ひとつの教室に、昆虫博士がいて、
魚釣り名人がいて、
鷹匠までいる高校があるんです。
群馬県立尾瀬高校、
自然環境科3年生のクラスです。
みんながみんな、それぞれに、
好きなことをやっていて、
たがいのことを尊敬している。
偏差値とかとはちがうところで、
じつにのびのびと
才能を発揮している高校生たちに、
あこがれさえ感じました。
大きな自然を前にして、
先生と生徒が一緒に学ぶ関係性に、
あこがれたのかもしれません。
みんなこの3月に卒業、
それぞれの道を歩きだすその前に、
ギリギリ間に合いました。
担当は「ほぼ日」の奥野です。

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第2回 鷹匠の大会3連覇の実力。

──
虫ときて、魚ときて‥‥鷹ですか。
小川
はい。
谷島
おいしいとこ持ってくよなあ(笑)。
──
めずらしさでは、ダントツですね。
鷹って実際に見たことないし‥‥
鷹匠という人にも会ったことないし。
小川
そうですか。
──
すでに「鷹匠」なんですか。
小川
鷹匠です。

──
それは、どうやって‥‥というか、
何をもって‥‥というか。
上手に鷹をあやつれるというのは、
そうなのかもしれないけど、
資格があるわけじゃないですよね。
小川
ないですね、日本には。
アメリカとかにはあるんですけど。
まあ、日本の場合、
いろいろと鷹匠にも流派があって、
師匠に認めてもらえれば、
鷹匠と名乗れるようなことですね。
──
つまり師匠に認めてもらったんだ。
その若さで。
でも、いま高3なわけですけど、
その、なんだ、いつ、修行したの?
小川
中学1年のときに‥‥。
──
中1?
小川
子どものころから、鳥が大好きで、
とくに鷹にあこがれていて、
飼ってみたくて、
自分の師匠がお店をやってたので、
行ってみたんです、中1のとき。
で、鷹を譲ってもらったんですが、
興味あるなら教えるぞって。
──
鷹匠のテクを。
小川
それで、1ヶ月に1回だとか、
夏休みには集中して通ったりして、
鷹をあやつる修行をして‥‥。
──
鷹匠になった。
小川
はい。
──
でも、飼うと言っても‥‥
住んでいたのは、どのへんですか。
小川
群馬県の榛東村というところです。
──
じゃあ、鷹を飼える環境もあった。
小川
はい。
──
練習は‥‥家でやってるんですか。
小川
そうですね。
──
大会に出てるって話も聞きました。
小川
ええ、1年に1回、
全国大会が開催されるんですけど、
中1から中3まで、
その大会で3年連続優勝しました。
──
えっ‥‥!
谷島
カッコいいわー。
廣田
すごいんです、ほんとに。

──
中学生が鷹匠の大会で3連覇。
それって、年齢別とかなんですか。
小川
いや、年齢は関係ないです。
──
それ何が優勝‥‥どうしたら優勝?
小川
人間の障害物競走の鷹バージョン。
一種のタイムトライアルです。
──
つまり、鷹が速く飛んだってこと?
速く飛ばした‥‥というか?
小川
そうっすね、はい。
ただ飼い主も走る必要があるんで。
──
ああ、そうか。
じゃあ、どんなに匠な鷹匠の人も、
走れないと負けちゃうんだ。
小川
はい。
──
鷹って、ごはんは、何を食べるの?
小川
ウズラです。
──
ウズラ‥‥って、タマゴじゃなく、
ボディというか、本体というか。
小川
そっちです。
──
売ってるものですか、それは。
小川
はい、いちどに300羽くらいの
生きたウズラを買ってきて、
絞めて、綺麗に内臓を取り除いて、
冷凍保存してます。
それで、1ヶ月分くらいですけど。
──
それを、自分でやってるんですか。
小川
半日かかるんです、その作業。

廣田
彼の家の冷凍庫を開けると、
たくさんの冷凍のウズラで満杯で、
業者ですかみたいな感じで。
──
高校生の冷蔵庫とは思えないです。
今どきの高校生の冷蔵庫には、
タピオカとか入ってると思うけど。
廣田
休みの日は、腕に鷹を停まらせて、
ポテチ食べながら、
映画とかを観てたりするんですよ。
──
想像を絶する光景だなあ(笑)。
谷島
今、何羽飼ってるんだっけ。
小川
合計、5羽かな。
──
そんないるんだ!
ちなみに、鷹匠って、
今、どういう仕事があるんですか。
小川
ムクドリとかハトとかカラスとか、
糞害をもたらす鳥を、
罠で捕まえたり、
鷹を飛ばして追っ払ったりだとか。
──
へええ。
小川
高校を出たら、半年か1年くらい
師匠のもとで修業させてもらって、
そういう
害鳥排除の仕事とかを覚えようと。
──
じゃあ、ここを卒業したら、
本格的に鷹匠としてはたらくんだ。
小川
そのつもりです。

(つづきます)

2020-03-13-FRI

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