
おしゃれな女性ファッション誌『sweet』で
連載中の「シンVOW」では、
毎回、すてきなゲストをお迎えし、
VOWについてあれこれ語りあっております。
このページでは、紙幅の都合で
『sweet』に載せきれなかった部分を含め、
たっぷりロングな別編集バージョンをお届け。
担当は、VOW三代目総本部長を務める
「ほぼ日」奥野です。どうぞ。
吉田戦車(よしだ・せんしゃ)
1963年生まれ。岩手県奥州市出身。代表作に『伝染るんです。
- 戦車
- 時代をひしひしと感じながら読みました。
- ──
- ありがとうございます。
- 戦車
- みんなが紙の上で、
紙に印刷したおもちゃで遊んでいた‥‥
そういう時代ですよね。
VOWって、
平成の前半くらいからはじまってますか。
それとも、昭和の後期?
- ──
- 今年で50年目なんですけど、
いまのかたちが定着したのは90年代です。
- 戦車
- 誤植ひとつとっても「濃い」ですよね。
うっかりまちがえました‥‥とかじゃなく、
もっと根本的っていうか、
何にも確認してなかったりするんですよ。 - 人の名前とか。
- ──
- わはは、はい(笑)。
- 戦車
- 「エリック・プランクトン」って。
『ベスト・オブVOW』より
- ──
- かつて、和田ラヂヲ先生も言っていました。
エリック・プランクトンが
武道館に立っても見えないじゃないか、と。 - ちっちゃすぎて、と。
- 戦車
- あと、これとか。冗談としか思えない広告。
- ──
- 相撲部屋の求人ですね。
そこで募集されているのは「力士」です。
『ベスト・オブVOW』より
- 戦車
- 誤植とかうっかりミスなんかじゃなくて、
こんなことあったんだ‥‥という、
何か、歴史のおもしろさを感じますよね。 - あと、この墓石の広告。
コピーライターさんの仕事なんでしょうけど、
もう、気が狂ってて。
『ベスト・オブVOW』より
- ──
- 墓石に「サラダ」のたとえもあるさ‥‥とは、
斬新にすぎますね。
- 戦車
- もっと肉々しい、スタミナたっぷりの墓石も
ありますけどねってことなのか。
- ──
- 雨に濡れた慕情ならぬ‥‥肉汁に濡れた墓石。
イヤです。
- 戦車
- あと、昔だったら
駄菓子屋のおばあちゃんが手書きでミスった、
みたいな誤植が、
フォントの時代にも残っててかわいいな、と。
- ──
- こわらのマーチ。たしかにかわいい(笑)。
『ベスト・オブVOW』より
- 戦車
- 手書きの「ジュース」の表記に、
いろいろと不思議な間違いがありましたけど。
- ──
- はい。ジュスーとか。ジュゥースーとか。
『ベスト・オブVOW』より
- 戦車
- あの、なんとも言えない世界感が、
パソコンとプリンターでも、うまれてしまう。
かわいいなと思いました。 - あと、気になったのは、
いろんな人が書いた「怒りの貼り紙」ですね。
こういうの、
昔は、そこらじゅうに貼ってあったんです。
エッセイ漫画を描いてる身としては、
こういうの見つけたらしめたって感じでした。
- ──
- いやあ、「花を踏むな、ボケッ」‥‥って。
相当オカンムリですよね。
『ベスト・オブVOW』より
- 戦車
- たとえば「う◯こさすな!」みたいな看板も、
現代では印刷された掲示物で、
穏当な表現になってることが多いと思うけど、
やっぱり腹が立ってると思うんです。 - ここはワンちゃんのトイレではありませんと
やさしく書いていても、心の中では
「クソ拾わねぇ飼い主死ねやー!」みたいな。
- ──
- わはは、何でもかんでも炎上する時代に、
迂闊なことは書けないけれども、内心は。
- 戦車
- 昔のスーパーの手書きの商品札だとか、
道端の注意書きなんかには、
乱暴なおもしろさが潜んでいたんです。 - なぜか「手書き」というものには、
書いた人の苛立ちとか攻撃性が直に出ますよね。
- ──
- たしかに。戦車先生の深い考察!
- 戦車
- ぼく、路上観察の世界が好きだったんですよ。
- ──
- あ、赤瀬川原平さんたちがやってらっしゃった。
- 不肖わたくし不遜にも、
VOWとトマソンは「同志」だと思っています。
- 戦車
- 共通項は大いにありますよね。
- 南伸坊さんの『ハリガミ考現学』なんかも、
まさにVOW的な貼り紙について、
イラストと文章で、
どこがどうおもしろいのかを考察してるし。
- ──
- 大の大人がおもしろがってる‥‥
というスピリッツは、通底している気がします。 - まあ、VOWのほうには、
隠しきれない中学生男子的なノリもありますが。
- 戦車
- ああ、ちょっとエッチな連想させる言葉で
笑ったりとかして、
中学生・高校生のバカ丸出しみたいな感じでね。 - 個人的にも、なつかしい感覚だなあ。
もちろん女子のうちにも、
VOWをおもしろがる子は当然いると思うけど。
- ──
- 昔から現在にいたるまで投稿してくださってる
ベテラン勢って、
おそらく男性が多いと思うんですけど、
90年代くらいのVOWには、
ふつうに女性からの投稿も届いていました。
- 戦車
- そうそう、コメントに「主婦です」とか
「看護婦です」って、けっこういるんですよね。
- ──
- 昔は投稿に年齢まで書かれていたので、
若い女性がエッチなネタを送ってきたりすると、
当時の編集部‥‥
主には先代2代目総本部長の古矢徹さんですが、
すかさず食いついてました。 - うれしがっちゃって、筆が踊っちゃって。
そこらへんもまた中高生男子的だったよなあと、
微笑ましい気持ちになります。
- 戦車
- でも、いまは女性誌に移ってるんでしょ?
- ──
- はい。まさかの『sweet』です。
- 戦車
- エッチなやつも載せてるんですか。
- ──
- はい‥‥あのー‥‥はい、コッソリと‥‥。
怒られないていどに‥‥。
- 戦車
- 許されてるんだ。
- ──
- ナゾなんです。10年も連載してるんですが、
存在がバレてないのかも。
バレてるとしたら、
ひとえに『sweet』関係各位のみなさま方の
フトコロの深さに生かされています。 - そもそも、
掲載媒体の『週刊宝島』が休刊になったとき、
当時の『sweet』編集長‥‥
もちろん女性の方ですけど、その方が、
「VOWまで、この世から消えてしまうのは
大いなる損失である」といって、
大切な2ページを恵んでくださったそうです。
- 戦車
- なるほど。いまは、SNSで
同じようなことをやれる時代ではあるけど、
仲間うちの感覚で
ゲラゲラ笑ってる感じがいいんでしょうね。
- ──
- 一生中高生男子(笑)。
- 戦車
- 本当に。
◎そこから出しますか 👉️ボールの出し入れ(意味深)が簡単だそうです。(青森県/りんちゃん) ♨️不意にウミガメの産卵シーンを思い出し涙ぐむ昼下がりの総本部長でした。
(つづきます)
2026-07-10-FRI
