南伸坊さんと糸井重里が
あちこちを小旅行しながら、
めくるめく雑談をくりひろげる、
そこそこ人気のシリーズ、黄昏。
思えばずいぶん久しぶりの新作です。
奈良に居を移したゲージツ家、
「クマ」こと篠原勝之さんと話します。
それぞれが二十代のころから
とっくに雑談し合ってる3人、
はたしてどこまで行くのやら。
どうぞ、のんびりおつき合いください。
必然、「老いと死」についても語ります。

>糸井重里

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糸井重里(いといしげさと)

コピーライター
株式会社ほぼ日会長

雑談オールラウンダー。
ダジャレもシモもどんどん行く。
タコの話なども得意。

>南伸坊

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南伸坊(みなみしんぼう)

イラストレーター
エッセイスト

蓄積した雑学から雑談を展開。
さまざまなモノマネ経験あり。
タコの話なども得意。

>篠原勝之

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篠原勝之(しのはらかつゆき)

ゲージツ家
作家

鉄や土の作品をつくる一方、
文筆家としても活躍し、
泉鏡花文学賞を受賞する。
過去のエピソード豊富。

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第7回 泉鏡花賞で奥歯を入れた


篠原
それで、自分で抜いたあと、
ずーっと奥歯がないまま生きてたんだ。
そしたらほら、俺、小説(『骨風』)で、
泉鏡花賞をとっただろう? それで儲かった。
糸井
金が入った?
篠原
ウン。あれで100万ぐらい入った。
あの100万でね、奥歯を入れた。

南
役立てたんだね。
篠原
そうなんだよ。
俺、30代で奥歯を自分で抜いて、
奥歯がないまま、ずーっと歳を取って、
そのままじじいになったら、
奥歯がないとものをよく噛み砕けないから、
だんだん調子が悪くなった。
糸井
ああー、そういうことはあるだろうね。
篠原
で、いよいよこれは歯を入れなきゃな、
っていうときに、だよ。
南
泉鏡花賞。
糸井
泉鏡花さんのおかげで。
篠原
そうなんだよ。だから、
金沢で受賞の講演会やったときも、最後に、
「泉鏡花さん、ありがとう!」
つってね、しめたの。
糸井
歯が入ったお礼を。
篠原
そうそうそう。
歯が入るの、うれしくてさ。
南
ふふふふふ。
糸井
そういえば、宮沢賢治賞っていうのを
吉本隆明さんがもらったときも、
「賞金もらえるから行かなきゃ」って言って、
めずらしく車椅子で出かけて行ってた。

篠原
うん。その気持ちはわかるな。
あの思想界の巨人と、
俺みたいなインチキを並べちゃいかんが。
南
でも、うれしいのは同じだ。
糸井
そういうときの賞金って、
やっぱりあったほうがいいんだね。
篠原
それで、賞をもらったときにね、
いろんなやつがお祝いに来たんだ。
東京のアングラ時代の知り合いとか、
そういうのがみんな来た。
で、賞金もあるから、汽車賃も宿賃も、
ぜんぶ俺が払って、宴会のお金も出した。
そしたら3分の1くらい、すぐなくなった。
南
みんなからあてにされてたんだ。
篠原
そう。で、残りで奥歯を入れた。
糸井
残っててよかったね。
篠原
まあ、歯のぶんは取ってあった。
だからこの歯にはね、
泉鏡花さんが入ってるんだ。
糸井
彫っときたいね。
鏡花の「鏡」の字ぐらいを、歯に。

南
奥歯は、何本入れたの?
篠原
2本。
南
じゃあ、「鏡」「花」と彫れるね。
篠原
そうだな、1本ずつな。
一同
(笑)
篠原
でも、そのとき入れた歯はね、
いま、ほんとに助かってんだよ。
糸井
いまじゃもう、バリバリだ。
篠原
噛む噛む噛む、なんでも噛んじゃう。
糸井
なんでも噛んじゃう(笑)。
南
ははははは。

(まだまだ続きますとも)

2026-03-03-TUE

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  • 写真・山口靖雄(MountainDonuts)

    これまでの「黄昏」シリーズ

    黄昏

    黄昏放談

    黄昏 日光・東北編

    黄昏 あちこち編

    黄昏 スカート編

    黄昏 ブータン編