どうやら帰ってくるらしいんです、あの作品が。
湯村輝彦さんの絵と糸井重里の文章によって
1970年代に連載された、伝説的はちゃめちゃマンガ
『ペンギンごはん』の新作が出ます！
令和の時代に、はたしてどんなペンギンが飛び出すのか、
飛び出していいのか、いけるのか？
糸井が湯村さんのスタジオを訪ね、打ち合わせという名の、
しみじみ陽気なおしゃべりをしてきました。
湯村さんと糸井の、前回の対談はこちらです。
湯村輝彦（ゆむら・てるひこ）
1942年、東京生まれ。
イラストレーター、デザイナー、マンガ家。
R&Bなど、ソウル・ミュージックを
こよなく愛する。
別名、テリー・ジョンスン。
「Flamingo Studio」主催。
『湯村輝彦のヒットパレード』『テリー百％』
『決定版 ヘタうま大全集』など著作多数。
糸井重里との共著に『こども用』、
『月刊漫画ガロ』に連載していた
『ペンギンごはん』を単行本化した
『情熱のペンギンごはん』、
同じくペンギンが登場する絵本
『さよならペンギン』がある。
- 湯村
- オレは、絵って、どんな人が描いてるかなんて
わからなくてもいいと思うんだよ。
オレが自分の絵の横でえらそうにしていても、
なんかカッコ悪いなと‥‥。
- 糸井
- ああ、その気持ちはわかります。
あそこにある、コラージュのような作品は、
まさに「どんな人が描いたかわからない」
ものですね。
- 湯村
- あれね。あれはね。
随分昔に手に入れた
ロバート・ラウシェンバーグっていう
アメリカ人の作家の作品でね。
画面に色々なものが無造作に貼り付けられてる
コラージュ作品だね。
よく見ると、
ローリングストーンズのミック・ジャガーが
なんか写ってる新聞記事とか、
カーレースでの事故写真とかもあるんだよ。 - あっちにあるのはロイ・リキテンスタインの
『柱』っていう作品ね。
どっちもカッコいいよね。
- 糸井
- そういうコレクションも一緒に、
展覧会に出しちゃったらいいよ。
- 湯村
- オレがいないときに
この部屋に遊びに来て、
適当に見ていってもらうみたいなね。
そんないい加減で無責任な
展覧会ができたらいいんだけど‥‥
「それでいいです」って言ってくれる人、
あんまりいなさそうだからさ。
- 糸井
- じゃあ、僕がやりましょうか（笑）。
うちは、それ、いいですよ。うん。
- 湯村
- 考えとく。
糸井さんこそ、
「糸井重里・大展覧会」とかやらないの。
- 糸井
- やんないよ。
- 湯村
- なんで？
- 糸井
- だって、なんにも見せるもの、ないんだもの（笑）。
- 湯村
- 糸井さんの文字をいっぱい展示すれば、
もう、すごいのできるじゃん。
- 糸井
- 見るもの、ないですよ。
- 湯村
- 嫌なの、やらないの？
- 糸井
- 嫌だし、やらないですね。
- 湯村
- あははは、じゃ、オレと同じじゃないか。
- 糸井
- お互いに押し付けあってる（笑）。
文字を見せる展示は、
昔々にやったことあるんですけどね。
- 湯村
- いいじゃない、それ。
オレ、なんか糸井の文字、見たいな。やってよ。
- 糸井
- 攻め込まないでください（笑）。
やっぱり、こう、
絵がある場合はやりやすいんですけど。
- 湯村
- 文字だけで潔くやったら、絶対いいよ。
「糸井の文字いっぱい！ いっぱい！ 展」。
- 糸井
- そうやって、人には勧めるんだ。
- 湯村
- だって、おもしろいもの。
なんで「糸井重里・大展覧会」をやらないのかなあ、と
いつも思ってるよ。
- 糸井
- 思ったことないでしょう。
- 湯村
- いやいや、思ってるよ、いつも。
「なんでやらないんだ、糸井がやらないなら、
オレもやらなくてもいいんだ」って。
- 一同
- （笑）
- 糸井
- でも、ほんとに、このお部屋をぐるっと見るだけでも
おもしろいから、湯村さんが恥ずかしくない方法を
考えましょう。
お土産みたいなものもつくれたら、おもしろいし。
- 湯村
- 目の付けどころはいいと思います（笑）。
こういうのをあーだこーだ考えてるときは、
とってもたのしいんだけどさ。
- 糸井
- やる前は、たのしいですよね。
- 湯村
- やり出すと、だんだん「面倒くさいなあ」
になってくる。
- 糸井
- 湯村さんは、僕以上に面倒くさがり屋ですね。
僕も、かなりですけど。
- 湯村
- そうかな（笑）。
- 糸井
- だけどなあ、湯村さんは全部、
描き込んでるからなあ、最後まで。
面倒くさがりなりに、ちゃんとやってますよ。
- 湯村
- 「面倒くさがり屋が描くと、
こういう絵ができる」って感じだな。
- 糸井
- でも、湯村さん、きれい好きですし。
原画や元原稿は、倉庫で管理してるんですか。
- 湯村
- 倉庫はもう、すごいよ。
ちょっと入りたくない。
ドア開けるのが恐い。
- 糸井
- なにが置いてあるんですか。
- 湯村
- 原画のようなものもあるけど、
ほとんどなんだか正体不明のものばかりだよ。
ものが多すぎて一歩も踏み込めなくなっちゃってる。
- 糸井
- 湯村さん自身は、もう
「原画は無くなってもいいや」と
思っているんですか。
- 湯村
- うん、そうだね。
原画っていってもチラシの裏に
サインペンでザザザって感じだからね。
でも、妻は「全部取っておかなきゃダメよ」
って言うんだよね。
- 糸井
- 本人以外は、そう思いますよね。
谷川俊太郎さんの元原稿の場所なんて、
住み込みみたいに泊まり込んでいた編集者さんが、
いちばん詳しく知っているんですよ。
- 湯村
- 谷川さんといえば、糸井さん、
谷川さんの「お別れの会」で、
いいことを言ったんだね。
「谷川さんにさわったことがなかった。
せっかくこの世で出会ったんだから、
一度抱き合いたかった」って、あれ、いいねえ。
勇気を出してさわらなきゃいけないなって、
感心しちゃったよ。
- 糸井
- 生きているあいだに、さわるべきですよね。
- 湯村
- オレねえ、いろんな場面で話すことがあって。
昔、糸井さんと仕事をしたとき、
糸井さんは封筒に原稿を入れてきてくれるんだけど、
その封筒の隅に、必ずなにかが描いてあったの。
文字とか、ちょっとした絵とか。
あれって、なんだかすごくやる気にさせるんだよね。
「オレもなにか返さなきゃ」と思っちゃうんだ。
ある意味では「ふれあい」のような
コミュニケーションだったのかもしれないね。
（明日につづく）
2025-07-19-SAT
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湯村輝彦さんが描いた
『月刊漫画ガロ』の表紙が
カプセルトイになります！
発売は2025年11月予定です。そちらに合わせ、
2025年7月16日（水）～７月31日（木）
東京駅エキナカ グランスタ東京
「VINYL GALLERY」で、
湯村さんによる『ガロ』表紙絵の
展示イベントが開催されます。
くわしくはこちら
（VINYL GALLERYのInstagramにリンクします）。『情熱のペンギンごはん』の絵を使ったアイテムや、
『ガロ』の歴代の表紙が集合した圧巻のグッズも
販売されます。
この連載の「打ち合わせ」を経て完成した、
湯村さんと糸井による
『ペンギンごはん』新作が収録された図録は、
イベントでの発売以降も、
オンライン他、各所で発売予定です。