こんにちは、ほぼ日の奥野です。
以前、インタビューさせていただいた人で、
その後ぜんぜん会っていない人に、
こんな時期だけど、
むしろZOOM等なら会えると思いました。
そこで「今、考えていること」みたいな
ゆるいテーマをいちおう決めて、
どこへ行ってもいいようなおしゃべりを
毎日、誰かと、しています。
そのうち「はじめまして」の人も
混じってきたらいいなーとも思ってます。
5月いっぱいくらいまで、続けてみますね。

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第24回 せっかく家にいるのなら、「好き」を飾って、心地よく。[窪川勝哉さん(インテリアスタイリスト)]

──
20年はいかないと思いますが、
17年、18年ぶりくらいでしょうか。
窪川
ほんとですね。
いや、ごぶさたしています(笑)。
──
世の中がコロナでこうなってから、
窪川さんが
インスタグラムで発信されている
「#インテリアのチカラ」
という投稿を、
いいなあと思って拝見してました。
窪川
みんなが、これだけ
家にいなきゃいけない状況なので、
インテリアの専門家として、
できることをやろうと思いまして。
──
ええ、ええ。
窪川
でも、そのときに、
ハイ、少しでも「おうち時間」を
充実させましょう、
この素敵なチェアはウン万円です、
みたいなのは、ちがうかなと。
みんなの家にありそうな、
お金のかからないものを利用して、
技術的にも、
リメイクするくらいの気がるさで
できることばかりなんですが。
──
いやあ、着なくなったTシャツを
パネルにするアイディアとか、
簡単そうだし、
自分でもやってみたくなりました。

木枠よりひとまわり大きくカットしたTシャツを、100円ショップでも購入できる「タッカー」で留めたファブリックパネル。 木枠よりひとまわり大きくカットしたTシャツを、100円ショップでも購入できる「タッカー」で留めたファブリックパネル。

窪川
ああ、ぜひぜひ。
──
もともと気に入って買って、
着倒して、襟ぐりが伸びちゃった
Tシャツなわけだから、
部屋の壁に飾れたら、
けっこう、うれしいと思うんです。
窪川
うん、気に入ってたTシャツって、
なかなか捨てれず、
箪笥の奥に眠ってたりしますしね。
──
窪川さんご自身は、
ご自宅にいる時間が長くなって、
どうやって、
気分転換をされてるんですか。
窪川
ぼくはもう、こういう仕事なんで、
ほぼ毎日模様替えしてますが、
ま、そんな人はまれだと思います。
──
たしかに(笑)。
窪川
まあ、知り合いの女の人なんかは、
テレワークでも、
ちょっとでもメイクしたりすると、
テンション変わるねみたいに
言ってますけど、
あるていど、外に出れるくらいの
きちんとした服に着替えることは、
大事だと思います。
──
部屋着だと、
ダラダラしちゃいますもんね‥‥。
窪川
襟付きのシャツを着るくらいでも。
香水の習慣のある人は、
家の中で、つけてもいいですよね。
──
自分たちの暮らす空間を
少しでも居心地よくすることって、
こうなってはじめて、
すごく重要なことなんだなあって、
わかったんです。
まめに掃除をするようになったし。
窪川
あ、そうですか。いいですね(笑)。

お土産品の「木彫りの熊」をピンクにペイント! なんか、一気にアートな雰囲気。 お土産品の「木彫りの熊」をピンクにペイント! なんか、一気にアートな雰囲気。

──
窪川さんはスペシャリストとして、
インテリアの大事さって、
どんなところにあると思いますか。
窪川
日々の生活のベースになる空間が
豊かで整っていることは、
何を着るか、何を食べるかと同様、
すごく重要なことだと思います。
居心地のいい空間で過ごせたら
単純に気持ちいいし、
自宅で仕事をするような場合には、
効率性にも関わってきますから。
──
それは、実感してますね。
窪川
衣食住って言いますけど、
そのなかで、「インテリア」って、
なかなか「偏差値」があがらない。
洋服や食べ物については、
「好み」がハッキリ出てきますし、
スタイリストとか、
食の評論家になれそうなくらい、
詳しい人っていると思うんです。
──
一般の人の中にも。ええ。
窪川
でもその点、住、インテリアって、
洋服が大好きで、
美味しいお店も知っている人でも、
さほど気にしていなかったり。
──
まず、自分の好みがわからないし、
自分でなんとかできる範囲も、
あんまりなさそうって、
思ってしまうのかも知れないです。
自分自身が、そうなんで。
窪川
じつは、そんなことないんですよ。
時間やお金をかけなくても、
居心地のいい空間をつくることは、
できるんです。
──
ええ、そうするためのヒントを、
窪川さんは
SNSで発信してるんですものね。
もし、そのへんのコツがあったら、
おうかがいできますか。
窪川
たとえば、ご自宅の「床」って、
もう「飽和状態」じゃないですか?
──
はい、そのとおりです。
素敵な家具を置く余裕はないです。
窪川
なので、狭いし、これ以上、
何ともしようがないなと思っても、
まわりを見渡してみたら。
──
ええ。
窪川
前後左右に「壁」がありますよね。
で、床よりも面積の広い「壁」が、
スコーンと抜けちゃってるはず。
──
ああ、そうです。
ほとんど、壁にはなにもないかも。
おしゃれそうかな‥‥とか思って、
いつだったか、
気まぐれに買ったポスターとかが、
貼ってあったりするだけで。
窪川
とすれば、
たとえ床がギッシリ飽和状態でも
「壁」で、
インテリアを楽しめばいいんです。
いまは、かんたんに
貼って剥がせるような壁紙なども、
売ってたりしますし。
──
ああ、なるほど。
柄とか色を変えちゃうのもアリか。
窪川
石膏ボード用のピンなどを使えば、
それなりの重さがあるものでも、
掛けられますし、
収納をプラスすることもできます。
──
ええ、ええ。
窪川
そもそもの話、日本の住宅って
「障子」と「襖」で、
部屋を仕切ってきたんですよね。
そのせいで「床の間」以外には、
壁を装飾する文化が、
あんまりなかったと思うんです。
──
そうだ、実家のようすを思えば。
壁はスッカラカンかもしれない。
カレンダーくらいで。
窪川
だから、ポストカードでも、
雑誌の切り抜きでもいいんです。
ちょっとしたものでも、
けっこう気分は、変わりますよ。
大切なのは、
気に入っているものを飾ること。

よく見る金色の画鋲に、海外旅行であまったコインを強力両面テープで。 よく見る金色の画鋲に、海外旅行であまったコインを強力両面テープで。

──
なるほどー。
窪川
とにかく、部屋の「重心」が
床から1メートルくらいのところに
集中していることが多いです。
で、そこから上には、何にもない。
──
ああ、大人の目線の高さに、
目に入ってくるものがないんですね。
窪川
だから、すこし「高さ」を意識して、
スタンドライトとか、
背の高い観葉植物を置いてみたり、
1メートル20センチで
終わってしまいがちな空間に、
なんらかのアクセントを足してみる。
──
目線から上あたりを意識して。
窪川
もちろんアートでもいいけど、
そうじゃなくても、ぜんぜん大丈夫。
絵や写真や家具やインテリア雑貨を
わざわざ買わなくたって、
自分が好きで持っているアイテムを、
飾ってあげればいいと思います。
──
たとえば‥‥。
窪川
最近は、あんまりいないんですけど、
昔、奥野さんと一緒に
ファッション誌のインテリア特集を
つくっていたときとか、
壁一面スニーカーを飾ってた子とか、
いたじゃないですか。
──
いました。いましたねえ。
自分の「好き!」が爆発してる部屋。
窪川
たとえば、ああいうことですよね。
おもちゃでも、服でも、帽子でも、
フィギュアでも、
好きだと思う何かを飾ってあげる。
──
ええ、ええ。
窪川
もしも、それらが
これまで、床を占領していたのなら、
壁の棚に並べてやるだけで、
飽和状態の床をサッパリさせつつ、
スッカラカンだった壁は、
自分の好きなもので一杯になります。

穿かなくなったデニムのポケットを切り取って、刺繍枠にはめただけのウォールポケット。 穿かなくなったデニムのポケットを切り取って、刺繍枠にはめただけのウォールポケット。

──
絵だとか写真だとか、
無理して「背伸び」しなくっても、
自分の好きなものなら、
無理なく飾ることができますよね。
窪川
そう、好きかどうかもわからない
ポスターを貼るくらいなら、
自分の好きなものを、
思いっきり並べちゃうほうがいい。
そのほうが、ぜったい、
その人らしい空間になりますから。
──
その人らしい‥‥っていうことが、
きっと重要なんでしょうね。
窪川
そうだと思います。
本好きの人の図書館みたいな部屋、
みたいなほうが、
借りものふうのオシャレ部屋より、
よっぽど魅力的ですよ。
──
ああ、なるほど。
窪川
好きなものに囲まれた部屋のほうが、
だんぜん居心地いいですしね。
──
いまのステイホームの時間のなかで、
趣味で集めているものを、
インテリアとして見直してみるのも、
いいかもしれませんね。
ついでに部屋もスッキリしそうだし。
窪川
はい。なにより楽しいと思いますよ。

2020年5月15日 東京都世田谷区←ZOOM→東京都のどこか 2020年5月15日 東京都世田谷区←ZOOM→東京都のどこか

(つづきます)

2020-05-27-WED

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