中村なづきさんがつくる
アクセサリーやオブジェは、
野の草花や鉱物の結晶、
雨や風などの気象現象などの
自然がモチーフです。
野に咲く花や、霧雨のように、
ささやかでありながら、
丹精な美しさが際立った独特の存在感で、
ラフな服装のときも
ひとつのアクセサリーで、
ぐっとエレガントな印象に変える力があります。

作家活動15年目を迎える
中村なづきさんの個展を
TOBICHI東京とTOBICHI京都で
開催することになりました。
「Nakamura Nazuki アクセサリー展」を前に、
中村なづきさんに
作品や制作活動についてお話をおうかがいしました。

*関連コンテンツもご一読ください。

中村なづきさんのものづくりと、
Caccoのアクセサリー『想花』ができるまで。

>中村なづき

中村なづき(なかむら・なづき)

2009年より制作活動を開始。
自身のブランド「Nakamura Nazuki」を立ち上げる。
植物、結晶、気候など、
自然が作り出したものに魅力を感じ、
それらをモチーフとした作品を金属や鉱物を用いて表現。
「spiral market」「森岡書店」などで
個展を定期開催。その他全国で展示会を行う。
「ASEEDONCLOUD」の小物制作(2011年A/W〜)など、
ブランドやショップのオリジナルアクセサリーを担当。

HP:https://www.nakamuranazuki.com/
Instagram:nakamuranazuki

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植物、鉱物、気象現象。  15年の軌跡が一望できるTOBICHI展。

中村
一番最初に作ったのは、
「hasunomi(蓮の実)」。
「Plants(植物)」シリーズです。
「shirotsumekusa(シロツメクサ)」と
「kasumisou(カスミソウ)」は
2009年に作っていて‥‥。
――
そのまま人気の定番に。

△シロツメクサ △シロツメクサ

中村
そうですね。
――
こちらが「shirotsumekusa」の原型。

中村
はい。ワックス原型。
まずシートワックスで、
花びら1個1個作って、
棒状のラインワックスに
1個1個ワックスペンというので、
花びらを留めて‥‥。
――
1個1個留めるというのが、大変ですねえ。
中村
そう。
心が折れそうにはなるんですけど‥‥。
――
やっぱり。
中村
もう。ほんとうに。
ちょっと熱がいきすぎて
折れちゃったりすると、
ぜんぶやり直しになったり、
すでにつけ終わっていた花びらが
作業中に折れたり、溶けちゃったりすると、
折れた花のところまで
戻ってやらないといけなくて。
間を1個だけ抜いて、
そこだけワックスペンで
留めるってできないんです。
――
できないんですね。つらい。
中村
だから、けっこう集中、集中というか、
神経を使ってるんですけど、
たぶんそういう作業が一番好きなんですよね。
なんか自分との闘いみたいな。
繊細になれば繊細になるほど、熱量が。
――
熱量が。
中村
はい。熱量が上がって。
ほんとに息を止めてやってるような感じがします。
――
イヤリングとかピアスのように
対になっている場合は、
右と左でかたちが違うんですか。
中村
同じものと違うものとあって、
「sirotsumekusa」とかは、
左右がないので同じなんですけど、
例えば植物シリーズの「mimoza」だったら、
右・左があるので、左右対称に作ってます。

△mimoza △mimoza

――
違うんですね。はー。
中村
左右を変えるとき、
片方は割と勢いで作れるんですけど、
もう片方を作ろうとなったときが
一番神経を使います。
左右対称に作ろうと思うと、
先にできあがっているほうを
鏡のように見ながら作るので、
考えながら作るというのが、私、すごく苦手で、
「nagaame(長雨)」は、特に大変でした。
0.6から1.2ミリまでの角線を、
これはワックスでじゃなくて、
金属の角線を全部ランダムにロウ付けして。
‥‥ロウ付けは金属と金属を
溶かした銀でつないで、
火で留めていくんですけど。
片方のかたちを作るときは、ほんと勢いで、
ここを短くして、ここを太くしてって
一気につくっていくんですけど、
片方を左右対称にしようとなったときに、
もう本当にこれ、何個も作り直しました。

△nagaame △nagaame

――
「nagaame」は角線の太さも違うんですか。
中村
違うんです。
0.6、0.8、1.0、1.2の角線をバラバラに。
長さも全部、違います。
ロウ付けの銀ロウは融点によって
5種類ぐらいあるんですけど、
それを使い分けてます。
最初にくっつけたものに
もう1回火をあてると取れちゃうから、
一番、融点が高いものから順に作って。
――
こんなにちいさくて細い上に
ロウ付けする順番も考えなきゃいけない。
聞いただけで、気が遠くなりそう。
えっと、「Plants」シリーズの次は
ナズナやオオバコをモチーフに
10金でつくった「Weeds(雑草)」シリーズ。

△susuki △susuki

――
その後が「Minerals(鉱物)」シリーズ?
中村
はい。
植物じゃないものを作りたいと思ったときに、
石を使いたいなと思ったんですけど、
アクセサリー用の材料になる石って
きれいにカットされてるものがほとんどで、
そこには魅力を感じなくて。
ゴツゴツした割れた状態の石とか、
落ちてる状態の石みたいなのがいいなと思ってたら、
たまたま入った石屋さんにいっぱいあったんです。
石留めは金属が強調しない感じにしたくて、
お世話になっていた鋳造屋さんに相談したら、
こういう石留めしたらいいんじゃない? と
アドバイスをもらって、
2012年にトパーズ(当時)という水晶を使った
「koori(氷)」を発表したら、
これが反応が良くて、
自分も気に入ってつけていましたし、
楽しくなって、
ちょっとずつ石の種類を増やしていきました。

△koori △koori

中村
今は「koori」「mizu(水)」「koke(苔)」
「sumi(炭)」「tsuchi(土)」の
5種類があります。
――
この少し黒い石は?
中村
これは「sumi」です。
2021年に出した一番新しいもので、
すごく気に入ってるから、
これと「koori」をTOBICHIに出そうかな。
一番古いのと一番新しいのですね。

△sumi △sumi

――
そして最新のシリーズは「Climate(気象現象)」。
いままでとは、がらっと雰囲気が違いますね。
中村
自分が40代になって、
年齢だけじゃないと思うんですけど、
着たい服や身に着けたいものが変わってきて。
30代のときは、ちょっと華奢な、
それこそ10金素材の毎日着けられる
華奢なアクセサリーが好きだったんですけど、
基本的に私、洋服がシンプルなものが多いから、
アクセサリーは大きいものを
つけたいなっていう気持ちになってきて、
もう自分がつけたいがために作った
という感じなんですけど、
それが「気象現象」というテーマに
はまったという感じでした。

△kirisame △kirisame

――
中村さんがつくるアクセサリーは、
アート作品というよりも、
自分が身に着けたときのコーディネートに
合うか合わないかを
まず、考えてらっしゃる?
中村
それが大きいかもしれないです。
洋服が好きだから。
で、ほんとに昔から、
シンプルな洋服を着て、
大きなアクセサリーをつけるスタイルが好きで。
デザインを考えるときに、
あ、自分だったら、
こういうのをつけたいみたいな
と考えることが多いです。
この「mizutamari(水たまり)」の
ネックレスもそうですね。
ちょっと大きな垂れるネックレスが
つけたいなと思って、デザインしました。
ちょっと重みがあるのと、
ピタッと胸についていても動くと揺れるから、
それがいいなと思って。
リングも毎日つけてます。

△mizutamari △mizutamari

――
すごい存在感ですね。
中村
そうなんですよね。
こういうボリュームのあるリングとかって、
だいたい裏側を
くり抜いてるものが多いんですよね。
――
あー、くり抜いてある指輪って
つけていると擦れて痛いですよね。
中村
くり抜くのって、軽くするのと、
あと値段をやっぱり抑えるっていう理由で。
でも、そうしたくないなと思って、
重量があって思いきりぽてっとしたものを
作りたいなと思って、作りました。
バングルもそうです。
――
確かに大ぶりのシルバーのアクセサリーは
シンプルな服にすごく映えて、
しかもどんな色の服にも合うのがいいですね。
中村
シルバーってやっぱりね。
ゴールドってちょっと
服の色を選んじゃうところが
あるような気がするから。
このバングル、
男性がよく試着してくれるんですけど、
男性がつけてもハマるんです。
――
すごく繊細な植物シリーズから、
たくましささえ感じる
気象現象シリーズに行くとは、
おもしろいですね。
中村
自分でもびっくりしました。
あ、こっちに行くんだ、自分、って思いました。
つけたかったんだな、こういうのって気づけたし、
あ、こういうのが好きだった。
そうだった、そうだったっていう感じで。

(つづきます)

2024-04-25-THU

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  • TOBICHI 東京
    4月26日(金)~5月6日(月) 11:00〜19:00

    TOBICHI 京都
    5月10日(金)~5月22日(水) 11:00〜18:00
    ※16日は定休日

    シルバーや10K素材、
    鉱物の定番アイテムのほか、
    Caccoと共同制作した「想花(そうか)」を
    展開いたします。

    また、Caccoの3rdコレクションの
    サンプル展示と一部販売を行う予定です。
    ※数に限りがございます。