
前回の『生活のたのしみ展』で
「全国ミュージアムショップ大集合!のお店」
をやったら大賑わいだったんですが、
その店に、ミュージアムグッズ愛好家の女性が、
遊びに来てくれたんです。
彼女の名は、大澤夏美さん。
ミュージアムグッズが大好きなだけでなく、
ミュージアムグッズの観点から
「博物館学」の研究もされている、とのこと。
おもしろそうなにおいがする‥‥。
というわけで、北海道のご自宅にお邪魔して、
全国から集めたミュージアムグッズを
「大じまん」していただきました。
「こんなグッズが売ってるなら行きたい!」
と、グッズきっかけで
ミュージアムに行きたくなることもあるんだ。
担当は、ほぼ日の奥野です。
全12回のロング連載、お楽しみください。
大澤夏美(おおさわなつみ)
ミュージアムグッズ愛好家。
- 大澤
- これ、大好きなんです。
長谷川町子記念館で売ってる紙ナプキン。
- ──
- わ、いいですね。世田谷の桜新町にある
長谷川町子美術館とは別にできた、
長谷川町子記念館のほうのグッズですか。 - えっ、1パック412円。お手ごろだ。
あー、これはいくつも買っちゃいそう。
- 大澤
- もともと、長谷川毬子さん、
町子さん姉妹の所蔵の美術品を展示する
長谷川町子美術館があり、
2020年に
長谷川町子さんの作品を中心に展示する
長谷川町子記念館ができたんですが、
そこで売ってるんです。 - 新聞連載された「サザエさん」の中から
昭和の道具をイラストを集めていたり。
- ──
- いいですね。いや、本当にいいなあ。
- 大澤
- 昭和20年代から連載していたので、
昭和の生活史が一望できるような感じで、
眺めていると、おもしろいんです。
- ──
- 何の道具なのか、
よくわからないものもありますね。
- 大澤
- そうそう。いまとなってはね。
- ──
- これはアイロンでしょ‥‥
この、洗濯機らしきものについている
取っ手は何なんだろう。
- 大澤
- 脱水機じゃないですか。
- ──
- ああ、なるほど!
ローラーをぐるぐる回して、水を絞る! - 食パンがポンッと飛び出るトースター、
ありましたよね。。
ここまでは飛ばないと思うけど(笑)。
- 大澤
- でも、パンが飛び出た瞬間の驚きって、
カツオの気持ちの中では、
これくらいは飛んでますよね(笑)。
- ──
- わはは、たしかに。
- いまほしいくらいですよ、こういうタイプ。
昭和の道具、素敵です。
- 大澤
- 長谷川町子って結局どういう人なんだ、
何を描いてきたんだろうって
考えたときに、
やっぱり
昭和の生活史をマンガに残してきた人、
なんじゃないかなと。 - 現代の目から見たら
昭和レトロとかノスタルジーなんだけど、
「サザエさん」の中に登場するのは、
当時の「最先端」なんですよね。
- ──
- ああ、たしかに。
- この紙ナプキンを見たらわかりますね。
高度成長していた時代の最先端ばかり。
- 大澤
- 長谷川町子さんもおしゃれだったし、
昭和の「サザエさん」ファッションだけ、
集めたノートとかあるんです。
- ──
- こういう水着も、
きっと当時の最先端だったんでしょうね。
- 大澤
- 昭和30年代の女性を
こういうファッションで描いてるわけで、
超最先端ですよ。 - だって、終戦から5年ちょっとで、
こんな格好してる人がどれくらいいたか。
- ──
- そういう意味では、この紙ナプキンも、
当時の時代を知るのに、
とっても便利で重要なものなのかも。
- 大澤
- 歴史博物館や科学館の展示や
グッズ開発の場面でも、
参考になりそうですよね。 - そうやってミュージアムグッズを通じて、
いろんなジャンル、いろんな地域の
ミュージアムをつなぐことも、
わたしのやりたい仕事だと思っています。
- ──
- そして、これは「傘」ですね。
- 大澤
- はい。長野の小布施のほうにある北斎館。
- あのあたりで
北斎は晩年を過ごしているんです。
- ──
- 開いてみていいですか。
- 大澤
- どうぞどうぞ。
- ──
- おおー、カッコいい。
- そして、そうか。
絵を間近でまじまじと見れて、楽しい!
- 大澤
- そうなんですよ。
- もともとは
小布施のお祭の山車の天井画だそうです。
だから、傘の内側にプリントして
こうやって見る絵なんです。
外側の布がちょっと薄墨のような感じで、
傘そのものとしてもすてきです。
- ──
- そして、これは‥‥ヘアゴム?
- 大澤
- そうです。発売されたときは、
SNSなどで、めちゃめちゃ人気でした。
- ──
- この目‥‥遮光器‥‥。
- 大澤
- そう、遮光器土偶の生首ヘアゴムです。
- ──
- 生首(笑)。
- 大澤
- 推し活のアイテムで、
キャラクターとか
アイドルさんの顔の部分だけ切り取って
ヘアゴムにしたり、ピンにしたり‥‥
というのが流行ってるんです。
つまり、それの遮光器土偶バージョン。 - 学芸員の資格を取るための授業が
明治大学にあるんですが、
その一環で学生さんが考えたそうです。
- ──
- このグミは‥‥。
- 大澤
- アイヌの木彫りの作家さんのクマを
3Dスキャンして、グミにしたもの。 - 作家さんが、
だんだん高齢になってきて、
大きいものがつくれなくなってきて、
しかも、木彫りのクマって高いんで、
せっかく若い子たちが来ても
お土産で買うもんがない、
ということで、
企業とコラボレーションして
グミやアクセサリーをつくったんです。
- ──
- 山田祐治さんという方ですか。
- 大澤
- はい。
オーナメントやピアスもあるんです。
最新の技術から刺激を受けることも
あるらしく、
3Dデータをとったときも、
もっとかわいくなるように、
もう少し
鼻を大きくしようかなあとか言って、
考え方が柔軟でおもしろいんですよ。
(つづきます)
2025-08-03-SUN
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取材では、時間の許すかぎり、大澤夏美さんの
お気に入りのグッズを見せていただいたのですが、
それでも、まだまだほんの一部。
保管庫には、丁寧に梱包され仕分けされたお宝が、
ぎっしり詰まっていました。
大澤さんの2冊のご著書には、他にもたくさんの
魅力的なグッズが、制作にいたる物語とともに
紹介されています。
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