粘菌のはなし。
毎週菌曜日に「きのこのはなし。」
連載してくださっている
“きのこ・粘菌写真家”である新井文彦さんが、
またまた書籍を出版されます。
今回はなんとこどもの本。
しかも粘菌の!
タイトルは
『もりの ほうせき ねんきん』です。



うつくしくも不気味な
粘菌の写真が大盤振る舞いの本は、
こどもの本ともいいながら、
まるで粘菌写真集のよう。



これを記念して、またまたちょっとの間、
菌曜日に「粘菌のはなし。」も
短期連載してくれることになりました。



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▶︎新井文彦さんプロフィール
『もりの ほうせき ねんきん』編 その4 ムラサキホコリ
ムラサキホコリの仲間は、マメホコリと並んで、
阿寒の森に限らず、よく見かける粘菌です。



しかし、それでも、
粘菌のことをけっこう意識してなければ、
見つけるのは難しいかもしれません。



鍛えよ!粘菌目を(笑)。



ムラサキホコリの仲間には、
ムラサキホコリ、オオムラサキホコリ、
サビムラサキホコリ、スミスムラサキホコリ、
クサムラサキホコリなどなど、
いろいろな種類がありますが、基本的には、
アイスバーというかフランクフルトソーセージと言うか、
細長い筒状の物体に細い棒を刺した、とでも言うか、
胞子が入った子嚢という袋に柄がついた形をしています。



ムラサキホコリやオオムラサキホコリは、
子嚢がけっこう長いのでやや下側に湾曲した感じになり、
サビムラサキホコリやスミスムラサキホコリは、
真っ直ぐ上に伸びつつ束になっています。



例によって、正確な種名を同定するには、
胞子を顕微鏡で観察するなどの方法が必要です。
個体差もけっこうあるので、ぼくは、
ぱっと見て種名がはっきりわからないときは、
「ムラサキホコリの仲間」「ムラサキホコリ系」
などと称してそれ以上の思考を停止します(笑)。



今回、メインでご紹介するサビムラサキホコリは、
見つけやすいムラサキホコリの仲間の中でも、
特に見つけやすい種類だと思います。



春から秋にかけて倒木の上に束になって発生。
変形体、未熟な子実体は、白~黄色。
子実体の高さは2cmくらいまで。
黒くて光沢がある柄の長さは全体の高さの半分以下。
成熟した子実体は錆びた鉄粉をまぶしたような色。
ゆえに、サビムラサキホコリ、です。



ムラサキホコリの仲間に限らず、
粘菌のライフサイクルを大胆に4つに分けると、
胞子~粘菌アメーバ~変形体~子実体~胞子、
となるわけですが、
胞子や粘菌アメーバは小さすぎるし、
変形体は倒木や朽木の中にいるので、
我々が確認できるのは、子実体にほぼ限られます。



ムラサキホコリの仲間の変形体、そして、
成形されたばかりの超未熟なつぶつぶの子実体は、
だいたい、白色、薄黄色、黄色のどれかです。



できたばかりのつぶつぶの子実体は、
つやつやでキラキラしていて宝石級の美しさ。
倒木の上などで見つけると、うっとりしてしまいます。



そんな美しい丸いつぶつぶは、
徐々に上へと伸び上がり、黒い柄も伸び、
どんどん色が濃くなって褐色系に変化し、乾燥し、
胞子をたっぷり抱えた子実体へと変身。
胞子は風に乗って新しい世界へと飛んで行きます。



ちなみに、人為的に粘菌の胞子を飛ばすことを、
我々ファンは、胞子活動、と呼んでいます。
倒木に現れた、黄色いつぶつぶ。
サビムラサキホコリの未熟な子実体。
まんまるが上に引き伸ばされつつ、
黒い柄も伸びてきます。
子実体は、乾燥するにつれ、
白や黄色から茶褐色系に色が変わります。
乾燥しないうちに雨に打たれてしまった子実体。
おそらく、胞子を飛ばすことはできません。
柴犬のお散歩コースで、サビムラサキホコリ発見。
生け垣の腐りかけた木から発生してました。
2018-05-18-FRI