ほぼ日の新人デザイナー６人が、ハラマキのデザインに挑みます。

──

ヤンさんは、
メンターがふたりいらっしゃるんですね。

星野

手帳チームの星野です。

岡村

おなじく手帳チームの岡村です。

──

ではふたりのメンターに発表する感じで、
ヤンさん、
ハラマキデザインの途中経過をお願いします。

ヤン

はい。
いちばんめは、
「キャンドル」というテーマで、
いろいろな形のキャンドルを描いてみました。
色違いで２つあります。

星野

へええ。

岡村

ほぉ。

ヤン

こっちは「スズラン」がテーマです。

星野

わあ、スズランがいっぱいある。

ヤン

で、こちらはとくに違う雰囲気で、
「美術館」がテーマです。

岡村

これは、だいぶ違いますね。

星野

ミュージアムだ。

ヤン

はい。
それから、これは「いちごケーキ」です。
ハラマキの形がケーキみたいだなと思って。

──

次々といきますね。

ヤン

最後に、これは「夜の海」です。
波が動いているイメージ。

星野

遠くに見える海。

ヤン

はい。
以上を、考えてみました。

星野

すごいふり幅です。
キャンドルは、
なぜキャンドルにしたんですか？

ヤン

キャンドルが好きで、
普段からいろんな形のキャンドルを
買ったりしていますので。

星野

そうなんだ。
キャンドル‥‥これすごい好きです。
じつは前に、
ちょっとラフで見せてもらってて。

岡村

前にね、ちょっと見たね。

──

そうなんですね。

星野

そのときから形がきれいだなぁと思って。
キャンドルの動きがあって、
テキスタイルっぽくもあって、
いいなぁと思いました。

岡村

ハラマキだから
ろうそくの炎はいいですよね、
あったかいイメージで。

星野

そうそう、合ってる。
こっちのスズランとケーキも
事前に見せてもらってたんです。

──

３種類は見ていた。

星野

でも、それ以外の黒い絵たちは‥‥。

岡村

黒いやつはね‥‥。

──

ここで初対面。

星野

ヤンさんはお花のテキスタイルをつくる
印象があったから。
「どうした？」って思いました。

──

‥‥ええと、その反応は、
あまりピンときていない。

星野＆岡村

いや！

星野

逆です。

岡村

うん、逆。いいよね。

星野

いいです。

──

よかった（笑）。

星野

ミュージアムのは、なぜ？

ヤン

大学生の冬休みに、
母と祖母と３人でヨーロッパを旅行して
あちこち美術館や博物館をめぐりました。
そのとき印象に残った作品と、
作品の周りに人が集まって見ている姿が
おもしろいなと思って。

星野

絵画や彫刻だけでなくて、
見ている人がいるから、
美術館の奥行きを感じるというか。

岡村

おもしろいよね。
これ（夜の海）も
ちょっとおもしろいと思いました。

星野

はい。

岡村

円筒状のハラマキに
どうおさまるのかとは思うけど、
お腹の中の混沌とした感じがいいなと。

星野

たしかに。
ほんとに、どれもきれい。
リズムがあって。

──

手帳になってもきっとかわいい。

星野

ほんと、ほかのものになっても‥‥。
ああ、そういえば、
社内用のサンキューカードって、
あれ、スズラン？

ヤン

あ、はい。

──

あれ、ヤンさんが描いたんだ！

ヤン

はい（笑）。

星野

ハラマキ用のスズランは、
主役のスズランを、
もっと大きく見せてもいいかも。

──

ああ‥‥。

星野

総柄にするにしても、
ちょっとずつ角度がついたり、
お花の大小があったりするとうれしい気がする。

岡村

そうだね。

星野

パターンなんだけど、
ちょっと揺らいでるみたいな。
って考えるのがたのしいデザインです（笑）。

ヤン

ありがとうございます｡

──

発想は、自分の好きなものから
考えていった感じですか？

ヤン

はい。

星野

ヤンさんはいつもデザインをお願いすると
３案くらいをパッと出してくるんです。
で、それがぜんぶ、
違う人がつくったみたいに
トーンがいろいろなんです。

──

へえええ～。

岡村

今回もまさにそうだね。

星野

ちなみに、最初に着手した案はどれですか？

ヤン

キャンドルです。

岡村

キャンドルは手描きなの？

ヤン

はい、手描きで。

岡村

やっぱり味がありますよね。

星野

わたしはこれがいちばん好き。
このキャンドルを見せてもらったとき、
「もしわたしがこれを最初に思いついたら、
もうほかのはつくらないかも」
って思うくらい、いいなと思いました。
どう直していいかわからないというか。

──

おおー。

星野

このキャンドルに、
今回出してくれた他のデザインの良さも
つまっている感じがします。

岡村

そうですね。
スズランのはすごくきれいだけど、
もし自分だったら、
花柄のパターン系はわりとあるから
作らない気はします。
たぶん売れるけど自分が欲しいかな？　と。

──

「売れるけど」を、作らない（笑）。

岡村

あ、はい（笑）。
自分だったらスズランよりも
キャンドルのパターンを増やすほうが、
広がる気がします。

星野

キャンドルのパターン、見てみたい。
暗闇に灯ってるような
白黒のバージョンとか、
すてきかなって思いました。

岡村

あと、ぼく、
前にラフを見せてもらったとき、
なんかアドバイスしたと思うんだけど
‥‥なんて言ったか忘れちゃったな。

一同

（笑）

岡村

ああ、そうだ、思い出した。
ストーリーがあってもいいんじゃないとか、
そういうことを言った気がします。

──

よかった、思い出して（笑）。

岡村

「見てかわいい」っていうのは、
もちろんいいんです。

──

はい。

岡村

でも、見てかわいいで終わらず‥‥。
あの、前に聞いた話なんですけど、
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の
デロリアンって、わかります？

──

あ、はい、デロリアン。
タイムマシンになる自動車ですよね、
博士が作った。

岡村

そう、あれ、映画のデロリアンって、
後ろの排気口の部分の溶接が
すごく下手くそなんですって。
博士が自分で溶接してる設定だから、
わざと下手につくってあるんですよ。

──

わざと。

岡村

なのに映画ではあまり映らない部分なんです。
そういう、隠されたストーリーが
あるのっていいですよね。
ハラマキのデザインでも、
自分なりのストーリーを設定すれば、
広がったり豊かになっていくんだと思います。

──

なるほど。
どうでしょうヤンさん。

ヤン

はい。
ありがたいです。

岡村

これはほんとに商品になるんですか？

──

それを目指してはいます。

岡村

となると「自分の好き」からはじまって、
ここからどうしていくかですよね。

星野

自分の好みのデザインと
お客さんがよろこぶデザインというのが
一致するときと、
一致しないときがあると思っていて。

──

はい。

星野

この中にもたぶんよろこばれやすいものと、
狭く深く刺さるやつがあるかなと思います。
ヤンさんがそこのチャンネルを
どう合わせていくのかが、
今後のポイントになるのかなと。

ヤン

はい。

星野

そういうことを考えながら、
あとはデザインの微調整をもっと。
炎の瞬きとか、サイズとかの工夫で、
「キャンドルのささやかさ」みたいなのが
さらに加わったりすると思います。

岡村

下の空間をもうすこしあけて、
キャンドルの影を大きくしてみるとかね。

──

ああー。

星野

ほかのデザインでも、
いろいろ試してください。
どんどん微調整したほうがいいと思います。

岡村

そうですね。

星野

最後にひとつ。
全体的にすごくいいなと思ったのは、
タイトルがそれぞれについてるところです。
ほぼ日はけっこう、
タイトルをちゃんと見せるので。

──

そうですね、
ほぼ日はタイトルを大事にします。
タイトルを添えることで、
それこそストーリーが生まれてくることも。

岡村

うん、うん。

──

と、こんなところでしょうか。
かなり具体的なアドバイスでした。
ヤンさん、発表会までがんばってください。

ヤン

考えて、調整を続けます。
ありがとうございました。