かつて、「ほぼ日」には「ミーちゃんの縁側。」という
80歳をすぎてからパソコンを初めて使いこなすようになった
糸井重里の母A(ミーちゃん)の日記が連載されていました。
この日記には、お家のおとなりのケーキやさん
『Schwestern Haus(シュヴェステルンハウス)』
のことがたくさんでてきました。
彼女が日記のなかで「仕事」と言っているのは、
この店のお手伝いですし、日記のなかでの食事というのは、
料理教室もやっているこの店の店主である
金井初美さんがリーダーシップをとって作っているものです。
2002年から毎年年明けに
このお店の冬期限定のチョコレートケーキ
『ザッハトルテ』を販売しています。

今年ももちろん「ほぼ日」でお手伝いします。

※ザッハトルテの2023年の受付は
終了しました。ご購入ありがとうございました。

 

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【予告】お話をうかがいました。 ほぼ日新年名物 ザッハトルテの販売!

「ほぼ日」ではここ20年ばかり、
年明けには、前橋の「シュヴェステルンハウス」の
ザッハトルテの注文をご案内しています。

きっかけやくわしいこと、
どんなザッハトルテかということは
こちらにまとめました。

さて、2023年のザッハトルテは、
700個ご用意いたします。
2023年1月11日(水)の午前11時から、
メールでの受付を開始します (先着順です)!

※2023年の受付は終了しました。
ご購入ありがとうございました。

ちょっとややこしいのですが、
この販売は、「ほぼ日」ストアでの販売ではなく、
直接ケーキやさんにメールで注文していただく、
という方法で行います
くわしくは↓こちらのページを、
受付開始の前によーく読んでおいてくださいね。

 

作ることそのものが好きだから、
ずっとザッハトルテを
作っていたいなと思う」

 


こんにちは、ほぼ日ザッハトルテチームです。
受付前日の本日は、毎年恒例、
前橋の『Schwestern Haus(シュヴェステルンハウス)』
でのお話をお届けします。
いつもと違うのは、ほぼ日のメンバーです。
今回は食品チームのたけうちと一緒に
伺ってきましたよ。
たけうちは、食品チームにいるだけあって、
食べることが大好き。
とくにお菓子(パン、スコーン、ケーキetc.)に目がなく、
自分でもよく作っているそうです。
もちろんシュヴェステルンハウスの
ザッハトルテのファン!‥‥ということで
今回お誘いしました。
毎年読んでくださっている方には
既にご存知の話もあるかもしれませんが、
たけうちが聞くザッハトルテの秘密、
ぜひお付き合いください。

▲前橋「シュヴェステルンハウス」に到着! ▲前橋「シュヴェステルンハウス」に到着!

ーー
はじめまして。
金井さん
ようこそいらっしゃいました。

▲右が店主の金井初美さん。左がいっしょに働いている紀子さん。
ほぼ日・たけうちはちょっと緊張している。
▲右が店主の金井初美さん。左がいっしょに働いている紀子さん。 ほぼ日・たけうちはちょっと緊張している。

ーー
今日は、あらためていろいろ教えてください。
ザッハトルテを作ろうと
思ったきっかけは何だったんですか?
金井さん
きっかけはね‥‥何だろうな、
私のなかではザッハトルテに憧れがあった。
ーー
憧れが。
金井さん
うん。私、あんまり好きなケーキ屋さんとか、
職人さんっていないんだけど、横溝さんは好きなの。
ーー
あっ、リリエンベルグの!
お会いしたことがあります。
金井さん
そう、あの方はデメルにいたじゃない?
横溝さんの考え方が好きで、その横溝さんがザッハトルテを
作っていた、ということで、ザッハトルテはいいな、と
思っていたのね。憧れてた。
もともと私は料理教室をやっていたんだけど、
当時の家の事情もあって、
あ、これはお店をやったほうがいいなと思って。
焼き菓子が好きだったし、私自身もやりたかったし。
紀子さん
わりと動機は不純だよね。
じゃ、お店をやろうか‥‥みたいな。
金井さん
そう、成り行きでね。
もともと柔らかいケーキが好きではなくて、
好きな焼き菓子というと、生クリームを使わないもの。
あ、それはドイツ菓子じゃん、と。
それで、ドイツ「風」ってことにして、
お店をはじめたんです。
ザッハトルテはドイツ菓子じゃないけど、
本場はウィーンだけど、ドイツにもあるから。
ーー
ああ。
金井さん
あとは、うちの前にいたビルの隣が
ピアノ屋さんだったんだけど、
そこにドイツから毎年来ている日本人がいたんです。
その人達、音楽家なんだけど、
いつもはフランクフルトの郊外に住んでいるんです。
ーー
へえー。
金井さん
その人達が毎年来ていたので親しくなって、
すると今度は逆に私達もドイツに誘われたので、
行くようになったの。
毎年、おうちに荷物を置かせてもらって、あちこち回って。
ーー
毎年、すごいですね。
それはおいしいものを見つける旅、みたいな感じですか。
紀子さん
そう。いろんなところでぶらぶら飲んだりね。

金井さん
お世話になっていたのが音楽家のおうちだから、
そこでコンサートが開かれる。
招待客にお料理を出すんだけど、
どうにも手が足りない様子で、
ああ、それならお手のもの、
ということで私達も手伝ったりしていたんです。
台所は使いにくかったけど(笑)。
そうやって毎年行ってたから、お菓子の道具、
こんなのがあるよって教えてもらったりね。
今も使っているものもあります。
ーー
じゃあ、道具は海外調達なんですね。
金井さん
全部じゃないけれどね。
道具が丈夫だからずっと使えます。
紀子さん
昔はクッキーの型とかも使ってたわね、
一気に抜けるやつ。
ーー
ザッハトルテのレシピはどうやって生まれたんですか。
金井さん
それは、試行錯誤。
ーー
試行錯誤!
金井さん
今もそんな感じなんだけどね。
基本のレシピはそんなに変わってないけれど、
配合を毎年変えてるし。
ーー
最初のひとつ、というのは
どうやって作ったんですか。
金井さん
最初はドイツで本を買ってきて、
まぁドイツ語わからないけど、
お料理用語なんて大体決まってるし、
それは何とかなった。
ただ、粉が違うから全然でき上がりが違うのよ。
ーー
粉が違うと結構変わりますよね。
本場の本を見てアレンジしていった、ということですね。

金井さん
そうそう。基本をベースにして、こんな感じかなって。
もちろん私たちもウィーンのホテルザッハに行って
本場のザッハトルテを食べてみました。
技術的にはあちらのほうが難しい。
でも、あのあまさは日本の湿度には合わないかな。
ーー
私もウィーンに行ったんですけど、
あの場所で食べるからこそ、おいしいというか。
金井さん
すっごくあまかったでしょう。ずっしりきますよね。
ーー
はい。それで、日本人の好みに合わせた味を
作るようになったんですね。
金井
日本人の好み、というよりは私たちの好み、かな。
たまたまそれを気に入ってくれる人がいるんですね。
製法がそもそも違うし、
「あれ、私の知ってる、ウィーンで食べた
ザッハトルテと違う」
って思う方もいると思います。
紀子
毎年言っているけど、ザッハトルテって
名前にしなきゃよかったね‥‥って(笑)。
ーー
その、最初のひとつが完成するまでは、
どれくらい時間がかかったんですか。
金井さん
最初の1個は、そんなに時間かからなかった。
ただ、その後どんどん変わっていったから、
最初から考えると、今のものと違うと思う。
形は同じなんだけど、原料のチョコレートも変わったし。
紀子さん
あと、作っている時期によっても違うし。
金井さん
日によって気温が違うから、
酸味のあるクーベルチョコレートと、
ミルクチョコレートの割合を調整してるんです。
チョコレートをかけるタイミングでも変わるし、
たくさん作る日と、そうじゃない日でも少し変わるし。
ーー
確かにその日の焼きのタイミングとか、生地の状態は
変わりますよね。
それって、手作りならではの良さですよね。
1つ1つの個性があるというか。
金井さん
そうそう同じように見えるけど違うのよね。
同じようにできたらつまんないし、
違うからずっとやってられる。
次はこう工夫しようって、30年作っていても思うもの。
ーー
日々アップデートしているってことですね。
金井さん
だから続けられるのかな。
年々、気温が高くなってしまって、
昔は10月から作っていたけど、
今はもう温暖化で無理だし、
作れる数を減らしてしまうことがあっても、
ずっと作っていたいなという気持ちがある。
作ることそのものが好きなのね。
ーー
ああ、その作ることが好きという気持ち、わかります。
でも今って、作り続けていくにも、
原料の値上がりも大変じゃないですか。
金井さん
そう、そうなんです。
それで、実は今年は少し上げさせていただいたんです。
ーー
クオリティを守るためには、ということですね。
金井さん
そう、材料の質を落としたくはないんです。
それは、自分が一番いやだもん。

紀子さん
卵なんか毎年上がってる。
優等生って言われてる卵でさえ、5割増し!
一番安いときに比べたら。
ーー
5割はすごいですね。
金井さん
卵は毎日届けてもらってるんです。
やっぱり新鮮なものを使いたいし、
そのほうが卵黄と卵白を分けるとき、
きれいに分けられるし。
あとバターね。有塩バターが好きで
たくさん使ってるんだけど、
それが上がっちゃうとキツイかな。
紀子さん
バターも、長い目で見たら上がってるけどね。
ーー
大変。
だって今、小麦やお砂糖も‥‥。
金井さん
そう、みんな上がってます。
上白糖も業者が変わって、かたまって
使いにくいものが届いたりして困っちゃって。
でも、上白糖と有塩バター使っている
お菓子屋なんて、あまりないかもしれない。
グラニュー糖と無塩バターを使うのが
一般的なんだけど。
紀子さん
でも、だからあのコクがでるんだと思う。
金井さん
型に入れるバターも有塩なの。
そうすると、最初の一口目に塩味を感じて、
こっくりとした味になるんです。
ーー
それがまたいいですよね。
お二人はお料理教室もされてますけど、
そこでザッハトルテは教えないんですか?
金井さん
一回だけやったんだけどね。
紀子さん
うまくいかなかったね。
ーー
何でですか。
金井さん
やっぱりレシピの手数が多いと、教えるのが難しい。
私でさえ、昨日と今日は微妙に違うのに、
教えるなんて無理だと。
ーー
私も以前、料理教室をやっていたんですけど、
クリームの泡立てとか、人によって違うし、
教えるのって難しいなと思いました。
金井さん
加減をしなきゃいけないものは教えにくいんです。
レシピは公開できるけど、
加減っていうのは、どうにもなんない。
自分だって毎日同じようにはできないもの。
ーー
でも、私、習ってみたいです。ザッハトルテ。

▲お菓子作りが好きで好きで仕方ないたけうち。
▲お菓子作りが好きで好きで仕方ないたけうち。

金井さん
ほんと? じゃあ今度やってみようか。
ーー
やったぁ、うれしいです。
ところで、いつも何時くらいから
ザッハトルテを焼いているんですか。
金井さん
朝4時半に起きて、5時には‥‥。
ーー
えーー!
紀子さん
笑っちゃうわよね。パン屋は朝早いからいやだ、
お菓子屋にしよう、なんて言ってた人が、
今じゃ朝5時に電気つけてるの。(笑)

金井さん
朝だと、お客は来ないし、この時間で
焼き上がるだろう、みたいなペース配分がうまくいく。
できたものを冷ます作業もいるし、計画通りにいくから。
ーー
前の晩に仕込みはするんですか?
金井さん
計量はやっておいてもらうんです。
チョコレートの仕込みは自分でやるけど、
週末にアルバイトさんが来てくれて、
紀子さんと二人で、粉などの計量は
1週間分を全部やってくれます。
そうしないと無理。
計量が全部してあって、あんずジャムが煮えてあって、
朝5時に店に入って、作って、
オーブンに入れればこの時間に焼き上がる、
っていうのが、頭に入ってる。
紀子さん
私はね、金井がしなくてもいいことを
することはないと思うの。
誰がしてもいいことってあるから。
でも、この性分だから、計量なんかもやっちゃうのよ。
金井さん
性分でね。(笑)
どうしても気になっちゃう。
ーー
ちなみにこのザッハトルテは
冷蔵庫に入れちゃだめなんですよね。
実は私、間違って入れてしまっていたんです。
金井さん
入れてもだめってことはないんだけど、
チョコレートの固さも変わるし、口溶けが違う。
あと、表面がくもりガラスみたいになっちゃう。
できるだけ常温で、
お部屋に暖房が効いている場合は、
玄関のような涼しい場所に置いてくださいね。
ーー
カットしてからだと、
何日以内に食べたほうが良いんでしょう。
金井さん
カットしたら、その断面はどんどん
変わっていくから、早く食べてほしいです。
あ、それだったらね、冷凍。
ーー
冷凍。
金井さん
一つずつカットしてラップでくるんで
冷凍しておくというのもありだと思う。
ひとり暮らしの人向けに、
小さくカットすると解凍もしやすいし。
ーー
ああ、たしかに。良さそうです。
いろいろ伺えてよかったです。
今日はどうもありがとうございました。
金井さん
じゃあ来年は、ザッハトルテ、
竹内さんも一緒に作らないとね。
ーー
ぜひ!

▲できたばかりのザッハトルテ。 ▲できたばかりのザッハトルテ。

▲お湯であたためたナイフを使うと、スッと切れますよ。 ▲お湯であたためたナイフを使うと、スッと切れますよ。

▲生地はふわふわしっとり。間に挟んだあんずミックスジャムが 
アクセントになって、いくらでも食べられます。 ▲生地はふわふわしっとり。間に挟んだあんずミックスジャムが アクセントになって、いくらでも食べられます。

ということで、みなさま!
今年のザッハトルテ、注文受付は
2023年1月11日(水)午前11時からですよ~。
700個限定ですので、お早めにどうぞ。

(まいどありがとうございます。)

2023-01-10-TUE

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