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『MOTHER 3』の開発が中止になったことについての
糸井重里・岩田聡・宮本茂の座談会 その11

 
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岩田:
私は、恥ずかしいっていうことの
後悔はありますけど
やめたことに対する後悔は
まったくありませんよ。
後悔してるとすれば、
前の時間の使い方とかいうことで、
やめることを決断したことは
正しかった自信がありますよ。

 
宮本:
やっぱり、いろんなものをつめこみたい
ってことが、無理だとわかっていても
まだやってて、
で、できるものを残していったんですよね。
はずしちゃダメなものを残すんじゃなくて
できるものを残していったんですよね。
だから、何か遊んでみて、
「まだちゃんとできてないけど、
 こんなにすごいの」
ってところまで行ってないから、
細々したところが目について、
あっちを直さなきゃ、
こっちを直さなきゃってことに
追われちゃって、
「惜しいところまで行ってるのになあ。
あと一歩なのに何か足りひんなあ」
と思って見てたんだけど、
それがその部分かもわからんなあ。
なかなかそう分析した通りには
できないんですけどね(笑)。

 
糸井:
できない!
 
宮本:
だから、ものすごく、「惜しい〜っ」
ってところにずっといるんですよ。
糸井さんが、ゲームづくりをやる意義がある、
何かここ(ほぼ日)の環境とか、
何かとつながっていることをやらないと、
違うものへの挑戦ではなく、
一番身近なものとつながっているようにしたら
面白いのになあ。

 
糸井:
そうなんですねぇ。
 
岩田:
ここで、糸井さんが日頃アウトプットしてることの
延長線上にあればいいんだけど、
なんか全然違うものじゃないといけないから、
離散的にポツン、ポツンとしか
糸井さんの姿勢が反映していかないんですよね。

 
宮本:
ここで話されてる仕切りがあって、
そこで強調される仕切りを使って
こっちでもしゃべるとか、
この仕切りと180度転換して話すにしても
基準があるので、
常にこれが生きてるんだろうし、
自分に直結してるから伝わり方が
熱いんだと思うんだけど、
なんか、糸井さんの一番熱い部分と
『MOTHER 3』への興味がだんだんと
離れていったような感じがしますよね。

 
糸井:
時間を全く区切っての仕事になってましたよね。
 
岩田:
MOTHER関係のお客さんが来るときだけ
脳みそを切り替えて・・・・

 
宮本:
っていうふうに、なっていったんですよね、
どんどん6年やってる間に。

 
糸井:
そうですね。
 
岩田:
それは、6年っていうのが
一番いけないんですけどね。

 
糸井:
でも、方法では解決しないことって
いっぱいありますよね。
「こういう方法を取ったらいいんじゃないか」
っていうような方法論でやってても、
大げさに言っちゃえば、
「魂を動かすようなものって、何なんでしょう?」
って話になりますよね、最終的には。
 
宮本:
それは僕の課題でもあります(笑)。
僕も、糸井さんの作ろうとするものに
100%関わったってことはないですよね、いままで。
100%関わっちゃうと、
糸井さんの仕切りじゃなくて
自分の仕切りで物を作りなおすことに
なってしまうんで、
それじゃあ、糸井さんとやってる
意味がないって思うんで。

 
岩田:
そうですね。
かぶっちゃいますからね。
私は、(糸井さんの仕切ったものを)
どう実現するかってことで、
『MOTHER 2』のときから入れたから、
かぶるとは思わないでやれましたけど。

 
宮本:
糸井さんにとって、『MOTHER 3』は
任天堂の『ゼルダ』とかに対して、
どういう商品であるはずだったんですか。

 
糸井:
任天堂には作れないものを
やろうと思ったんです。
 
岩田:
僕らが言ってたのは、
宮本さんがしなさそうなものをつくろう、
ってことなんですよ。

 
宮本:
それはどういうことですか?

 
糸井:
わけのわからないものを放り込める、
ってことなんじゃないのかと思います。
具体的に言葉にすると、
よくわからないんですが。
 
宮本:
少しはできていたんですよね。
だから、その引出し方なんですよね。

 
岩田:
いや、そういう要素は割と
多かったと思いますよ。
ただそれが上手に料理されて
完成されるところまで磨くのは
まだ遠いなあ、と。
だからそれをやるのに、
私は1年以上かかると感じたんです。

 
宮本:
この間『MOTHER 3』の
前半で遊んだときに、
あれ? って思ったんです。
自分じゃやらへんなあって思ったときに
そういう素材が全部できてると、
自分にそれをコーディネイトする仕事は
できるのかなあ、と思って(笑)。
自分が一番やらへんこと、
客として一番驚くことなんで、
この驚きを増幅させるっていう仕事って
プロデューサーとして
できるのかなあ、と思って。
「かぶったら意味がない」
っていうのとは別の意味で思ってたんですけどね。
それくらい、今回が一番距離を置いてたし、
1、2、3となるにつれて
どんどん離れていってたんで、
そういう意味では、そういう付き合い方も
ありかなあと。

 
糸井:
それは、ありますよね。
ハリウッドがそうじゃないですか。
前衛映画系の人たちを
急にあのでかい映画の監督に
したりするじゃないですか。
デビット・リンチだって
『イレイザー・ヘッド』を作ってた人だからねえ。
 
宮本:
エンターテインメント系の人が
最後まとめなおすんですかね。

 
糸井:
任天堂の田んぼで育たないタイプのものを
別にこっち側に山ひとつ切り開いて、
好き勝手にやってごらん、と
こっちで手綱を持っているというのは、
きっと宮本さんが外国のスタッフと仕事をするときは
そのやり方なんだろうけど、
そういう血の入れ替えみたいなことは
してるんだろうけど、それが、
もっと必要なんでしょうね。
あと、テレビの前で座り込んで
コントローラーを持ってる図っていうことの
意味がどんどん変わってきてて、
それが日常だった時代から
日常じゃなくなっていく時代に
どんどん変わっていくんでしょうね。
映画館に行って映画を見なくなって
ビデオ屋さんに行ってビデオ借りてきて
それで映画を見た気になる人が増えたのと
同じように、
コントローラーを持って、
お金で買ったソフトをはめ込んで
さあ、遊ぶかーって時代は
どんどんなくなっていくんですよね。
で、そんときにゲームっていうものは
どういうものなんだろう?
インタラクティブに画面の前で
遊ぶってどういうことなんだろう?
って考えると、
いままでの文脈じゃないところに
ぜったいヒントはありますよね。
『MOTHER 3』は、
「さあ、ゆっくり座ってください」
っていう最後のゲームを
作ったつもりだったんですよね。
 
岩田:
まだね、世の中がこんなに変わる前に、
糸井さんはシナリオを書きましたよね。
で、だから、
「この後はもう作れないだろう」
っていうスタイルで作ったのは確かですけど。
ただ、いろんな人の個性が
もっと商品に反映されてる方が
任天堂ブランドは豊かかなあ、というのがあって。

 
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