BRUTUS糸井重里特集の舞台裏その4
ほぼ、ほぼ日乗組員、
BRUTUS編集部中西さん。
長い長い取材をおえて
いま、何を感じていらっしゃいますか?

糸井さん、あなたは何者ですか?
その答えに迫る密着ドキュメント。
『今日の糸井重里』
BRUTUSの糸井重里特集号が
4月1日に発売になります。

ああああ、ここでモギが、お知らせがあるといって、
横からはいってきました。

「ごめんやしておくれやしてごめんやっしゃー!
 慣れない関西弁で、舌がもつれますが
 ここでスペシャルなお知らせでっせ。

 4月1日(金)、お昼ごろから18時ごろまで
 紀伊國屋新宿本店の店頭で、
 ブルータス「糸井重里特集」号
 および『さよならペンギン』を
 ほぼ日乗組員がのんびりと販売します。
 (『さよならペンギン』は4月8日の一般発売に
  さきがけて販売です!)
 「ただいま製作中!」でも中継をしますよ〜。

 というわけで、お知らせは終わり!
 本文を存分にお楽しみください〜〜。」

一番最初の打合せが行われた
2010年10月5日からのべ5ヶ月間、
糸井事務所にひたすら足を運んで、
誰よりもたくさん、
糸井重里のことばに耳をかたむけてくれていた人、
それがBRUTUS編集部の中西剛さんです。

昨年、
『BRUTUS ほぼ日と作った、吉本隆明特集』でも
たいへんお世話になりました。

『吉本隆明 五十度の講演』
全部聞くように西田善太編集長から命じられ、
iPodにいれた吉本さんの講演をひたすら聴き続け、
講演の要点を
1冊のノートにまとめた努力家です。

ほぼ日とタッグを組むのは今回が2回目。
長い長い取材を終えて、
いま、どんなことを感じていらっしゃいますか?

まさにその特集号をつくっている最中、
お忙しい中西さんに、乗組員コイケが取材しました。

── この5ヶ月間、長い旅路でしたが、いかがでしたか。
中西 いまは、振り返るというよりも
実際の入稿作業が忙しくて(笑)。
締切ぎりぎりまで原稿がそろわないという意味では、
今回の特集は、自分史上もっとも綱渡りな号です。
今までも大変だなぁと感じるものもあったけれど
今回は、こわいです、こわすぎる(笑)。
── そうでございますか。
それはたいへんでございますね。
テープはいったい何時間まわっていたんでしょう。
中西 ちょっと計算してみたんですが‥‥。
トータル8880分、
時間にすると148時間まわっていました。
こんなに長く取材をした特集は、
他に経験がないです。
これだけたくさん取材をさせてもらっているのに、
もし発売できなかったら
これほどのロスもないですよね。
── そうでございますか。
それはたいへんでございますね。
中西 入稿が間に合わなかったら
西田(編集長)さんに怒られるんだろうなぁ‥‥。
── そうでございますか。
それはたいへんでございますね。
中西 そうしたら、責任をとって辞めさせられるのかなぁ‥‥。
── さて、話は変わって!
中西さんとご一緒させていただくのは
「吉本隆明特集」に続いて2回目になりますが
吉本隆明さんの特集号の時と
ほぼ日全体の印象はかわりましたか?
中西 そうですね。あの時は、
ミーティングルームで
会議をすることがほとんどだったので
みなさんが仕事をしている
オフィス側に行くことがなかった。
今回は、同じスペースにデスクをいただいて
みなさんのことを見ていると
意外と静かに仕事をされているんだとびっくりしました。
── 意外に、まじめに、仕事しております。
中西 そうなんですよね。
あと、印象的だったのは、取材期間中に、
何人か新しい社員の方が入社されたこと。
これまでも経理、プログラマー、商品開発チーム‥‥と
様々な職種の募集がありましたよね。
どんどんスタッフが「あつまる」あの感じは
マンガの『ワンピース』みたいだと思いました。
社員のみなさんの呼び方も「乗組員」っていうし。
ルフィが船のコックさんや航海士をスカウトして
「仲間になろう!」
っていうみたいに増えていくというか、
あと、ぼくは『ワンピース』でいうと最新刊の‥‥。
── 『ワンピース』の話は、まだ続きますか?
弊社の『ワンピース』好きを呼びましょうか?
中西 いえいえいえ、それには及びません!
じゃなくて、なにが言いたかったかというと、
みなさんは、「乗組員」の仲間たちのことを
職種が違っても深く知っているじゃないですか。
デザイナーの横に経理の人が座っていたりと
職種にとらわれない
席の配置の仕方のおかげだと思うんですが。
普通の会社って、職種が違うと席も離れていて、
具体的にどんな仕事をしているかとか、
その人のキャラクターとか知らないですよ。
── 今回の「糸井重里特集」で
リーダー役をつとめてくださった、
エディターの伊藤総研さんと中西さんのコンビ
かなり強力だと感じましたけれども。
中西 ああ、総研さんのことは尊敬しています。
僕は、なんでも早くやらないと
まわりの人に迷惑をかけると思って
焦ってしまうことがおおいんですが、
総研さんは、とにかく最後まで粘る。
そして最終的によくなるなら
自分が言っていたことでさえも
覆すことをいとわない。
結果、前よりもよくなったことで
まわりの信頼を得てきているんですよね。
でもそのおかげでいまもこんなに
ハラハラしているんですけどね。
だってね! 当初予定してた入稿日に
3ページしか入らなかったんですよ!
73ページ中、3ページですよ!
そりゃ、ぎりぎりの締切ではないけど‥‥。
── そうでございますか。
それはたいへんでございますね。
中西 い、いや、べつに、大丈夫です。ふふん。
── ほかに、なにか取材を通して
感じたことはありますか。
中西 僕は元々、
雑誌が好きでマガジンハウスに入ったのですが
ほぼ日をこれだけ取材していると
webの自由さもうらやましくなります。
── 「ほぼ日」は掲載日も文字数も
その都度自分たちできめられる
ということがありますからね。
中西 そうですね。
そのおかげで、ぼくみたいな
ただの編集者のインタビューも
こうして長々と載せてもらうことができる(笑)。
── ほんとうに、そうでございますね。
中西 あ、いや、あの、その、まぁ。ふふん。
── webの自由さを感じるという意味で
印象に残っているコンテンツはございますか?
中西 webというより、
ほぼ日の自由さというところで、
『さよならペンギン』の解体ショーは
ほんとうにびっくりしました。
最初この企画のことを訊いた時は、
どの部分におもしろみがあるのか
正直よくわからなかったんですよ。
でも、実際に凸版印刷の藤井さんの手によって
本が解体されていく様子を動画の中継でみていると
おもしろくてしょうがない。
高橋源一郎さんの『午前0時の小説ラジオ』
すばらしかったです。
どちらも企画をたてた時点で、
これはコンテンツにしたら面白い
ということがみえているのがすごい。
それから、とても印象に残っているのは
『クーザ』のレッドカーペット取材
著名人の名前をほとんど知らない
永田さんが取材をしている。
普通、芸能人の名前をあそこまで知らない人が
あんなことやらないじゃないですか(笑)。
よくやるなというか、度胸があるなというか、
ある意味、常識がないなというか‥‥。
── あ、永田が来たようです。
永田さーん、こちらへどうぞ!
中西 わわわわわ、いや、そうじゃなく!
── というのは、冗談ですけれども。
中西 ‥‥‥‥ふ、ふふん。
── けれど、そんな「ほぼ日」に、
中西さんは驚くほどすんなりとけ込んでましたよね。
あの「なじみ力」はすごかったです。
その場にいるのが自然で、全く違和感がなかった。
それもかなり早い段階からでしたよね。
中西 あ、そうでしたか。
だとしたら、うれしいです。
もともとぼくは、
現場で細かい作業をするのが好きなので
そのせいもあるのかもしれません。
── 糸井をはじめとして、
うちの乗組員からもどんどん
「いじられて」いたのも印象的でした。
中西 なぜ、そんなにぼくをいじりたがるのか‥‥。
ずっと不思議でしょうがないです。
ぼく、昔はこんなまるくなかったんですよ。
「ケンカマン」ってあだながつくぐらい、
中高生の時はケンカっぱやかった。
触るものみな傷つける、
尖ったナイフだったんですからっ!
── 自慢ですか。
中西 いや、自慢とかじゃなくて!
── それで、話は変わりますけれどもね、ケンカマン。
中西 誰がケンカマンやねん。
── これは、ほんとの話ですけど、
「ほぼ日」のなかで、中西さんは人気者でしたよ。
中西 ほ、ほんとですか。
ぼく初対面の印象悪くなかったですか?
緊張しいだし、最初からなかなか
うちとけられない性格なので‥‥うう‥‥。
── と、しんみりさせておいて、つぎの質問です。
ここからはいよいよ、膨大な取材のなかから
糸井のことばを抜いて編集していくという
たいへんな作業が待っていると思いますが?
中西 え、そ、そうですね。
BRUTUSを読んでくださる読者の顔を思い浮かべて
なるべくフラットに
編集者の目線でことばを選ぼうとしているんですが、
これだけ長くほぼ日にいたので
個人的な視点で選ぶことばの分量も
多くなっているような気がします。
選んだことばを、内部のスタッフに
「おもしろいね」って言ってもらえると、
すごくうれしいんですよ。
なんていうか、糸井さんのことばなのに、
自分のことばのように思えてきたり(笑)。
── その感じは、わたしたちもわかります。
中西 吉本隆明さんの号をつくったとき、
ぼくは特集を担当することになるまで
まったくと言っていいほど
吉本さんのことを知らなかったんです。
でも、取材をして、ページをつくっていくうちに
ほんとうに吉本さんという人が好きになった。
糸井さんのことはもちろん前から知ってましたけど、
今回も、特集をつくっているうちに、
糸井さんとの距離がどんどん縮まっていくように
勝手ながら、感じていました。
それは、すごくありがたいことでした。
── 最初が吉本隆明さんの特集で、
今回が糸井重里特集。
「濃い2冊」でしたね(笑)。
中西 ぼくは吉本隆明さんの特集を
担当させていただく少し前に
BRUTUS編集部に異動をしてきたんです。
ずっとBRUTUSに行きたくて、その夢が叶って、
配属をされてわりとすぐに吉本さんの特集で。
あの1冊をつくって、
「もうやり残したことはないなぁ」というくらい
満足してしまっていたんですけど、
糸井さんの特集でさらに拍車がかかってます(笑)。
もう悔いはないかなぁ‥‥。
── 辞められたあとは、なにをされる予定ですか?
中西 すいません、冗談なんですけど。ふふん。
── 今度は中西さんが「ほぼ日」に出張して
コンテンツをやってくださる、なんてどうでしょう。
中西 あ、じゃあ、韓流特集をやらせてください!
ぼくは、ハン・ヒョジュさんの大ファンなんです!
もう、いくらでも書きますよ!
ぼかァ、本気なんですよ!
こないだも、ひょっとしたら、
ハン・ヒョジュさんと遭遇しないかな、
という淡い期待を抱いてソウルを旅行してきたんです!
もちろん、やみくもに歩き回ったわけではなく、
ヒョジュさんがよくいくお店などを
調べて訪ねて‥‥。
── たのしいお話はいつまでも尽きませんが、
ちょうど時間となりました。
今日はお時間をいただきまして、
まことに、ありがとうございました。
中西 あ、ありがとうございました。ふふん。

その後、中西さんから
「校了宣言!」というタイトルでメールをいただいたのは
取材をさせていただいてから10日ほどたった
2011年3月23日の午前6時50分46秒でした。

入稿、校了の作業を終え、
ほっとひといきついた中西さんに
最後にふたつだけ
メールで質問をさせていただきました。


質問1
長い長い取材、編集作業をおえられた今
ふりかえってみて、
強く印象にのこっている糸井のことばは?

質問1の答え
はじめて聞いたときには、
あとでこんなに自分の中に残るとは
思っていなかったんですが(笑)。
今年最初の全体ミーティングでおっしゃっていた
「お金より信用」ということばです。
震災が起こってから、
この糸井さんのことばを思い出すことが多くなりました。
主旨は少し違うかもしれないけど、
最後に頼るべきは「信用」だと。

震災後、
いろいろな人がいろいろなことを言って、
自分でもどう考えればいいのかわからなくなりました。
被災者でなくても、
日本人みんなが何か支えを求めていたんだと思います。

2ヵ月の密着取材の間でわかったことでもあるし、
震災後の糸井さんの言動もふくめてですが、
「糸井さんは信用できる」と
個人的に強く思いました(こう書くとえらそうですね)。

おっしゃっていること、ひとつひとつの説得力
というのももちろんあるんですが、
そのことばが出てくるまでの
「うろたえ」だったり、「怒り」だったり、
「弱さ」だったりというものを、
赤裸々なまでに見せてくれるということが理由のひとつ。

もうひとつは、
吉本隆明さんだったり、元巨人軍の藤田元司監督だったり、
ふつうに読者や乗組員から聞くものだったり、
糸井さん自身の心にとまったことばを
「すごいな」と言いながら
ぼくたちに教えてくださることですよね。

自分を高いもの、えらいものに
決して見せようとはしない。
イチローさんもおっしゃっていましたが、
素直に人のことばを聞くことができる。
だからウソがない。
ウソをつく必要がない。

教祖のような「ありがたい」ことばではないんだけど、
だから糸井さんは信用できるんですよね。

「あーわからんっ!」って、髪をかきむしるようなときに、
糸井さんはどう考えるか聞いてみたいと思うのは、
その「信用」があるからですよね。

糸井さんには
「ちょっとは自分で考えなさい」って
言われちゃうかもしれませんが(笑)。

質問2
最初の打合せで糸井のことを
「つぼになる人の横に、いつもいらっしゃるイメージです」
とおっしゃっていた中西さん。
いま、中西さんの中で
「糸井重里」はどのようにうつっていますか?

質問2の答え
いろいろな答え方ができてしまいますが(笑)。
最初の打ち合わせのときの自分の答えにそっていうとすると、
「横にいる」というよりは
「巻き込む」人なんだと思い直しました。

みんなが「巻き込まれたい」と思う人。
大貫妙子さんがかつておっしゃっていたことの
受け売りのようになってしまいますが
あぁ、本当にそうだなと思っています。

「つぼになる人」だけでなくて、
今回でいえば、自分もそうだし。
もちろん、ほぼ日の乗組員のみなさんがそうなんでしょうし。
みんなが「巻き込まれた」いと思っている。

イチローさんであろうと、
矢沢永吉さんであろうと、
ロンブーの淳さんだろうと、
みなさん同じ感覚なんじゃないかと。

糸井さんと何かすると、絶対楽しいことができるという。

で、その前提にあるのが、
やっぱりさっきも書いた「信用」なんだろうなと思います。
中西さん、この2ヶ月間、
いえ、企画が起ち上がってからの5ヵ月間、
ほんとうにありがとうございました。
そして、おつかれさまでした。

4月1日、発売日を楽しみにしています。
ありがとうございました!

中西剛さん
1976年7月9日生まれ AB型 
同じ誕生日の有名人には細野晴臣さん、
トム・ハンクスさん、草K剛さんなど。
(同じ「剛」で韓流好き!)
あまりにもハン・ヒョジュさんの名前を連呼されるので、
その、大好きなハン・ヒョジュさんと
中西さんとの相性をおせっかいにも
占い師LoveMeDoさんに占っていただきました。

ハン・ヒョジュさんは24歳〜から仕事で伸び悩みます。
ただ、中西さんと結婚すると彼女の仕事運が高まります!
その代わり、家事はほっぽり出してしまうので、
すれ違い的な家族になってしまいそう。
嫉妬心も強い彼女なので、ちょっとしたことで大喧嘩になるかも。
気をつかうハメになるので、ストレスが溜まると思いますが
刺激的な恋愛は出来そう。
それと、2人は似た面を持ち合わせているので、
出会ったらすぐ打ち解けられる相性です。

中西さん、出会えれば、出会うことさえできれば
打ち解けられる相性とのこと。
韓国の街でハン・ヒョジュさんに会えたら
進展があるかも?!
2011-03-31-THU
BRUTUS表紙
BRUTUS 706号 特集 今日の糸井重里 2ヶ月間の全記録と127の言葉。
2011年4月1日 
全国の書店、コンビニエンスストアにて発売。
(流通の都合で発売日に
 店頭に並んでいない可能性もあります)

発売日以降は、
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