どうやら帰ってくるらしいんです、あの作品が。
湯村輝彦さんの絵と糸井重里の文章によって
1970年代に連載された、伝説的はちゃめちゃマンガ
『ペンギンごはん』の新作が出ます！
令和の時代に、はたしてどんなペンギンが飛び出すのか、
飛び出していいのか、いけるのか？
糸井が湯村さんのスタジオを訪ね、打ち合わせという名の、
しみじみ陽気なおしゃべりをしてきました。
湯村さんと糸井の、前回の対談はこちらです。
湯村輝彦（ゆむら・てるひこ）
1942年、東京生まれ。
イラストレーター、デザイナー、マンガ家。
R&Bなど、ソウル・ミュージックを
こよなく愛する。
別名、テリー・ジョンスン。
「Flamingo Studio」主催。
『湯村輝彦のヒットパレード』『テリー百％』
『決定版 ヘタうま大全集』など著作多数。
糸井重里との共著に『こども用』、
『月刊漫画ガロ』に連載していた
『ペンギンごはん』を単行本化した
『情熱のペンギンごはん』、
同じくペンギンが登場する絵本
『さよならペンギン』がある。
- 糸井
- 僕は今回『ペンギンごはん』の新作を
つくらせてもらうことになったおかげで、
広がりましたよ、人生が。
「できるかな」って思うようなことは、
やったら気持ちいいんですよ。
だから、きのうは興奮してましたね。
ずうっと「ペンギンの原稿、やらなきゃなあ」
と考えてて、思いついたことをメモしていって。
最後は家を出て、別の場所で一気に仕上げました。
- 湯村
- 昔を思い出した？
- 糸井
- うん、思い出した。
あのころは、若かったからできたんだろうなあ。
- 湯村
- 若さってねえ‥‥。
今回は自転車、描かなくていいんだよね。
- 糸井
- 今回はないんじゃないかな。
でもね、たぶん湯村さんのことだから、
自転車がないと
「ニセ自転車みたいなものを描いてみようかな」
と思うんだろうね。
そのときに湯村さんが思いついたデタラメが、
やっぱり、おもしろいんです。
僕も、ふだんこんな仕事しないから、必死ですよ。
- 湯村
- そのぶんおもしろいものになると思うから、
たのしみだね。
- 糸井
- 『ペンギンごはん』新作を宣伝する
ポスターもつくれたらいいですね。
- 湯村
- ああ、そうだね。
もしつくるとなったら
「このへんの絵をポスターにしようかな」とかさ、
もう考えてるんだ。
- 糸井
- 『情熱のペンギンごはん』では、
いままで登場しなかった絵を、
急に表紙に出したんですよね。
- 湯村
- そうそう。
それがイタリアでも出版されることになったんだよ。
- 糸井
- だいたい、イタリアで、
ごはんを食べてるっていうのは‥‥。
- 湯村
- やっぱり、ごはんじゃなくて、
スパゲティかなんかにしたほうがいいよね。
- 糸井
- いやあ、しなくていいんじゃないかな。
- 湯村
- 「情熱のペンギンナポリタン」とか
「情熱のペンギンインドカレー」とか、タイトルを変えて
世界中でやるっていうの、どう？
こういう話が来たら、やる？
- 糸井
- 場合によるなぁ（笑）。
- 糸井
- この宇宙人とか、いいなあ。
着物、でたらめな着方をしてるし。
ああ、うちに帰って、またじっと見よう、
他人事のように。
- 湯村
- タイトルもいちいちおもしろいよね。
- 糸井
- いいですねえ。
こうしてタイトルや本文を見返すと、
やっぱり、僕は原稿で
湯村さんに宛てた手紙を書いてたんですね。
- 湯村
- なるほどね。だから、
オレも「お返ししなきゃいけないな」と
やる気を出してね。
- 糸井
- お返事をくれていたんですね。
「やぎさんゆうびん」みたいに。
- 湯村
- 今回の新作ペンギン漫画を描いていて、
もし「ここはどうしたらいいのかな？」
と相談したくなったら、
どうすればいいの。
- 糸井
- いつでも連絡ください。
- 湯村
- また、お手紙とかで‥‥？
- 糸井
- お手紙じゃなくていいです。
メールでください。
メールアドレス、書いておきましょう、ここに。
- 湯村
- おっ、お洒落なアドレスだね。
- （そろそろおいとまする雰囲気になったものの、
なかなかお部屋から出ようとしない、ふたり）
- 糸井
- これ、クッションなんだね。
- 湯村
- そう。いま、これとか、これとか、
いろんなグッズもつくっててさ。
あそこにある段ボール箱もつくったんだよ。
- 糸井
- あー、いいですねえ。
- 湯村
- これの見せ所はね。底にあるんだよ。
箱の底面をあらかじめ汚してあるの。
印刷でだけどね。
まぁ、誰も気が付かないだろうけど、
どうでもいいことを一所懸命やるの。
これが最高！ って出来上がった段ボール箱を
ビールを飲みながら眺めて
ひと安心するんだよ。
- 糸井
- 安心だよねえ。
そういうことがやりたくて
生きているんだもの（笑）。
- 湯村
- 生きてるんだもの。
- 糸井
- この河童の絵もいいですね。
- 湯村
- それ、いいでしょ。しみじみしてるでしょ。
- 糸井
- うん、しみじみしてる（笑）。
- 湯村
- オレとしては、珍しく静かな世界を描いて、
しみじみとしてみたかった。
- 糸井
- 背景の絵も湯村さんが？
- 湯村
- これは違うんだ。
素材の上に、
河童を乗っけてる。コラージュだね。
これは背景まで自分のタッチで描いちゃうと、
なんか、河童が目立たなくなっちゃうんだ。
あとは、ちょっと河童に喋らせてみたりしてる。
それで河童が生き生きしてくるの。
文字の力は偉大だね。
- 糸井
- 文字は刺激になりますね。
部屋にこもっていたら、新しい情報は、
文字しかないですからね。
だから、やっぱりいまのうちに、
文字じゃない本人にさわっておかないとさ。
- 湯村
- そうか。
そういえば、これまでも
糸井さんにさわったことは一度もなかったな。
- 糸井
- ないですよ。
- 湯村
- いろんな喫茶店でずいぶんお茶を飲んだりしたけど、
一度もさわったことはなかったなあ。
- 糸井
- なかなか、さわれないですねえ。
- 湯村
- じゃぁ、きょうこそは
しっかりさわっておきましょう（笑）。
- 湯村
- きょうはわざわざね、忙しいのに来てもらって、
ありがとう！
- 糸井
- こちらこそ、急ですいませんでした。
じゃ、また！
- 糸井
- いやあ、やっぱりカッコよかったねぇ、湯村さん。
（終わります。お読みいただき、ありがとうございました）
2025-07-21-MON
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湯村輝彦さんが描いた
『月刊漫画ガロ』の表紙が
カプセルトイになります！
発売は2025年11月予定です。そちらに合わせ、
2025年7月16日（水）～７月31日（木）
東京駅エキナカ グランスタ東京
「VINYL GALLERY」で、
湯村さんによる『ガロ』表紙絵の
展示イベントが開催されます。
くわしくはこちら
（VINYL GALLERYのInstagramにリンクします）。『情熱のペンギンごはん』の絵を使ったアイテムや、
『ガロ』の歴代の表紙が集合した圧巻のグッズも
販売されます。
この連載の「打ち合わせ」を経て完成した、
湯村さんと糸井による
『ペンギンごはん』新作が収録された図録は、
イベントでの発売以降も、
オンライン他、各所で発売予定です。