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『MOTHER 3』の開発が中止になったことについての
糸井重里・岩田聡・宮本茂の座談会 その8

 
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宮本:
そこで、いままでのを引き継いでやるとなると、
ほとんど糸井さんの分身みたいに
仕事をしてきた人を何人か育てて、
そういう人が、糸井さんの示すアウトラインを
引き継いでやるようにしないと、
ちょっと無理だったのかなあと思いましたけどね。
だから、そういう形を取るには、
岩田さんが言うように、
3Dっていうのがそうなのかわからないし、
さっき言った、ノベライゼーションがいいのか、
映画がいいのかどうかもわからないし
改めて考え直したいんですけどね。

 
糸井:
僕の知らない難しいことが
どんどん増えていったんですよね。
つまり、エレベーターの仕組みって、
わかってて乗ってるじゃないですか。
でも、MDプレイヤーの仕組みって
わからないで聞いているんですよ。
で、そういうふうに、ゲームの生産の現場が
僕にとって、どんどんプラックボックス化するから、
過大に期待したり、
逆に言うと、何でそんなに前に進まないんだろう、
ってイラついたり・・・・
っていうのを、『MOTHER 2』のときに
既に経験してるんですよ。
これは僕はプロデュースできないな、
プロデュースではなかったんだけど、
べったりくっついてて、
このブラックボックスをどう動かそうってことは
もうできっこないな、と思ったんで、
解決したことのある人に引き受けてもらったんです。
それは、もう、岩田さんは
その後の運命についてはわかんないわけですから、
「やりましょう」って、
もうやる前提ですすんじゃったんですよ。
そのブラックボックスの中を全部のぞけて
顕微鏡使えるような人なんて
いないですからねえ。
 
宮本:
そこを、上手に製品らしく作ることが
MOTHERじゃなくて、
もうちょっと雑な作りでもいいから・・・・

 
岩田:
だから、糸井さんにしか書けないものが
いっぱい詰まっているものが
MOTHERだってことを、
もっとわかっていれば……
今はそう言えるんですけどね。
そういうふうに割り切って、
その中で最高のそういうものを作るには
どういうふうにまとめたらいいのか、
っていうアイディアはなくて、
やっぱり病気にかかっていたんですよ。

 
宮本:
『MOTHER 2』のときに、
『MOTHER』の方がよかった、
って言った人たちの意見を
もっと聞くべきやったのかもしれないって
思いますよね(笑)。

 
糸井:
いやあー(笑)。
聞いてても、『マリオ64』で遊んだ後で、
言えなかったな(笑)。
 
岩田:
言えなかった。
やっぱり、「これからのゲームが全部ああなる」
ってあのときに正直に思いましたから、
僕らがそういうふうに思うくらいだから
世の中にインパクトがあるわけですよね。

 
糸井:
(笑)そうです。
 
宮本:
だから「(ゲームが)ムービーになる」
って思った人たちもたくさんいて、
僕らは思ってなかったのは正しかったわけだけど、
それでも、間違ったんですよね。
「ゲームボーイになる」って言えば
よかったんですよね。

 
糸井:
ぼくらは「大食堂でありながら専門店の味」
みたいなものを作ろうとしたんですよ。
はるか向こうまで景色が見えなくなっちゃうくらい
広いんだけど、一つ一つの味は専門店の味、
っていうレストランを作ろうとしたんですよ。
「蕎麦屋の味」ってレストランを
作ろうとしたんですよ。
『ゼルダの伝説〜ムジュラの仮面』なんかは、
狭くしてうまいものを好きな人が来て食ってくれて、
「『うまかったよ』って言ってくれればいいや」
っていう。
あれ、狭さを最初に作ってますよねえ。
みんな、どこまでできるのか、
の夢に歯止めがないと、
俺たちみたいなことになる(笑)。
「よそはできてるじゃん」みたいな気持ちが
あったんですよ。
スクウェア方式だったり、
おんなじように遅れているドラクエだったり……
ドラクエの遅れは、すごく心強かったんですよ(笑)。
もうドラクエはコマーシャルしてますけど。
ドラクエよりよくしたい、
とか、つい思うじゃないですか。
それはねえ、思っちゃダメなんだよねえ。
違うものなんだから。
あと、「戦闘のしくみ」みたいなものを思いついて
また嬉しくなっちゃったんですよね。
「戦闘のしくみ」がどういうものなのかと言うと、
音楽で戦うことができるんですよ。
弾けない人も弾けるギターって
あったじゃないですか。
 
岩田:
『ジャミネーター』。

 
糸井:
そうそう、『ジャミネーター』が
組み込まれてるんですよ、戦闘に。
そう思えばいい。
で、リズムがきれいにとれて、
ナイスな音楽が奏でられたら、
戦闘がどんどん有利になっていく。
面白かったですよ。
だから、そこだけやってても、
『ジャミネーター』なんですよ。
 
──確かに「専門店」ですね、それは。
 
糸井:
バカですよねえ。
ぜったいできないことをやったわけじゃないんだけど、
無限の時間があればできた(笑)。
だから、正直言って、きょうまで僕は
「マザー3をなくしましょう」ってことの
感想を述べてないんですよ、1回も。
述べられないんですよ、いまでも。
わからない。
 
──そうですよね。
ものすごく落胆してるところを見たわけじゃないし、
どういう気持ちでいるんだろう? って思ってました。

 
糸井:
喜んでもないし、落胆もしてなくて、
いまの気分とそっくりなのが、
父親が亡くなったときです。
僕、長男だから葬式をやったんだけど、
ふつうだったんですよ。真冬でしたけどねぇ。
縁の遠い人ほど泣いたりするんですけど、
僕はねえ、ふつうだったんですよ。
で、葬式が終って、正月に里帰りして
こたつでテレビ見てたら、
はっと親父がいないことに気づいたんですよ。
っていうのに、そっくりで、
俺は、スタッフの子たちに悪いなって思うんだけど、
「糸井さんはどう思ってるんですか」
っていうのを聞きたくて
しょうがないらしいんですよ。
で、一部では怒ったりしてるらしいんだけど、
「早く何か言ってください」
みたいな気持ちらしいんだけど、
ほんとうに真っ白なんです。
だから、「どこがどうで失敗したのか」みたいに
距離を置いてしゃべることはできるんだけど、
「あなた自身はどうなの?」みたいなことは、
どこかで大妨害があったとか、
資金がなくなったとか、
すごい理由があったら、
怒ったり、憎んだりできるから言えるんですけど、
何て言うのかなあ、ほんとに
全部の立場がわかるんですよ。
そうするとねえ、どうしようもないんですよ。
いまでもねえ、
「きょう初めて感想を言えるのかなあ。
 流れの中で言えるのかなあ」
って思ってたんだけど、
やっぱり感想は出てこないんです。
「残念」って言葉って、
「念が残ってる」って言葉でしょ?
そのとおりなんですよ。
で、僕の考えとしては、
「次の方法を考える」っていうのが
僕のやり方なんで、
次の方法もまだ思いついてないから、
「これ、負け」
って言って終わりにするよりは
「負けてから、どうするの?」
って言うとこあるじゃないですか。
で、「どうするの?」に対して
そう簡単には答えられないですよね、
ゲームがどんどん大きくなっちゃってるから。
で、さっきノベライズと言ったけど、
それだってほんとにやろうと思ったら
大仕事なわけで・・・・。
ほんとに白紙。
だから、待ってた人には申し訳ないけど、
マザーってとりあえず、2までのもので
『MOTHER 3』って名前がついたものが
これからあるとしたら、
この『MOTHER 3』じゃないんだろうなあ。
途中まで作られた『MOTHER 3』は、
俺、たぶん、スタッフしか知らない話に
なるんじゃないのかなあって思うよ。
 
 
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