2011年5月26日のニュース  ブータン首相へのお土産を買いに、松島に行ってきました。
こんにちは、「ほぼ日」のコイケです。

「黄昏ブータン編」の旅の様子を
「気まぐれカメら」や「ただいま製作中」でも
お届けしておりましたが、
出発前、ブータン首相へのお土産を何にしようか
頭を悩ませていた私に
糸井から1通のメールが届きました。


イトイです。
松島の観光はいちはやく復活しましたが、
そこの土産物屋なども津波に直撃されて、
そこから立ち上がっての開店です。
こけしの店も、
商品のこけしがほぼすべて流されてしまいましたが、
ご主人がひとつずつつくってきて
売り場を構成できるまでになったのであります。
で、ブータン首相への土産は、この「こけし」です。
<宮城では蔵王こけしや鳴子こけしが有名ですが、
ここ松島にも「松島直秀こけし」があります。
温もりとひなびた味を生かしつつ、
一本一本に心をこめて創りあげた作品です。>

この店に、事情を話して、入手したいわけです。
で、これを誰か、買いに行ってこい!
写真も撮って、話もして、日帰りで、
月曜のブータン行きに間に合うように。
できることなら、
「ブータンの皆さん ありがとう」
というような文字も入ると
もっとうれしい。

松島の「こけし」をブータンへのお土産に。
糸井からメールを受け取った翌日の5月14日(土)
チーム黄昏、モギ、山口と一緒に
早速、松島へむかいました。

東京から一路、新幹線で仙台へ。
松島までは、
仙台駅からJR仙石線に乗り、松島海岸駅までの移動です。

杜の都、仙台に降り立った私たちを
笑顔で迎えてくれたのは
宮城県庁の山田康人さんと奥様の睦美さん。



山田さんは、被災した企業に対する
「個人(ファン)の応援の気持ち」をファンド化し、
再建のための資金調達のしくみを
有志の仲間といっしょにつくりあげた方です。

先日、奥野がレポートしていましたが
八木澤商店さんや、斉吉商店さんなどの取材に
なにかとご尽力をいただいたのが山田さんでした。

メールと電話でのやりとりで
本当にお世話になったのですが、
今回どうしてもお顔を見てごあいさつをしたい、と
おやすみの日にお時間をいただいてしまいました。

欅(けやき)並木の続く美しい街。
訪れた日は、快晴で、
新緑が風にゆれていました。



山田さんご夫妻おすすめの
LE CIEL CREMEでコーヒーをいただきながら
お二人とお話をさせていただき
心も体もほっこりとあたたまったところで
JR仙石線の駅へむかいます。



笑顔で見送ってくださる山田さんご夫妻。
すてきな朝のひとときを、ありがとうございました!
行ってきまーす。



電車にゆられること30分ほど。
海に近い場所になると、ところどころに
津波の爪痕が感じられる景色が増えてきます。



東塩釜駅より先は
電車がまだ通っていないということで
代行バスに乗り換えて松島海岸へ。





松島はどうなっているんだろう。
あえてみんな口にはしないけれど、
そんな思いを胸にしながら
バスにゆられ、
15分ほどで松島海岸に到着。



津波と地震の影響で
駅のまわりは
営業していないお店もたくさんありました。





海岸沿いを歩いて5分ほど。
ありました、ありました。
震災後に、いち早くお店を再開したという
「二八屋物産店」さんに到着。



店内にはたくさんのこけしが陳列されていました。



「いらっしゃい。」と
わたしたちをむかえてくださったのは
店主の本村直二郎さん。



「今、お昼だから
 ヨーグルト食べてたんだよ」

どうぞ、どうぞそのままお食事を続けてください。

店内を見せていただくと、このような商品も。



お食事を終えた本村直二郎さんにお話を伺いました。


ほぼ日 震災後、お店はいつ頃から再開されたんですか?
本村
直二郎さん
開店したのは4月の最後の土曜日あたりかな。
地震で入り口の2枚の戸がこわれて
そこからどどーっと水が入ってきたんだよ。
水が入ってきたら
こけしが何百本も流されちゃって、
松島中こけしだらけになっちゃったんだ。
ほぼ日 お店を拝見していると床も壁もきれいで‥‥。
本村
直二郎さん
水が1m30cm?40cmくらいまできたのさ。
すぐに山の上の神社に避難したんだよ。
ほらそこ、壁に水の跡がついてるでしょ。
ほぼ日 そうだったんですね。
でも、よくよく見ると床にも亀裂が‥‥。



本村
直二郎さん
この棚(こけしを置いてある棚)が
あとむこうに4つあったの。
この棚と同じように全部こけしが置いてあって。
地震で棚が下に落っこちてしまった。
避難してるうちに津波がきたから
こけしが全部流されちゃったのね。
電化製品も部屋もみんなだめになっちゃった。
避難していた神社から帰ってきたら
床がヘドロだらけでね。
店の中ばっかり掃除をしてもだめで、
道路の方の清掃からなにから大変だった。
自衛隊の方とか
ボランティアの若い人がたくさん
ヘドロをかきだしにきてくれて
こんなにきれいになったんですよ。



ほぼ日 そこから、ここまで。
本村
直二郎さん
全部きれいにするまでに
だいたい1ヶ月くらいかかったね。
棚を全部ひとりで釣り直して。
今は、そんなに品物がないから
徐々にいっぱいにしていくつもりです。
ほぼ日 こちらにもこけしがいっぱい並んでいたんですね。
本村
直二郎さん
そこの上に写真がいっぱいはってあるでしょう。
こけしの絵付け体験をしてくれた人たちを
記念撮影してはらせてもらっていたのね。
アルバム10冊分くらいたまってたんだよ。
でも、それも全部流されてしまってね。
前に絵付けをしてくれたお客さんが
ときどき写真を見に来てくれるの。
そのお客さんたちに申しわけなくて。



ほぼ日 上にはっていらっしゃったお写真が
残ったんですね‥‥。
ここにあるこけしは、
震災後に全部作られたんですか?



本村
直二郎さん
毎晩夜11時30頃まで
木を削って、絵付けをして
やっとここまで仕上げたの。



ほぼ日 毎晩そんなに夜遅くまで‥‥。
4月終わりにお店を再開されて、
ゴールデンウィークはお客さまはいかがでしたか?
本村
直二郎さん
ちょうどミヤネさんが来てくれてね、
あの看板を持ってテレビに映ったの。
それでお客さんがいっぱい来てくれました。



※よみうりテレビ 「ミヤネ屋」で
 松島からの中継があり
 糸井も番組を見ていました。
 ー5月2日の糸井のTwitterよりー
  松島の屋外をスタジオがわりにして、
  現地の生中継と1月前の映像の対比、
  福島をはじめとする東北各地からの
  中継を加えたワイドショー。
  今日の『ミヤネ屋』は、
  いままでありそうでなかった
  「ワイドショー」のいいかたちを見せてくれたと思う。
  拍手してます。
ほぼ日 それは嬉しいですね。
本村
直二郎さん
テレビの影響力はすごいね。
来てくださったお客さんは
大なり小なりこけしを買っていってくれて。
絵付けをしてくれたお客さんも
たくさんいたしね。
でも、ゴールデンウィーク終わったら
ぱったり‥‥。



ほぼ日 震災前、平日のお客さまの数は
どのような感じだったのでしょうか。
本村
直二郎さん
5月はね、ずっと人でいっぱいでした。
入梅にはいって、ちょっと数が減ってね
7月後半の夏休みから人でいっぱい。
すごくにぎやかでね。
ほぼ日 今日は、車の通りが多いですね。



本村
直二郎さん
車の通りが多いのは
この前の道路が45号線っていって
石巻に行く道で、
みんながここを通るの。
山の上にも三陸自動車道もあるんだけど
みんなこっちを通るからにぎやかなんだよね。
これから、
たくさんお客さまに
きていただけるようにしないとね。
ほぼ日 今日も観光客の方が
思っていた以上にたくさんいらっしゃる気が
いたします。
お店について、ちょっと訊かせてください。
「二八屋物産展」さんは、いつ頃から
お店をやっていらっしゃるんでしょうか。
ちなみにいま、
おいくつかお年を伺ってもよろしいですか?
本村
直二郎さん
84歳になりました。



ほぼ日 お若い!!
本村
直二郎さん
20歳のころからこけしをはじめてね。
2年くらいたってからお店をひらいたので、
もう60年以上になるんですよ。
ほぼ日 60年以上! 頭がさがります。
ちなみに、松島で他に
こけし屋さんはあるんですか?
本村
直二郎さん
今は、わたしだけだね。
前にやってた人がひとりだけいたんだけど
すぐにやめてしまって。
戦後、松島に観光のお客さんが
たくさんおいでになるようになってね。
そのときに、松島には工芸品がなにもなかったから
こけしでもつくろうかと。



ほぼ日 工芸品がないから、つくる。
そんな歴史が‥‥。
初めてのこけし作り、
どこかに修行にいかれたりされたんですか?



本村
直二郎さん
その暇はなかったから独学でね。
まわる(木を削る)のは機械だけれど
手の感覚がすべてだね。


▲こけしの頭の部分。
 ミズキの木がまあるく削られていきます。


▲たくさんのギャラリーが見守るなか
 あたまの部分がまんまるに。


▲研草でざらざらとした表面を
 滑らかにしていきます。

ほぼ日 わー!
すごいつるつるだ(笑)。



ほぼ日 こけしの柄の椿、かわいいですね。



本村
直二郎さん
こけしの柄で一般的なのは
菊とかなんだけれど、
松島には椿がたくさん咲くの。
それで、椿の絵を描こうかなってね。
ほぼ日 とってもかわいいですね。
あ、外にも椿が咲いてる。



本村
直二郎さん
冬はもっといっぱい、
葉が見えないくらい真っ赤に咲いていたんだよ。
ほぼ日 もう椿の季節は終わりかぁ。
こけしの色なんですが、
白い木と茶色い木があるのは
種類が違うんですか?


▲津波で流されてしまった木を
 拾い集めてきたそうです。
 これはミズキの木。

本村
直二郎さん
白い木は、ミズキ。
ハナミズキってあるでしょう。
あれはアメリカから輸入したものなんだけれど
日本にも「ミズキ」っていう木があるの。
白い花が咲く木で。
それを使っています。
茶色い木は、桜。
大木を裂いてね、そこから作るんですよ。
若い木はね、安いんだけれど
「目」が違うの。



ほぼ日 「目」って、年輪のことですか?
本村
直二郎さん
そう。
こけしの顔の正面をきれいにみせるために
年輪を耳のところにもってくるの。
柾目を正面にね。
※柾目とは
 年輪の目を断ち切るように、
 年輪に対して対して
 直角に近い角度で切り出した板の
 表面に現れる木目を柾目とよぶそうです。
ほぼ日 ほんとだ!
耳の所が年輪のぐるぐるになってますね。

そういって、本村さんが
ブータン首相用に選んでくださったこけし。
木は人気のある桜。
熱心に「目」をチェックして
最高のできあがり、
というひとつを選んでくださいました。



奥様の芳子さんです。



ほぼ日 そのお手紙は?
本村
芳子さん
お客さまが「がんばってください」って
励ましのお手紙を
たくさん送ってくれたんです。
本当にありがたいですね。



お客さまからの励ましのお手紙が
たくさん届いていました。

「字を書くのは苦手なんだなぁ」と言いながら
こけしの裏に
「ブータンの皆さん ありがとう」という
首相へのメッセージを
金粉で書いてくださる直二郎さん。



「直秀こけし」英語の説明書もいれて
こけしを包装。



最後に記念撮影をさせていただいて‥‥。





「また来て下さいね」

「必ず、また来ます!」

丁寧にわたしたちを見送って下さるお二人と
そう約束をして、
帰路につきました。

必ず、必ずまた来ます。

遊覧船から見る松島湾内の島々は、
かわらずとても美しく、
岩にしっかりと根をはった松の木は
波をかぶっても倒れないものがほとんどだったそうです。



かもめの大歓迎ぷりもあいかわらず。

そして、最後はやっぱりこれですね。






「松島は 岩のかたちが ヘンですね」

二八屋物産展
宮城県宮城郡松島町松島字町内80
TEL:022-354-3216
年中無休 営業時間9時〜18時


「黄昏 日光・東北編」のロケでは、
松島クルーズをしてカモメと戯れたあとに、
何の気なしにはいったお店で、
イカを食べながら、抱腹絶倒の「黄昏」が
収録されました。
今回、こけしを購入した「二八屋物産店」の
ちょっと手前に、そのお店はあります。
お土産を買いに行ったその日、とても繁盛していました。
これも、「黄昏」チームには嬉しいニュースとなりました。

その、「黄昏」ゆかりの場所が立ち上がった
明るいニュースをはらんだお土産のこけしは
ブータンの首相ジグメ・ティンレー氏に
無事に届けられました。
このお土産を手にした首相は、
その御礼と、震災へのお悔やみを述べたあとに、
震災後の日本人の振る舞いや
その動き方にとても感銘を受けた旨を
静かにお話くださいました。

糸井重里との会談の間中、
テーブルの上に置かれたその包みは、
とても多くのことを無言で語っているように
思いました。

(チーム黄昏・モギ)




しっかりとブータン首相の元へ届けられた
松島の直秀こけし。

本村直二郎さん、芳子さん
ありがとうございました!


2011-05-26-THU