
おしゃれな女性ファッション誌『sweet』で
連載中の「シンVOW」では、
毎回、すてきなゲストをお迎えし、
VOWについてあれこれ語りあっております。
このページでは、紙幅の都合で
『sweet』に載せきれなかった部分を含め、
たっぷりロングな別編集バージョンをお届け。
担当は、VOW三代目総本部長を務める
「ほぼ日」奥野です。どうぞ。
玉川太福(tamagawadaihuku)
浪曲師:玉川太福(たまがわ・だいふく) 1979 年生まれ。新潟県新潟市出身。
所属:一般社団法人日本浪曲協会、公益社団法人落語芸術協会
2007 年 3 月、二代目玉川福太郎に入門し、同年 11 月浅草木馬亭にて初舞台。
2013 年 10 月、木馬亭にて名披露目興行。
全国各地のホール・劇場をはじめ、浪曲定席木馬亭のほか、落語の定席にも出演し、年間
の口演数は 600 席。持ちネタは 150 席以上、「天保水滸伝」 「清水次郎⻑伝」など古典
演目を継承する一方、 新作浪曲にも積極的に取り組み、自作の「地べたの二人」シリーズ
の他、映画「男はつらいよ」全作浪曲化など、幅広く活動を展開している。 2016 年「に
いがた観光特使」就任。
受賞歴
2015 年「第 1 回渋谷らくご創作大賞」
2017 年「第 72 回文化庁芸術祭・大衆芸能部門新人賞」
2020 年「第 37 回浅草芸能大賞・新人賞」
2022 年「令和 3 年度花形演芸大賞・銀賞」
2023 年「令和 4 年度彩の国落語大賞・特別賞」
2026 年「第 76 回芸術選奨・大衆芸能部門 文部科学大臣新人賞」
2026 年「令和 7 年度花形演芸大賞・金賞」
- 太福
- えーっとつまり、VOWって
現在進行形で続いてるってことですか?
- ──
- そうなんですよ。令和の奇蹟です。
- 太福
- すごい。でも、いやあ、なんだろうな、
今回
あらためてちゃんと読みましたけど、
ずっとおもしろいです。
だって、1ページ目からおもしろいし。
- ──
- わはは、「負󠄁ける」の看板ですね。
『ベストオブVOW』より
- 太福
- 根拠とかって、絶対にないじゃないですか。
ここで立小便した人は「負󠄁ける」って。 - でも、有無を言わせない説得力を感じます。
いったい何に負けるというんだ!
- ──
- ものすごく大きなものに負ける感じですね。
人生とか、わからないですけど、
それくらいのスケール感を持つ「何か」に。
- 太福
- 旧字なのか異体字なのか‥‥
この「負󠄁ける」の字の雰囲気もあいまって、
お寺に貼り出されている格言というか、
お小言じゃないけど、
あれに近い、得体のしれない力を感じます。
- ──
- たしかに「死後、裁きにあう」にも通ずる
厳粛なトーンです。
- 太福
- もうね、いろいろおもしろいんだけど‥‥
このネタもすごいですよ。 - 小手先のテクニックとか関係ない感じでね。
『ベストオブVOW』より
- ──
- つまり、「パワー」と書きたかったはずが、
「パアー」に。
しかも「増してる」んですよ(笑)。
- 太福
- 失礼極まりないでしょうが!
- ──
- こういうのもありますよ。
- 太福
- わはは、いいなあ。猪木だ。
『ベストオブVOW』より
- ──
- どんな大恩を受けたとしても
「ダァーッ!」一発でチャラにするという。
お人柄のなせるわざですね。 - ただ「新日的には最高の恩返しである」と、
掲載当時の総本部長はコメントしています。
- 太福
- 新日本プロレス的にはね。なるほど。
- 猪木のネタが出たところで、
長嶋茂雄さんでもいいのがありましたよ。
えーと、これこれ、
どういう打撃のアドバイスなんだという。
- ──
- シャッターチャンスすぎる(笑)。
『ベストオブVOW』より
- 太福
- あたりさわりのないアドバイスなんかでは、
絶対ない気がしますよね。 - あと、これこれ‥‥この、
見たことのないウルトラシリーズもすごい。
原型を留めてなさすぎて。
『ベストオブVOW』より
- ──
- どっちかっていうと、
ウルトラマンにやられるほうに近いです。
- 太福
- 名前も「ウルトうマンタボロウ」とかだし。
- ──
- 「ウルトうヤブン」もいて。
- 太福
- 同時に、妙なクオリティも感じるんですよ。
ネタとしてちゃんと仕上がってる。
- ──
- わはは、なるほど!
VOWとしてパーフェクトである‥‥と。 - ようするに、いったい何なのかが、
ぼくもいまだによくわからないんですけど、
だからこそ「名作」なんだろうな。
- 太福
- 新聞とか雑誌の記事も、けっこう好きです。
これとか、切なすぎるでしょう。
『ベストオブVOW』より
- ──
- 致命的な勘違いをしちゃったお父さんの話。
「軽いキスをしますか」って。 - まあ、時代だとは思いますが、
載せるほうも載せるほうっていうのかなあ、
どういう意図で採用したのか。
- 太福
- 読者のみなさんも、勘違いにはご用心‥‥
みたいなことなんですかね。
- ──
- 結局、こうして新聞に載ったことによって、
VOW投稿人に見つかって、
当時の掲載誌『週刊宝島』に載り、
そのなかから選り抜かれて、
こうしてVOWのベスト盤にも載っちゃって、
さらには単行本に載ったことで
国立国会図書館に収蔵されてしまい‥‥
人類の歴史に永久に刻まれてしまいました。
- 太福
- わはは、お父さんの勘違いが。切ないなあ。
- でも、ぼくは「軽いキスを」っていうのが、
ちょっといいなと思うんですよ。
- ──
- いいです。あくまで紳士的ですよね。
- 太福
- すごく悪気なかったんだろうなってのが。
- ──
- そもそも
相談をもちかけられるくらいの人物ですし。
- 太福
- 知性を感じさせつつ、大失敗してるんです。
そういう人でも
こんな勘違いをしちゃうんだってところに、
人間味ってものを感じますね。
- ──
- 最後「わたしは愚かだった」で締めてます。
- 太福
- そう、決して相手を恨んだり非難してない。
自分が悪かったと反省してるんです。 - 海外の日本語間違いにもいいものがあって、
これとか、あまりにも間違いすぎてる。
『ベストオブVOW』より
- ──
- すごみすら感じますよね。
- 楠瀬誠志郎さんの曲は
「季節がとうりすぎても」ですね、たぶん。
「アソコ椿は恋の花」‥‥都はるみ。
- 太福
- その下の「はじまりはいつも酒」ってのも、
素晴らしい出来栄えですよ。 - もうね、ストーリーが勝手に浮かんでくる。
『ベストオブVOW』より
- ──
- 酒からはじまっちゃったかあ(笑)。
雨じゃなくて。
- 太福
- なかでも極めつけは、これだと思うんです。
- もちろん、ただの誤字だと思うんですけど、
「かるめのシャブ」って。
- ──
- なんてったってミュージシャンですからね。
発言してる人が。
- 太福
- 絶対に犯してはならないミスじゃないかと
思うんですけれども。
『ベストオブVOW』より
(つづきます)
2026-05-12-TUE
