南伸坊さんと糸井重里が
あちこちを小旅行しながら、
めくるめく雑談をくりひろげる、
そこそこ人気のシリーズ、黄昏。
思えばずいぶん久しぶりの新作です。
奈良に居を移したゲージツ家、
「クマ」こと篠原勝之さんと話します。
それぞれが二十代のころから
とっくに雑談し合ってる3人、
はたしてどこまで行くのやら。
どうぞ、のんびりおつき合いください。
必然、「老いと死」についても語ります。

>糸井重里

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糸井重里(いといしげさと)

コピーライター
株式会社ほぼ日会長

雑談オールラウンダー。
ダジャレもシモもどんどん行く。
タコの話なども得意。

>南伸坊

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南伸坊(みなみしんぼう)

イラストレーター
エッセイスト

蓄積した雑学から雑談を展開。
さまざまなモノマネ経験あり。
タコの話なども得意。

>篠原勝之

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篠原勝之(しのはらかつゆき)

ゲージツ家
作家

鉄や土の作品をつくる一方、
文筆家としても活躍し、
泉鏡花文学賞を受賞する。
過去のエピソード豊富。

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第11回 いつかわかるよ、俺の徳が


糸井
クマちゃんが、
熱心に徳を積む人になるとは思わなかったね。
だって俺らの知ってるクマちゃんはさ、
唐十郎さんの紅テントの用心棒なんかをして、
しょっちゅうケンカしてたからさ、
「手でぶつと手が痛くなるから、下駄で殴る」とか、
そういうことを言ってた。

篠原
ははははは。
南
「下駄で殴る」んじゃなくて、
「下駄を投げる」んだって言ってなかった?
篠原
そうなんだよ。まず下駄を投げる。
下駄が壁にぶつかると、
相手がびっくりするから。
糸井
下駄はいつも履いてたからな。
篠原
そうそう。
南
でも、下駄を投げると、
どっかでそれを取りに行かなきゃいけないから、
タイミングを見計らう必要があるよね。
篠原
そうなんだよ。あれ、怖いんだ。
南
すぐ取りに行っちゃだめだよね。
篠原
まあ、言ってみれば、
相手に武器を与えてるようなもんだからな。
糸井
そうか、向こうもそれを投げてきたら。
篠原
そうそう、投げ返されて、俺に当たると困る。
糸井
つまり、手榴弾なんですね、下駄は。

篠原
手榴弾がわりなんだけども、
当てちゃいけないんだよ、下駄は。
糸井
そうか。
篠原
相手の30センチくらい上とか、
横の壁を狙ってボンと行くだよ。
それがゴンと当たると、狼藉者も、
それで、すいません、ってなるだよ。
糸井
おおー。
篠原
というか、なってほしいんだよ。
南
あはははは。
糸井
こっちだって、
ケンカしたいわけじゃないから。
篠原
そう。怖がってくれなきゃ困る。
直接ぶつけちゃだめでしょ、怪我するから。
南
最初の下駄で戦意喪失してくれないと。
篠原
そうそう。
糸井
ということは、じつはクマちゃんは、
当時から徳を積む人だったんだな。
いまぐるっと回って「そうか」と思いましたよ。
篠原
それが、奈良につながってるからね。
糸井
県庁の人が教えてくれた空き家も、
貸すか、貸さないかは、徳次第だからね。

篠原
そう、徳次第。
糸井
あるよ、俺はと。
南
ははははは、要約した。
糸井
そうそうそう。
下駄と徳の話をまとめると、
篠原
あるんだよ。
「いつかわかるよ」と。
南
俺の徳が。はっはっはっは。

糸井
「いつかわかるよ」はいいね。
篠原
はじめから、
「俺には徳があります」なんつってもね。
糸井
わかんないもんね。
篠原
わかんない、わかんない。
糸井
いつかわかるよ。
きみをしあわせにするよ。

南
ははははは、どうしてすぐ
色っぽい方に持ってくんだ。
糸井
「いつかわかる」って、
全体に、おもしろいなと思ってさ。
南
(笑)

(この雑談のすばらしさ、いつかわかるさ)

2026-03-07-SAT

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  • 写真・山口靖雄(MountainDonuts)

    これまでの「黄昏」シリーズ

    黄昏

    黄昏放談

    黄昏 日光・東北編

    黄昏 あちこち編

    黄昏 スカート編

    黄昏 ブータン編