黄昏 た そ が れ  日光・東北編       南伸坊さんと、糸井重里。昔なじみのふたりが、始終しゃべりながら小旅行。前回は鎌倉の名所をめぐりましたが、今回は日光、松島、花巻あたりを回ります。ゆっくと変わる風景と、めくるめく無駄話。いったいいつまで続くのかな‥‥? そしてこの不思議な企画は、なんとすべてをまとめて本になるのです。いえ、ほんとの話です。
第28回 松島を見たあとで。
糸井 松島は、芭蕉さんのおっしゃるとおりでしたね。
あ、そうでしたか。
糸井 ええ。「岩のかたちがヘン」でした。
そうでしょう?
糸井 大小、さまざまな奇岩が。
(遊覧船のアナウンスを真似て)
「そのかたちがぁ、仁王様がぁ、
座っているように見えることからぁ、
『仁王島』とぉ、呼ばれていますぅ」。
糸井 そうそう(笑)。
小さい島の名前の由来を紹介するとき、
ぜんぶ、そのパターンなんだよね。
「風が通るときにぃ、
ゴーっという音がすることからぁ、
『鐘島』とぉ、呼ばれていますぅ」。
糸井 「松島は」。
「岩のかたちが」。
ふたり 「ヘンですね」。
一同 (笑)
糸井 あとは、カモメだね。
あの、かっぱえびせん好きのカモメ。
船をずっと追いかけてきて、
かっぱえびせんを投げると
空中でぱくっと食べちゃう。
おもしろいよね、あれは。
糸井 「船からかっぱえびせんを投げるとぉ、
 つぎつぎに集まってくるところからぁ‥‥」。
「ちょうだい、ちょうだいと
 言っているように思えるところからぁ‥‥」。
糸井 「松島のカモメはぁ、
『ちょうだい鳥』ともぉ、呼ばれていますぅ」。
なんだか、ほんとっぽいね(笑)。
糸井 ちょうだい鳥たちが、
投げられたかっぱえびせんを
奪い合ってケンカすることを
「ちょうだいゲンカ(兄弟ゲンカ)」
っていうんだ。
お、そっちに行く?
糸井 「ちょうだいゲンカ」はやめなさい!
かっぱえびせんをひとりじめせず、
食べたら、つぎのカモメにゆずることを
「ちょうだい仁義(兄弟仁義)」と。
糸井 いいねぇ(笑)。
「ちょうだい船(兄弟船)」
っていうのもあるかな。
糸井 たぶん、オレたちの乗った
遊覧船そのものが。
「ちょうだい船」(笑)。
糸井 あと、航海する船の目印として、
灯りを照らす高い塔が海辺に立ってるでしょ?
うん。
糸井 あれはね、「灯台」。
うん?
糸井 これは、ダジャレじゃない。
「ちょうだい」と「灯台」は、関係ない。
糸井 そう。関係ない。
ダジャレだと思われると、困るよ。
ああ、それは不本意だね。
糸井 のべつまくなしにダジャレを言って、
ふざけてるように思われたりするからね。
それはちょっと心外だね。
糸井 シンガイ革命(辛亥革命)。
ははははは。
糸井 ダジャレだと思われるのは、シンガイ革命!
ははははははは。
糸井 思うソンブン(孫文)、言ってやりたい。
もう、いいんじゃないかな。
糸井 もう、このくらいで、いいカモメ。
それも、ダジャレじゃないんだよね?
糸井 ダジャレだなんて! シンガイ革命!
(‥‥‥‥つづきます)

2009-11-01-SUN

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