広い範囲からまんべんなく受け取っているので、
自分が思った感じが
そこに入ってないような気がしちゃうんじゃない?
山下 うん、うん、うん。
菅原 そのかわり、周りの、
モギさんがたぶん撮ったときには
気がついていなかった、
周辺の感じっていうのが
写っているわけですよ。
山下 人がこう、ワイワイって感じだとか。


▲撮影:モギ
菅原 そうですね。この周辺の人なんか、
たぶん見えてないはずなんですよ。
撮っているときには。
山下 ああ、見えてないでしょうね。
シェフ 撮っているときは糸井さんだけ見ていて、
菅原 だけど、見えていないはずのものも、
入ってくるんです。
それでいいんです。
シェフ これでいいんだ。
山下 いいんだ!
菅原 うん、いいんです。
それはそれでいいんですよ。
写真の偶然じゃないですか。
シェフ あの、今思ったんですけど、
モギの撮った写真を載せると、
読者から、そのものへの反応とともに、
「ここに写っているあれはなんですか?」って
意図とちがう質問をよくいただくんですよ。
菅原 そうでしょうね。
それと比べて、
あややさんの写真はね、
主題がはっきりしているわけですよ。
シェフ この人が撮ると、
みんな困りつつ嬉しそうみたいな、
なんかね、この人だけなんですよ、
こういう写真撮るのは。
菅原 ほお〜。そういう人いますよね。
ぼくから見ても、羨ましいですね。
シェフ 弊社内で「無遠慮カメラマン」と呼ばれてます。
菅原 羨ましいです、そういう人。
山下 ちょっと面白いのは、
そんなあややにも
「この人は少し怖い」
という気持ちがあるらしくて(笑)、
たとえばほら、永田を撮った写真は。


▲撮影:あやや
菅原 ああ、なるほど。
山下 棚の手前から撮ったりして。
でも遠慮のない人には、
こうなんです。






▲撮影:あやや
シェフ 負けてるよ。
山下 もうぶつかりそうな距離にくるんで、
怖いんですね、ちょっと。
で、闘おうとするんですよ。
でも最後、負けます。
(笑)
シェフ でもね、はたから見ると、
あやちゃんと山下さんの関係が出てるし、
心の距離が写っているのかな、
ぼくは好きですよ。
菅原 そうでしょうね。
なんかそれも才能なんだよね。
ぼくはそれがあんまり得意じゃないんですけど、
わりとこう、スルスルスルって、
気がついたときには目の前にいて、
「あっ!」みたいな人、いるじゃないですか。
そういう人なんでしょうね。
シェフ だからあややには、
「一眼レフ、買いなよ」って勧めてるんだけど、
ダンナに「どうせすぐ飽きるんだから、
もう、買っちゃだめ」って釘を刺されてるらしいです。
菅原 いや、大丈夫ですよ。
ぜひ挑戦してください。
人にマネのできないことだしね。
(次回、#12 向こうから近寄ってくる写真とは? 
に、つづきます!)
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2008-04-28-MON