
南伸坊さんと糸井重里が
あちこちを小旅行しながら、
めくるめく雑談をくりひろげる、
そこそこ人気のシリーズ、黄昏。
思えばずいぶん久しぶりの新作です。
奈良に居を移したゲージツ家、
「クマ」こと篠原勝之さんと話します。
それぞれが二十代のころから
とっくに雑談し合ってる3人、
はたしてどこまで行くのやら。
どうぞ、のんびりおつき合いください。
必然、「老いと死」についても語ります。
糸井重里(いといしげさと)
コピーライター
株式会社ほぼ日会長
雑談オールラウンダー。
ダジャレもシモもどんどん行く。
タコの話なども得意。
南伸坊(みなみしんぼう)
イラストレーター
エッセイスト
蓄積した雑学から雑談を展開。
さまざまなモノマネ経験あり。
タコの話なども得意。
篠原勝之(しのはらかつゆき)
ゲージツ家
作家
鉄や土の作品をつくる一方、
文筆家としても活躍し、
泉鏡花文学賞を受賞する。
過去のエピソード豊富。
- 篠原
- 村松さんの宴会に来てたころ、
糸井はもう、あの、
ロックの本を出してたよな。
- 糸井
- 永ちゃんの本ね。『成りあがり』。
あれは発売が1978年だから、もう出てたね。
- 南
- あの本は糸井さんの名前は出てない?
- 糸井
- あれは、聞き手と編集をやったけど、
自分の名前は出してないですね。
かといって隠したわけでもない、という感じ。
- 篠原
- 売れたんだよ、あれ!
- 糸井
- うん、売れた(笑)。
でもあれ、印税じゃないんですよ。
買い切りなんですよ。
- 篠原
- ああ、そう言ってたな。
- 糸井
- でもね、なんていうか、
当時の私たちって、そんな欲がなかったじゃない?
- 南
- あー、そうね(笑)。
- 糸井
- だから、本出して、
知り合いが「読んだよ!」とか言うだけで、
もうニッコニコなわけですよ。
みんなそういう感じだった。
- 南
- うん。
- 糸井
- でも、『成りあがり』のときは、
あまりにも売れたので、出版社が、
買い切りの原稿料だけじゃ悪いと思ったのか、
その後、どこかの増刷のタイミングで、
記念品みたいなものをくれたよ。
何度目かの増刷で時計をくれて、
そのあとの増刷でライターをくれた。
- 篠原
- ほーー、記念品。
文学の賞でも、なんか、
記念品みたいなの、くれるんだよ。
で、彫刻みたいなもの、もらったんだ。
なんか、子どもがこんなふうになっているような彫刻。
で、まあ、いらないというか‥‥。
- 糸井
- 「置き場に困る」と言いなさい。
- 篠原
- 置き場に困る、置き場に困る!
で、おふくろにやったら、
おふくろも、いらねぇっつうだよ。
- 南
- おふくろも「置き場に困る」と。
- 篠原
- 置き場に困る、置き場に困る(笑)。
もうだいぶ高齢で、死にそうだったけど、
死にそうな人はとくに、
その、置き場に困るね、ああいうのは。
- 糸井
- うちに同居してる女の人が、
女優業でそういう賞をもらうと、
だいたい‥‥置き場に困ってるね!
- 南
- あははははは。
- 糸井
- あの人はさっぱりしてるから、
もう、どんどん置き場に困る。
ばっさりすぱっと置き場に困る。
潔く、ぽーんと、置き場に困る。
- 南
- 気持ちいいね(笑)。
- 糸井
- あんなに気持ちよく
置き場に困る人は、なかなかいない。
- 篠原
- そう考えるとあれだな、
矢沢永吉の本の記念品は、
時計とかライターだから役に立ったんだな。
- 糸井
- そうですね。
腕時計は防水機能がついててときどきつかったし、
ライターも、しばらく置いてあったと思う。
- 篠原
- あのころはみんなタバコ吸ってたしな。
- 糸井
- もうバリバリに吸ってた。
タバコで栄養摂ってた。
- 篠原
- 南も吸ってたよね?
- 南
- うん。
- 糸井
- え、伸坊も吸ってたっけ?
- 南
- 吸ってたよ。
- 糸井
- 伸坊がタバコ吸ってるの印象にない。
- 南
- 吸ってた、まあ、あのころは、
みんな当たり前に吸ってたから、
いちいち誰が吸ってるとか
見てもなかったよね。
- 糸井
- っていうことは村松さんも吸ってた?
- 南
- 村松さん、どうだったかな?
赤瀬川(原平)さんは吸ってたよね。
- 糸井
- 赤瀬川さんは、歯を叩いてた。
- 南
- (笑)
- 篠原
- あの人、そうだったな(笑)。
- 糸井
- こう、ね、下の歯をちょっと出して、
これを爪で叩く。
- 南
- はははははは。
- 糸井
- なんの意味もないいんだ。
- 南
- ははははは。
それで、「ああー、ねー」って言う。
- 糸井
- 言う言う(笑)。
「ああー、ねー」
- 篠原
- ははははは。
「ああー、ねー」
- 南
- 赤瀬川さんが歯を叩くと、
口腔に音が響くんですよ。
- 糸井
- そうだ、そうだ(笑)。
- 南
- あの音をたのしんでたのかな。
- 篠原
- 宴会のあいだ、ずっと叩いてたな。
人の話聞きながら(笑)。
- 糸井
- そうそうそう(笑)。
- 篠原
- 「ああー、ねー」って言いながら。
- 糸井
- 「ああー、ねー」
- 南
- 「ああー、ねー」って、
歯叩きながら、死んじゃったねえ。
(これもひとつの「老いと死」のかたち。つづきます!)
2026-03-09-MON
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写真・山口靖雄(MountainDonuts)
これまでの「黄昏」シリーズ
黄昏
黄昏放談
黄昏 日光・東北編
黄昏 あちこち編
黄昏 スカート編
黄昏 ブータン編






