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『MOTHER 3』の開発が中止になったことについての
糸井重里・岩田聡・宮本茂の座談会 その6

 
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糸井:
もうひとつは、同じ土地でも、時間が経てば
変わるものですよね、ふつうは。
最初の最初に『MOTHER 3』の
アイデアが出たのは、
『MOTHER 2』を作っているときで、
(制作で)みんなが死にそうになっているときに
あるヤツに電話して
「3の構想が出来たんだよ!」
って迷惑がられたんだけど、
それは単純で、探偵ものがやりたかったんです。
ある都市を主人公にして、
ヘボ探偵がいて、浮気調査だとか
いろんなことして暮らしてる。
ナンパなやつで、
花屋の娘にちょっかい出したりとかして
依頼ごとに電車に乗って別の町に行ったり
図書館に寄って資料調べたりして、
ちっちゃい事件を解決しながら食うためのお金を集めてる。
そんなろくでもない探偵が
大きな殺人事件に巻き込まれて
話を解決していく、
というプロットを考えたんですね。
そのプロットにおいていちばん重要なのが、
同じ花屋の店員でも、
昨日会ったときと今日会ったときでは
話が違うということ。
それを綿密に積み重ねていく。
「さっき男が通りかかったわよ」
というのは、前の日ではないわけ。
でも、次の日、ほんとに通りかかったあとに
聞くと「通りかかったわよ」っていう。
都市が育っていく、みたいなゲームを考えたんです。
それを『MOTHER 3』のコアにして
つくりはじめたんですよ。
今までのロールプレイングゲームって
基本的にロードムービーなんですよ。
渡り鳥が、次から次へと新しい町に行って
なにかが起こる。
前の町に戻ったときには
もうその町の物語は済んでるから
「やあ、ごぶさたしてます」
というくらいなんです。
それを、何層にも積み重ねていって
時間ごとに人が育っていくという構造を
最初にやりたかったわけですね。
それを、主人公を変えながら、
あるワールド、世界が変化していって
その世界はいったい何だったんだろう、
ていうことで、最終章に向かう。
 
宮本:
そうすると今の『MOTHER 2』よりも
『ゼルダの伝説〜ムジュラの仮面〜』のほうが
似ていますね。

 
糸井:
そうなんです。ムジュラですよ。ある意味で。
 
岩田:
アイデアの根っこには、
共通しているものがあります。

 
宮本:
ムジュラは、骨組みができ上がる時点で、
その世界を3日間にしないとできない、
という判断をみんなでしたんですよ。

 
糸井:
その判断、3日間にあたるようなものは
ロードムービーと、ある都市とかって
混ぜていっちゃうこともできるし、
過去の誰かと今の誰かってのも違いますから
それを大転換することでできたんですよ。
たぶん、シナリオ的にはできたんですけど、
広いんです。広くてでかいんです。
登場人物もやたらに多い。
 
宮本:
町に住人が住んでいて、20人ぐらいが順序通りに
お話しに会わせて変化すると、
シーケンシャルに考えた場合、
20人ぶんの変化をつくればいいんですけど、
その流れに関係無い事象の反応までつくるとなると
あっという間に
100パターン以上つくらんとあかんからね。

 
糸井:
「立ち話を聞く」というところまで
入れたくなってくるわけですよ。
それはまあ、シナリオ的な問題なんだけど
そこに行動の様式を入れていったり、
イベントを入れていったり、
ああ、これがあれなのか! と思うために
その前にネタふりをしておいたり、
泣かせどころを入れるだとか
ほんとうにぜいたくに作っちゃったんですよ。
で、一回それを見ちゃうと
戻しにくいんですよね。
ここまでできているものは
これがよかったんじゃないかと。
とくにシナリオにからんでいる人達って
ひとつも落としたくない、とか
思っちゃうわけですよ。
俺なんかの方がかえって
これを落としても、違うことを足せばいいや、
って言えるんだけれど、
やっぱ、仕様書のようにストーリーがあったり
しますから。頑固になりますよね。
それまあ当然のことなんだけれど。
それが12章あるわけだから……
 
岩田:
それはMOTHERらしさを守るために
純粋にしていたことですからね。

 
糸井:
こんなとこまでつくってある、
バカだなあ……っていうのが
MOTHERフィーリングだから、
それはやりたいし、なんて言ってると、
すごいですよね。
まあ、ストップしている時期もあったけど、
これだけかかって、
宮本さんが6割できたと言うところまでできた。
だから「作れる」ということは
わかったんだけど、
ほんとにまともにやったら
あと2年、かかっちゃいますよね。
 
岩田:
今、確保できる人員だけでやったら
あと2年かかりかねないでしょうね。

 
宮本:
現状の、まとめようとしていた方向で行けば
1年以上はかからないとも言えるし、
2年でもできないかもしれないし。

 
糸井:
とんでもなかったんですよ。
いちいち、敵がもっている世界というのもあるし
その世界観、というのもあって
人から乗り物から建物からぜんぶデザインした。
世界をいくつも作っている、という構造だった。
ロゴマーク、いずれ発表したいと思ってますけれど
金属と木が接合して『MOTHER 3』と
なっているんです。つまり、まったく、
くっつきようのない別のものがくっついて、
あるヘンなものが、いやらしい美しさを出す、
というようなコンセプトがあったんで。
最初の仮タイトルが『キマイラの森』といって、
キメラがいっぱい出てくるんです。
別の生物どうしがくっついちゃったものとか。
そういう、乱暴さがあって。
同じようなもので説明すると、
『TOY STORY』で悪い子が
おもちゃをムチャクチャに組み合わせるでしょう。
あの世界が、敵の世界なんですよ。
あれ見たときうれしかった。
いたよ、こんなとこにも、って。
で、こっち側には、中世なのか西部なのか
わからないような、またヘンな世界があって
なぜそんなにヘンだったのかという事情も
最終的にわかるんですよ。
「ヘンだなあ……?」と思って11章やって
12章で「ウワーッ!!」て言うように
できていたんですよ。
いやなものなんですよ。
俺がほんとうに手が空いていれば
ノベライズしますよね……
紙芝居にしたっていいかと思った。
それで折衷案で、どうしても慌てて作るために
3章ぶっちぎって、
できてるキャラクターの絵を使って
紙芝居式にやっていけば
なんとかなるかなあ、とかの
アイデアも出たんだけれど、
それにするにしても、違いますよね。
 
宮本:
映画には?

 
糸井:
映画には、ならないでしょう……
でも、プレゼンテーションの機会があれば
してみたいなぁ。
ほんとにできるとしたら、ぼくは観たいもの、
その映画。
 
──さきほどハリウッド的という言葉が
出ましたけれど。

 
宮本:
画質と演出ということでしょうか。

 
糸井:
演出でしょうね。
驚くものが次々出てくる、という。
 
宮本:
たたみかけるように。

 
糸井:
クリエイティビティの連チャン、
というふうになりたかった。
絵を、後ろで見ているやつが
「なにこれ!?」って
ずっと言ってる、というのが夢なんです。
物語はずっと進んでいくんだけれど
昨日と今日と景色が同じ、ってんじゃなくて
ガラガラ変わっていって見える、みたいな。
欲が深かった。
 
宮本:
それを、64というハードでまとめきれなかった。
まとめる方法は、あったんですかね。
現実に64ゆえに動かないとか、
手ごたえの悪い部分というのはあったんですよ、
たくさん。
それを直すために、モデルの修正をしたり
システムをいじったりする時間というのが
何ヶ月もかかっていて
いまそれが100%解決できていたら
いいんですけれど、現状でもいくつかの
問題があって……。
それがさきほどの、Dolphinなら
できますよ、ということなんですけれど。
でも、その設計とか骨組みにしても
まだ不満足なところ、ありますからね。
しきり直したほうが、よかった。

 
岩田:
あと、自分で作りながら思ってたんですけれど
これまでゲームを作ってきた
いろんなチームがあったなかで
糸井さんという、もっとも言葉に関して
特別な能力がある人がかかわるチームが
3Dの世界でゲームをつくることに
どれだけこだわるべきだったんだろうか?
と、じつは、ものすごく思うんですよ。
去年の秋にポケモン金・銀ができたころに
まあ、ポケモンってゲームボーイのゲームですから
とうぜん3D表現なんてしなくって、
2頭身のキャラクターが
よくない表現で言えば「ちょこまか」と動く。
じゃあ、それはつまらないのか、
といえば、ぜんぜんそんなことはないし、
『MOTHER 2』を見かえして
糸井さんの書いたセリフを読むとね、
自分たちがものすごいエネルギーをかけて
3Dで実現しようとしていたことの意味、
っていうのが……まあ、あのときは
糸井さんも私も病気にかかりましたから、
3Dであるべきだ、
3Dでなくてはならないのだ、
って思っていたけれど、
いまもう一回、今の自分が
「糸井さんが新しい本を書いた」
と聞いたとき、そこ(3Dにするか、ということ)
すら考えなおしてもいいな、と、
ものすごく思いますね。
ありとあらゆるところにエネルギーをさく、
というのがたぶん『MOTHER 3』のやり方で、
それはもう、今や、非常に困難になってきている。
じゃあ、エネルギーをさくのはどこだ?
と決めてつくらないと、短い時間で鮮度が高いものに
商品として完成させられない。
あのときは、MOTHERというのは
メジャー感がテーマの商品だったし
制約が解き放たれた、というのがあった。
制約なしでつくるというのがコンセプトだった。

 
糸井:
「なんでもできるぞ!」って。
 
 
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