第１回とくに交流はなかった。 | インタビューではなく、おしゃべり。6人めレ・ロマネスク MIYAさん | レ・ロマネスクMIYA

こんにちは、「ほぼ日」の奥野です。
２年ほど前に
『インタビューというより、おしゃべり。』
という本を出しました。
これは、俳優、画家、自転車修理業、友人、
匿名の会社員、詩人、政治学者‥‥と、
出てくる人がまったくバラバラだったため、
タイトルをつけるのがタイヘンで。
唯一、すべての記事に共通していたのが
「インタビューをとったはずなのに、
出来た原稿は、おしゃべりみたいだった」
ので、こうしたのですが。
今度は逆に、積極的に、最初から
「インタビューでなく、おしゃべりしよう」
と思って、６名の方にお声がけしました。
こころみとして、そうとう無目的。
お声がけの基準は
「以前からおつきあいがあるんだけど、
どういう人か、実はよく知らなかった人」。
６人目にご登場いただくのは、
レ・ロマネスクのMIYAさんです。
いまはピンクのバンドでご一緒してますが、
じつは高校時代からの知り合いでした。

＞レ・ロマネスクMIYAさんプロフィール

レ・ロマネスクMIYA（れろまねすくみーや）

フランスで結成されたボーカルユニット「レ・ロマネスク」の丸いほう。世界12カ国50都市以上でライブしたのち、フジロック出演を機に日本に帰国。NHK Eテレ『お伝と伝じろう』に出演し、精力的にアルバム・シングルをリリース。ソロボーカル曲として断捨離をテーマにした『POYの季節』を発表。音楽活動のほかにも、NHK Eテレ『はりきり体育の介』、ベネッセ『こどもチャレンジ』教材のナレーションや、映画『生きちゃった』出演など。

＞書籍『インタビューというより、おしゃべり。』とは

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ほぼ日刊イトイ新聞の編集者である奥野が過去に行ったインタビューのなかの１４篇を、星海社さんが一冊の本にしてくださったもの。ご出演いただいた方々の肩書は、俳優、洞窟探検家、自転車販売・修理業、画家、友人、映画監督、俳優、会社員と主婦、映像作家、詩人・歌手・俳優、俳優・アーティスト、政治学者‥‥と、まさにバラバラ。具体的には柄本明さん、吉田勝次さん、鈴木金太郎さん、山口晃さん、巴山将来さん、原一男監督、山崎努さん、Ｎさん夫妻、佐々木昭一郎監督、ピエール・バルーさん、窪塚洋介さん、坪井善明先生‥‥と、何が何やら。装丁は大好きな大島依提亜さん、装画は大人気の西山寛紀さん、あとがきの部分でわたくしにインタビューしてくださったのは大尊敬する古賀史健さん‥‥と、なんとも幸せ者な一冊です。Amazonでのお求めは、こちらからどうぞ。

──: MIYAさんと地元が同じで、
高校時代からの知り合いなんですけど、
バンドでよく会ういまも、
じつは、あんまり過去を知らなくて。; 今日は、おしゃべりＯＫで？

MIYA: いま聞く？（笑）　大丈夫です。

──: ありがとうございます。; そう言えば、このたび、
われわれの母校どうしが統合したことを
ご存知ですか。

MIYA: 風のうわさには聞いております。

──: ぼくの母校・男子高の桐生高等学校と、
MIYAさんの母校・
桐生女子高等学校がいっしょになって、
共学の桐生高等学校になりました。; こないだ、たまたま母校の前を通ったら、
白い校舎の一部だけが、
なんかオレンジに塗られてたんです。
ああ、新しい高校になったんだな‥‥って。

MIYA: 色で？

──: そこはかとない「いい香り」が、
漂ってくる気が、しないでもなかった。; だってすっごい、ほら、
まあ、なんて言ったらいいんでしょう、
ぼくがいたころは、
男のニオイしかしない学校だったから。

MIYA: そうだよね。

──: 新しい校歌の作詞は谷川俊太郎さんで、
作曲は谷川賢作さんでした。

MIYA: えっ、すごい。

──: こうして以前からの知り合い風ですが、
じつは、高校時代は、
あんまり話したことがなかったんです。

MIYA: うん、でも、知ってた。
だって「鉄男」を見に行っていたので。

──: ああ（笑）。

MIYA: 奥野くん、
ザ・鉄男ってバンドをやってたんです。
わたしの初めてのバンド体験は、鉄男。

──: 塚本晋也監督の
サイバーパンク映画『鉄男』に、
モロに影響を食らった名前のバンドで。; ただ、自分からやってたわけじゃなく、
やらされてた側なんです。

MIYA: いまと同じ（笑）。

──: 本当ですね。その人生です。
打ち上げとかでお会いしていましたか。

MIYA: 上毛かるた大会とかしたよね。

──: ああ‥‥ああ。; あと、MIYAさんのお父さんが、
ぼくの中学校の先生だったんですよね。

MIYA: そうそう。

──: 社会の先生で、テニスの顧問でらして。

MIYA: 奥野くん、テニス部じゃないでしょ。

──: ぼくは野球部の丸刈り少年でしたけど、
テニスコートがとなりで、
なんというか、こう‥‥まぶしくって。
チラチラ見てたんですよ。; 顧問のＭ先生は、
いつも水色のジャージを着ていました。
記憶の中では、
少し厳しめの先生だったという覚えが。

MIYA: そうだったのかなあ。
わたしは父親としてしか知らないので。

──: 大学も同じ学校に進学したんです。

MIYA: そうね。

──: その大学時代も、ほぼ会っていません。

MIYA: 道を歩いているところを目撃はしてた。

──: ははは、そうなんですか。
お腹を空かせた俺がトボトボと（笑）。; MIYAさん、
高校時代は演劇関係だったですよね。

MIYA: その話は嫌。

──: 何度か公演を観に行ったんですよ。; 宇宙の話だったか何だったか、
テレポーテーションとかの物語で。

MIYA: だいたいそんなのばっかりでした。

──: ま、そんなこともあって
なんとなくのご縁を感じていながらも、
ほとんど交流がなかったんです。; それがスッカリいい大人になってから、
バンドでご一緒するなんて。

MIYA: 人生ってね。

──: その間、
ぼくには大した波乱はなかったけれど、
MIYAさんは
パリへ渡ってデビューをされて、
パリでもっとも有名な日本人になった。; ２０１３年に、渋谷パルコで開催した
「はたらきたい展」の会場で、
なぜだか偶然に、再会したんですよね。

MIYA: そうでした。

──: その場で「TOBIさん」という、
タテに細長い人を紹介されたんですよ。

MIYA: あ、そうだっけ。TOBIさんもいた？; でも、それが奥野くんの運の尽きで、
すぐにインタビューさせられ、
すぐに「ひどい目」の連載がはじまり、
やがて
バンドにも引きずり込まれ（笑）。

──: たしか、MIYAさんが
「レ・ロマネスク」という名の何かで
活動していることは、
友人知人の風のうわさで知ってました。; でもそれが、フジロックにも出てきた
ピンクの二人組だということが、
自分のなかで一致してなかったんです。

MIYA: そっか。

──: あの再会から約１０年が経ちましたが、
レ・ロマネスクは
もう、あれよあれよと日本でも有名に。; アルバムを出したり、NHKに出たりね。
MIYAさんには、
音楽的な素養もあったんだなあ‥‥と。

MIYA: 音楽的素養ないですよ。

──: そんなことないでしょ。
聴いていたのは、どういう音楽ですか。

MIYA: 鉄男ですよ。ほぼ。
鉄男がライブハウスデビューですし。

──: 鉄男は、ただのコピーバンドです。

MIYA: 何だっけ、友だちの
彼だか元カレだかが出るというんで、
みんなで観に行ったんです。; そしたら、
ベース担当のアベくんっていう人が、
背中が「Ｙの字」になった
ムラサキ色のタンクトップを着てたの。
それで、
うわ、バンドってこえーなと（笑）。

──: ははは。ご自身の格好は、
いま、このようなご様子ですけど（笑）。

MIYA: そのときのわたしは超びっくらしてて、
バンド超こえーと思っておびえた。; ただの田舎のマジメな生徒だったから。

──: じゃあ、当時は、
とくに音楽好きでというわけではなく。

MIYA: はい。とくに。

──: それが今では、この格好でステージに。
人生、油断も隙もないですね。; ちなみにですけど、
大学のときは、何を学ばれたんですか？
４年間で。

MIYA: 嫌なことばかり聞きますね（笑）。

──: いや、何を勉強されたのかなと思って。

MIYA: 心理学かな。

──: じゃ、心理の専門的な仕事に就こうと。

MIYA: 臨床心理士になろうと思ってたような。

──: ほう。臨床心理士というのは、
どういうことをするお仕事なんですか。

MIYA: カウンセリングとかです。

──: 悩んでいる人の、お話を聞いたりとか。

MIYA: 人の役に立とうと思ってたんだけど、
いつの間にか、道を踏み外しました。

──: いまだって役に立ってると思いますが。

MIYA: そうは思えないですよ。

──: ともあれ、大学はご無事に卒業されて。; 折しもそのころ、相方のTOBIさんは、
就職する会社が
ことごとく倒産していくスパイラルに
見舞われていましたが‥‥。
その点、MIYAさんは、おつとめは？

MIYA: 一回も就職したことない。
本当に嫌なことばっかり聞くわね（笑）。

──: 知らないから知りたいんですよ。

MIYA: できるものならしてみたいわ、就職。

──: あ、そうなんだ。

MIYA: してみたいですよ、就職。
だって、社会人の経験がゼロですし。

──: いや、もう、何て言ったらいいのか、
そこらへんの社会人より
数百倍もの濃い経験をお持ちですよ。; じゃ、卒業したら、パリへ飛んだと。

MIYA: そうですね。

──: それは何、自分を見つけに行く的な。

MIYA: 何だったんでしょうね。

──: 何だったんでしょうね。; 若いころ、
まわりがどんどん就職を決めていく中、
ひとりだけ外国に行くっていうのは。
当時の自分なりに、
切実な思いがあったんでしょうけれど。
だって、まだ２２歳とかでしょ。

MIYA: ねえ。本当に。

──: わたし、
就職なんかしないでパリに行くわ、と。

MIYA: どうかしてた。

（つづきます）

2022-06-20-MON

レ・ロマネスクの真夏の全国ツアー
「とてもいいリサイタル」が、
７月２２日（金）からスタートします！
東京３DAYS（！）を皮切りに、
広島、金沢、那覇を、
この夏いっぱいかけてツアーします。
ゲストがまた豪華で、
東京はキラメキのギターROLLYさんに、
うたのおねえさん・小野あつこさん。
広島は、まさかの和田ラヂヲ先生！
金沢と那覇は、
それぞれジョニー大蔵大臣さん、
アルベルト城間さんとむぎ（猫）さん。
奇才の宝石箱です。すごい。
残席わずかの公演もあるそうです。
みなさん、ぜひぜひ足をお運びください。
わたくし奥野も
「ザ・鉄男」時代からのギターを抱えて
舞台の端に。あと、７月２０日には
キングレコードから、
１５曲入りニューアルバムが出るらしい。
レさん史上初のメジャーレーベル！
そちらもおたのしみに。
ツアーのチケットのことなどはじめ、
くわしくはレさんのホームページで。