それまでの「なにかとうまくいかない」ことには、
どうやら理由があった‥‥
ADHD (発達障害)だとわかってから、
葉っぱとデザインナイフに出会った。
そこから湧き出すような創作がはじまります。
大人気の葉っぱ切り絵アーティストの
「じぶんのはなし」は、なんだか勇気をくれます。
動画で配信中の「ほぼ日の學校」の授業
一部を読みものでご覧ください。

>リト@葉っぱ切り絵さんプロフィール

リト@葉っぱ切り絵(りとあっとはっぱきりえ)

葉っぱ切り絵アーティスト。
2019年から独学でボールペン絵など
アーティスト活動をはじめ、
2020年に葉っぱ切り絵の制作をスタート。
ADHD(注意欠陥・多動性障害)による
過集中やこだわりを活かしたその作品は、
緻密で繊細な技術と豊かな世界観で、
日本のみならず海外にも多くのファンを持つ。
作品集に『いつでも君のそばにいる』
『葉っぱ切り絵絵本
素敵な空が見えるよ、明日もきっと』などがある。

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  • 一枚の葉っぱで完結させる。

    ほぼ日
    リトさんの作品を見ていきたいと思います。
    この作品は、2021年7月の作品ですね。

    リト
    これは大変だったなぁ。
    ほぼ日
    作品を見ると思うんですが、
    「自立している」というのはすごいですね。
    リト
    そうなんですよ。
    これは僕のこだわりで、空にかざして撮る都合上、
    葉っぱを片手に持って、立たないと撮れないんですよ。
    それがおもしろいなと思ってて、
    立たなくていいんだったら、どうにでも作れるんですよ。
    キャラクター達を切り離しちゃってもいいわけで。
    でもそれは、僕の中では邪道で。
    ほぼ日
    なるほど。
    リト
    この「一枚の葉っぱ」で完結してることが
    僕の売りだと思うので、
    2枚の葉っぱをくっつけたりすると、
    僕のルールは崩壊しちゃうんですよ。
    「一枚の葉っぱで」なんとかつくります。
    そのための僕のアイディアの一つとして、
    真ん中の軸となる太い葉脈を残す。
    そうすると、こんなに細くてもピンと立つんですよ。
    ほぼ日
    これどうなってるんですか?
    音符のところとか、すごいですね。
    リト
    真ん中の軸さえ残しておけば、
    そこを通したときに何でも立つんですよ。
    そのことに、やってるなかできづいて。
    ほぼ日
    (笑)
    リト
    鳥を飛ばしてみたり、
    流れ星がビュンと流れていったり、
    なんでも行ける!と思って。
    これにきづいたのはデカかったですね。
    ほぼ日
    成功した作品の裏には、
    何十枚もの失敗があるわけですね。
    リト
    ありました。
    これ真ん中だから成立するんですけど、
    右とか左に棒があっても、
    ベロンと傾いちゃって全然立たないですよ。
    太い葉脈を残すと、
    しっかりピンと立つんだという、葉っぱの強さですよね。
    ほぼ日
    これは奇跡の一瞬じゃなくて、
    立ってるということですか?
    リト
    立ってます。
    何枚でも撮れます、この写真。
    ほぼ日
    はぁー。
    リト
    これはアイビーという「つたの葉っぱ」なんですけど、
    最初は使っていなくて、
    フォロワーさんから、たまたま送ってもらって、
    使うようになったんです。
    「私のところに、いろんな葉っぱがあるので、
    ぜひ使ってください」と。
    せっかくもらったから、
    使わないのも申し訳ないなと思って、
    電車の作品かなにか作ってみたら、
    思った以上に、アイビーが使いやすくて、
    それから使うようになりました。
    いまじゃ、僕の中で主力になっちゃって。
    その方のおかげですよね、
    アイビーの良さにきづけたのは。
    ほぼ日
    いまは、何種類ぐらいの葉っぱがあるんですか?
    リト
    サンゴジュとアイビーの2種類です。
    サンゴジュはいわゆる
    葉っぱらしい形の長い葉っぱです。

    これがそうです。
    サイとカエルと。
    ただサンゴジュだと表現できないものが結構あります。
    細長いので。
    アイビーは縦横があるので、
    これで世界が広がったんですよ。

    日没までに間に合うように。

    ほぼ日
    タイトルがシンプルであるが故に、
    みなさんが想像力を膨らませることができるという、
    作品のストーリー性も魅力の一つだと思うんですけれど、
    例えば、この作品「いつでも君のそばにいる」は、
    どういう順番で考えたんですか?

    リト
    まず、紙に下絵を描いていくんです。
    シャーペンで。
    今日はどんな作品にしようかな‥‥と、
    何もわからない中で、
    とりあえず、ペンだけを走らせて、
    適当にいろいろ描くんです。
    その中から一つ、
    うさぎくんが下を向いて落ち込んでる絵を見つけて、
    ここからお話が生まれるかもしれないと思って。
    ただの「落ち込んでるうさぎくんの絵」
    というだけじゃなくて、
    これまでやったことのない涙の表現を、
    目の下をちょっと切り抜けば、
    「うさぎくんがぽろっと涙を流してる」
    ように見えると気づいて。
    これいけるぞ!となって。
    じゃあ、
    うさぎくんはなんで泣いてるんだろう‥‥。
    もしかしたら横にアニキ分みたいな存在がいて、
    泣いてるうさぎくんに対して、
    「どうした?」みたいにしたら、
    ちょっとおもしろいかもしれないと思って、
    くまさんを横に立たせた。
    さらに、くまさんだけじゃなくて、
    森の仲間たちみんなで励ましている絵にしたら、
    もっとハートフルになる。
    葉っぱの空いてるスペースを使って、
    ハリネズミくんが四つ葉のクローバー持っていて、
    上にカエルくんがいる、
    くまさんとうさぎくんのちょっと隙間に、
    いもむしくんを入れて‥‥みたいな感じで。
    ひとつの主役のキャラを立ててから、
    まわりに今まで自分が作ってきたモチーフから、 
    役者を配置していく感じですかね。
    一枚の葉っぱの中に、
    なんとかその舞台を落とし込む。
    そういう感じで作った記憶があります。
    ほぼ日
    うつむいてるうさぎさんから、はじまったわけですね。
    リト
    悲しい作品ってあんまりなかったので、
    おもしろいなと思ったんです。
    ただ、この時点では、
    タイトルやストーリーについては、
    まだ何も分からない状態で。
    ただただ「今日も何か投稿しないといけない」
    と追われてる感じだけで、
    とりあえず、やり始めるんです。
    タイトル決めてから始めると、とてもじゃないけど、
    日没に間に合わないので。
    背景が夕日なのも、
    結局、日没ぎりぎりになっちゃった、ということなんです。
    ほぼ日
    (笑)
    よかったですね、この作品に関しては。
    リト
    撮ってみたら、
    この作品にはこの背景が合うなと。
    ほぼ日
    青空よりも、夕日の方がいいですね。
    リト
    偶然ですね。
    こういうのも全部。
    ほぼ日
    キャラクターの男女の区別もなく、
    年齢も限定されてないというのは、
    魅力の一つですね。
    リト
    いちおう自分の中では
    何となくは決めてるんですよ。
    だけど、みんなにはあえて言わない。
    想像して、あなたのストーリーで
    楽しんでくれればいいという感じですかね。
    僕は絵の勉強をしてきたわけでもなかったので、
    キツネを作ったつもりなのに、
    このタヌキかわいい!
    みたいに間違えられることが多々あって。
    ほぼ日
    (笑)
    リト
    それを「いや、違うんですよ」と言うのも
    恥ずかしいじゃないですか。
    「えっ、これキツネだったんだ」みたいな。
    そう思われるのも恥ずかしいし、
    シルエットだから、色を塗り分けられないんで、
    もういいやと思って。
    よく勘違いはされるんですけど、
    「実はこの動物ですよ」
    みたいなこと言うのも野暮だから、
    友達同士なのかもしれないし、
    親子なのかもしれないし、
    部活の先輩後輩かもしれないし、
    そこはみなさんの自由に。
    それは見てくれた人それぞれの、
    記憶の中の自分と重なる部分が、
    たぶんあるんですよね。
    昔こういうことがあったなとか、
    友達にこういうことをしてあげたなとか、
    その人その人の物語があって、
    それと重ね合わせて楽しんでもらおうと。
    ほぼ日
    例えば、この作品だったら、
    子供にきつく当たり過ぎちゃったな、
    みたいに振り返る親御さんもいるかもしれませんし、
    みんなが自分の世界として考えられる感じはしますよね。
    リト
    そうですね。
    でも、それを狙っていたわけではなくて、
    みなさんが自由に発想してコメントしてくれて、
    それを毎日読ませてもらうなかで、
    じゃあ、そういうふうにしちゃおう、
    となっただけなんで。
    僕の技術やストーリーが
    作品になるわけじゃなくて、
    ほんとに、みんなに助けられてるというか。
    見て、コメントをくれて、そのおかげで
    僕のアートがただ成り立ってるだけなんです。
    だからコメントに対しては、
    できるだけ真摯に返信してます。
    もっと楽しんでくださいと。
    ほぼ日
    リトさんの作品を見ていると、
    見る側の気持ちとして
    こうありたいと思ってる世界が
    ここにあるという感じがして。
    その1枚の中に
    なにか理想の世界のようなものが
    見えてくるように思います。
    リト
    僕はちっちゃい時『となりのトトロ』とか大好きで、
    ビデオテープが擦り切れるぐらい見てたので、
    同じ地球上なんだけど、どこか違う世界があるとか、
    ドアを開けると隣に違うものが広がってる
    みたいな世界に、すごい憧れがあったんですよね。
    葉っぱ切り絵をはじめるきっかけになった
    スペインの作家さんの作品を初めて見たときも、
    それに近い感覚を受けたんですよ。
    このちっちゃい葉っぱの中に、
    なんか全然違う世界があって、
    こう近づいて見ていくと、
    自分がこの中に吸い込まれていくような。
    そういうのを目指していて、
    そこから影響を受けてると思いますね。

    これから先、やりたいこと。

    ほぼ日
    2年やってきて、
    この先の展開は考えてますか?
    リト
    最近考えるようになりました。
    いままでは、展示会どんどんやって、
    知名度上げて、いつかは海外で、
    ぐらいの感じだったんですけど、
    最近、新しい目標ができて。
    作品の販売はやめて、
    どんどん作り溜めていきたいなと
    思ってるんです。
    作って売って、作って売っての自転車操業だと、
    5年6年先も、たぶん同じことやってるなと思って。
    お金に困ってるというわけでもなくなったので、
    販売をできるだけ減らして、作品をどんどん溜めて、
    ある程度、大きな規模で展示をやりたいと思ってます。
    いま家の中に、作品が入ったファイルが
    いっぱい置かれてるんですけど、
    もったいないなと思うんですよ。
    見たい人たちはいっぱいいるのに、
    僕の家にあるというのが。
    それをどんどん回していきたいんですよね。
    2年先、3年先、どんどん溜めて、
    百点以上のでっかい展示会をする。
    そういうのがいまの目標です。
    ほぼ日
    現物を見ていただきたいという思いが、
    すごくありますよね。
    リト
    そうなんですよ。
    写真で見ても、きれいなんですけど、
    実物の「葉っぱで作ってるんだ」というのと、
    写真で見るより「もっとちっちゃいんだ」という、
    その驚きや感動は、
    展示会に来たみなさんの様子を見て、
    肌で感じています。
    もう一つは、基本的に、
    SNSでしか活動してないので、
    お年寄りやちっちゃいお子さんたちにまで
    広げていくためには、
    実物をどこかに展示して、
    親子やお友達同士で直接見てもらう、知ってもらう
    という機会が、もっと欲しいなと思ってます。
    いま見てくれてる人たちにも、
    引き続き楽しんでもらいたいし、
    SNSだけだと限界があるので、
    まだまだ広げていきたいと思っているので。
    地方とかのイベントに出すと、
    初めて見たという人も、すごく多いんですよね。
    作品集が出てることすら知らなかったみたいな。
    だから、バズって何回もテレビ出てても、
    まだこんなに知らない人たちいるんだ
    ということに気づかされます。
    なので、展示するという方法で、
    売ることよりも、
    「見てもらう」ことを主軸にしていきたい。

    リト@葉っぱ切り絵さんの授業のすべては、
    「ほぼ日の學校」で映像でご覧いただけます。


    「ほぼ日の學校」では、ふだんの生活では出会えないような
    あの人この人の、飾らない本音のお話を聞いていただけます。
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