
「東京糸井重里事務所」時代から
何十年も「社長」をつとめた糸井重里が、
次の旗手に役割を渡すことにしました。
新しい社長は、ほぼ日黎明期から在籍した、
みんなが「あやさん」と呼ぶ小泉絢子です。
糸井は会長となりました。
どうしていま? これからどうなっていく?
ふたりに訊いてみました。
インタビュアーはほぼ日の菅野です。
- ──
- 昨年(2025年)11月、糸井さんが会長になって、
小泉さん‥‥私はいつものとおり
今日も「あやちゃん」と呼ぶことにします、
あやちゃんが社長になりました。
じつは私は、いち従業員として、
糸井さんが社長でなくなる日が
こんなに早く来るとは思っていませんでした。
以前から、計画はあったのでしょうか。
- 糸井
- もうずっとありましたよ。
- ──
- たしかに‥‥はい、
ずっとおっしゃってました、そうですよね。
- 小泉
- なぜおふたりとも急に小声に(笑)。
- ──
- 最終的にはあやちゃんが
「社長に立候補した」と聞きました。
糸井さんからみて、
あやちゃんが社長に決まる理由は
どういうところにあったのでしょうか。
- 糸井
- それは、みんなが
「あやちゃんでしょ」って
思ってるからです。
- 小泉
- (笑)
- 糸井
- ぼくは「次の社長、誰がなるんだろう」って、
話題になること自体が
ずっと、とっても嫌だったの。
- ──
- けっこう長いあいだ、ことあるごとに
「糸井さんが退かれたらほぼ日はどうなりますか」
「次期社長候補は?」
と言われてましたね。
- 糸井
- それ、苦手だった。
いっとき本気で、社内社外かかわらず、
「選挙にできないかなぁ?」と思ってた。
- ──
- わぁ、そうなんですか。
- 糸井
- いろんな人に立候補してもらって、
「私はこの会社をこうしたい」とか、
「こんなふうになるべきだ」とか話してもらうんです。
ほぼ日を見てくれてる人にも、
たとえば「生活のたのしみ展」のアルバイトの人にも
票を入れてほしい。
でも、本気で考えはじめると、
どうしても手間が多くなっちゃうことがわかりました。
選挙ってもちろん、
平等公平であるべきものだから、
ルールの問題が大きくなりすぎてしまうんです。
いろんなことに配慮して
ことを運ばなくてはならず、
ちょっと無理だということになって。
- ──
- 本質がずれてしまいかねないですね。
しかし、本気で選挙を考えていたとは。
- 糸井
- うん。でもそのやり方はないんだなと思って、
そこから先はあまり何も考えずにいました。
するとみんなが、なんだか
「あやちゃんじゃないですか」みたいに言ってる。
それとね、大事なことがもうひとつあって。
- ──
- はい。
- 糸井
- どこの会社でもそうかもしれないけど、
社長って、いわば「気の毒」なんだよ。
きっとね、誰がなっても気の毒なんです。
だから「嫌なのにやってる」状態って、
よくないでしょう。
さらに誰からも支持されてない人に
「努力してがんばれよ」と言うのもかわいそう。
- ──
- そこに、みんなから支持されている、
あやちゃんがいて。
- 糸井
- そうそう。
誰がなってもかわいそうだなぁ、
と思っているところに
みんなが「小泉さんじゃないですか」と、
あやちゃんに押しつける感も含めて、声があった。
- 小泉
- いや、押しつけるとか、
そんなふうには思っていません(笑)。
- ──
- 「白羽の矢」の予感はあったのでしょうか。
みんなの気持ちを先まわりして
考えてくれたから、立候補?
- 小泉
- いえ‥‥その立候補は、
役員を含めた、この先を考えるメンバーの
合宿中だったんです。
そのときみなさんに気持ちをお伝えしたんですが、
それは自分のなかでとても自然だったんです。
- ──
- 自然?
- 小泉
- 自分の心の中に
スッと考えが降りてきたような感じです。
「現実にそういう日が来る」という覚悟が
ふつうにできていた、というか。
- ──
- その覚悟は、
長い時期をかけてできたのでしょうか。
- 小泉
- まずは、前提として、
私以上にもっと「できる」人は
たくさんいるという事実があります。
- ──
- 適任者はほかにいるかもしれない、と。
- 小泉
- いっしょに働いてきた仲間は
よく知っていると思いますが、
私の人生観として、そうした思いが根本にあります。
たいていのことは、私よりできる人が
いっぱいいる。それは確かです。
ただ、私が社長になると立候補したときに
スッと降りてきたものは、
それを超えるような強いものだったんです。
菅野さんも、そしてほぼ日を
長く読んでくださっているみなさまも、
よくわかっておられると思いますが、
この会社のいいところや稀有なところ、
あると思います。
「この会社を続けたいな」それがいちばんでした。 - これだけ多くの人がおもしろがって
見てくださっているし、
私たちも働き続けている。
ここは仕事場ではあるけれど、遊び場でもある。
ほぼ日を続けたいと自分は強く思っている。
もしかしたらほかの人も同じように思ってて、
社長になりたいのかもしれない。
でも、自分の気持ちだけは確かです。
なぜならそう考えているのは自分だから。
- ──
- あやちゃんのなかで、
そうとうな確信だったわけですね。
- 小泉
- 確信だったのかよくわからないんです。
意地かもしれない(笑)。
私は意地でもここを続けたい。
どうやったら、ほぼ日をこの文化のまま
もっと伸ばせるだろうか。
それを真剣にまじめに、
ちゃんとやりたいと思いました。
- 糸井
- ぼくは現場にいたけど、
あやちゃんのその表明、おもしろかったよ。
(明日に続きます)
2026-03-19-THU