テレビ最盛期といわれた時代、
とんねるずは画面の中で
驚くようなことを次々と突破していきました。
いまYouTubeにも活躍の場所をひろげる
石橋貴明さんが、誰も越えられないような
人気の塔を築いた理由はなんなのでしょう？
渋谷PARCO「ほぼ日曜日」で開催する
「わたしの、中の人。」対談シリーズです。
写真 小川拓洋
石橋貴明（いしばし たかあき）
1961年生まれ。
1984年、高校の同級生だった木梨憲武と
お笑いコンビ「とんねるず」を結成。
テレビ番組では
『とんねるずのみなさんのおかげです』
『ねるとん紅鯨団』『うたばん』
『とんねるずのスポーツ王は俺だ！』、
映画では『メジャーリーグII・III』に
謎の日本人選手「タカ・タナカ」役で出演。
2020年、YouTubeチャンネル
「貴ちゃんねるず」を開設。チャンネル登録者数130万人を突破する。
→石橋貴明さんのTwitter
- 石橋
- ウケちゃったときの気持ちよさって、
いちど感じてしまうと
逃れられないものなんです。
ぼくは高校３年生のとき、
「ほんとうに自分がおもしろいのかどうか」を
ちょっと確かめたい、と思いました。
- 糸井
- 「ウケる」ことの正体がわからないんですから、
確かめたくなりますよね。
- 石橋
- 真剣に確かめたくて、テレビ番組に出ました。
３週連続で勝ち抜いて、
池袋の駅を歩いていたら、女子高生に囲まれました。
- 糸井
- おぉお。高校３年生で。
- 石橋
- ブワッて囲まれた。
ぼくが出てたのは『TVジョッキー』という
番組だったんですけど、
「『TVジョッキー』に出てる人だ！」つって
寄ってきた。
制服着てたから「え？ 帝京なんだ」って、
みるみるうちに20人ぐらいの女子高生が集まって、
「あ‥‥、芸能人ってこういうことなんだな」と。
- 糸井
- いきなりすごい体験を（笑）。
- 石橋
- それまで野球しかやってこなかったんで、
気分がフワッとしました。
彼女もいないし、
女の子としゃべったこと、なかったですからね。
- 糸井
- だって３年間、グローブ持ってたわけでしょ？
急に「君たち、どこの学校？」とか
言えないですよね。
- 石橋
- 野球部は朝は早く夜も遅いんで、
行き帰りの電車に
女子高生なんか乗ってないんです。
帰りは酔っ払いのおじさんしかいない。
- 糸井
- 女子高生が世の中にいるのを知らなくて。
- 石橋
- ええ、突然ですよ。
「えー？ 俺みたいなのを、こんなにたくさん、
女の子が取り囲むんだー？」
- 糸井
- 大変なことだよね。
- 石橋
- すごいことでした。
当時、テレビに出るって、
すごいことだったんですよ。
- 糸井
- その高３のテレビ出演のときは、
野球部の練習はつづけてたんですか？
- 石橋
- 野球、引退してからです。
３年の夏の大会で終わりますから。
- 糸井
- ああ、そこから、高３の
秋と冬があるわけだ。
- 石橋
- はい。そこまではほんとうに
朝早くと夜遅くに
校門をくぐる生活でしたから、
夕方３時半に学校を出るのが
こんなにたのしいことなんだ、と
はじめて気づきました。
- 糸井
- その前までが、収容所にいるようなもんだから（笑）。
- 石橋
- ほんとに電車ん中に女の子が乗ってんですよ。
- 糸井
- 乗ってるでしょうね。
- 石橋
- 帝京は十条だったんで、
いったん赤羽線で池袋に出て、
池袋からそれぞれの線に分かれていきます。
だから当然のようにいつもみんなで
池袋の喫茶店に行きました。
「高校生、こんなたのしい世界があるんだ！」
- 糸井
- ははははは。
- 石橋
- そんときはじめてピザトーストと
アイスココアを食べて飲んで、
「ああ、こんなうまいものが世の中にあるんだ」
と思ったことをすごく憶えています。
高校生って、こういうものを食べてたんだ！ と。
- 糸井
- 急に桃源郷に入ったみたいなものですよね。
桃源郷にいたのに、知らなかった。
- 石橋
- はい。
- 糸井
- 浮かれますよね。
- 石橋
- 浮かれます。
- 糸井
- 不良化しようが勉強しようが自由でしたが、
石橋君はどこにいくんでしょうか？
お笑いだったわけですか？
- 石橋
- いえ、ちゃんと就職したんです。
- 糸井
- あ、なるほど。
そこは有名ですね、
ホテルマンになったんですよね。
- 石橋
- はい。ホテルに就職しました。
就職が決まって、
学生の最後の思い出として、
テレビに出たんです。
- 糸井
- 就職も決まったし、
じゃあもう『TVジョッキー』だと。
- 石橋
- 『TVジョッキー』だと。
- 糸井
- だけど、いくらおもしろいといっても、
高校生でしょう。
ほんとうに「出演」となったときには、
きっと緊張もありましたよね。
- 石橋
- いやいや、もうターゲットがいたんで。
- 糸井
- ぶっふふふふ。
ターゲット？
- 石橋
- 『TVジョッキー』に
竹中直人さんが出てたんですよ。
- 糸井
- はぁぁぁぁ、竹中さん！
- 石橋
- 竹中直人さんが、当時はもう、
「素人じゃ最強」
という人だったんです。
- 糸井
- はい、はい、
多摩美に行ってる、竹中くん。
おもしろかったな、ありゃあ、おもしろかった。
- 石橋
- ブルースリーとか。
- 糸井
- 松田優作とか。
- 石橋
- ぼくはその竹中さんを
ターゲットとして考えていました。
「竹中さんを倒さなければ、
真のアマチュアナンバーワンになれない！」
それで、そう、そうだ、そうだよ、
いま思い出しました。
- 糸井
- いま！
- 石橋
- テレビに出ようと思って、日テレに直接電話して、
「竹中直人さんと勝負させてください」
っつったんですよ。
- 糸井
- ああ、いいなぁ、たまらない（笑）。
- 石橋
- ほいで、その番組は
３週勝ち抜くとチャンピオンという設定でした。
ぼくが日テレに電話して、
オーディションを受けているあいだに、
竹中さんは３週抜いちゃったんです。
- 糸井
- おおー！
先にチャンピオンになっちゃったんだ。
- 石橋
- そのあともう１人、３週抜いた人がいた。
だから３代目あたりで、
ぼくが３週抜いてチャンピオンになりました。
そしたら今度はチャンピオン大会をやる、
っつーじゃないですか。
- 糸井
- いやぁ。来たね。
- 石橋
- ついに来たぞ、このときが、と。
- 糸井
- 巌流島だよ（笑）。
- 石橋
- ついに竹中さんと戦える。
それはお正月でした。
お正月の第１回の放送で。
そのときあれですよ、沢田研二さん、ゲストで。
- 糸井
- ん？
- 石橋
- 『TOKIO』歌っていましたよ。
- 糸井
- わははは、ぼくがすでに大人だったっていうことが、
明らかになりましたね。
（※『TOKIO』の作詞は糸井重里）
- 石橋
- ええ。
- 糸井
- 1980年ですね、つまり。
- 石橋
- 1980年です。
- 糸井
- そんときにとんねるずが竹中君と巌流島をやるわけだ。
- 石橋
- はい。
- 糸井
- ものすごくいいシーンですね（笑）。
- 石橋
- ええ。
決勝で「２対１」の投票の勝利で
ぼくがチャンピオンになりました。
「やったー！ これで俺はナンバーワンだ！」
自分だけですが、思いました。
「これで、思い残すことなく、ホテルマンになれる！」
- 糸井
- あ、そこで辞めるんだ？！
（明日につづきます！）
2021-01-03-SUN
