こんにちは、ほぼ日のたまきです。
あれは緊急事態宣言が出ていたころ、
突然「世界史を学び直そう！」と
思い立ち、YouTubeで出会った先生がいます。
当時は公立高校で教鞭をとられていた
ムンディ先生こと、山﨑圭一さん。
著書の『一度読んだら絶対に忘れない
世界史の教科書』シリーズも人気の先生です。
世界史を知れば、映画もたのしめるし、
旅行もおもしろがれる。
だけど「勉強」だと思うとなかなか手が出ない。
そんなわたしの背中をポンッと
押してくださった山﨑圭一先生。
板書でのストーリーを重視した教え方は
「実はこうなってたのか」が
手に取るようにわかっておもしろい。
テスト対策とはまた違う
歴史の学び方について聞きました。
山﨑圭一（やまさき・けいいち）
1975年、福岡県太宰府市生まれ。
元・公立高校教師、
教育系YouTuber、作家。
早稲田大学教育学部卒業後、
埼玉県立高校教諭、福岡県立高校教諭を経て現職。
昔の教え子から
「もう一度、先生の世界史の授業を受けたい！」
という要望を受け、
YouTubeで授業の動画配信を決意。
2016年から、200回にわたる
「世界史20話プロジェクト」の配信を開始。
現在では、世界史だけでなく、
日本史や地理の授業動画も公開しており、
配信動画は600本以上。
授業動画の配信を始めると、
全国の受験生や教育関係者、
社会科目の学び直しをしている社会人の間で
「わかりやすくて面白い!」と評判になり、
瞬く間に累計再生回数が2000万回を突破。
著書も多く、なかでも
『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』
『一度読んだら絶対に忘れない日本史の教科書』は
ベストセラーに。
最新刊は『世界史と日本史は同時に学べ』
（すべてSBクリエイティブ）。
趣味は楽器演奏（チューバ）。
ムンディ先生のホームルーム
https://mundisensei.com/
- ──
- 今日は世界史の先生‥‥といっても世界史にとどまらず、
日本史や地理も教えていらっしゃいますが、
教育系YouTuberで作家の「ムンディ先生」こと、
山﨑圭一さんにお越しいただきました。
- 山﨑
- よろしくお願いします。
もともと福岡県の高校の教諭をしていたのですが、
いまは教職を辞めて、その立場で配信をしたり
本を書いたりしながら過ごしています。
- ──
- 先生の本の
『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』
というシリーズも、非常に人気ですよね。
本屋さんでもよく見かけます。
- 山﨑
- ありがとうございます。
- ──
- また、世界史のすべての授業を
YouTube上に残されてて、それが200本。
- 山﨑
- そうですね。いま世界史が200本、
日本史も200本、地理も200本。
合計600本の歴史・地理というコンテンツでやっています。
- ──
- たぶんYouTubeで出てきた授業動画のなかでも、
特に早い段階でしたよね？ さきがけというか。
- 山﨑
- そうですね。
いちばん早いぐらいのタイミングだったと思います。
- ──
- だから先生の動画を中田敦彦さんが紹介されていたり、
いろんな教育系YouTuberの方が
参考にされたりしていたような方ですけれども。
- 山﨑
- 私自身はもともとYouTuberになろうとかではなく、
あくまで公立高校で働く一教員だったんです。 - けれどもあるとき、高校２年生に１年間かけて
世界史の前半を教えたあと、
「後半もっとおもしろいから来年も頑張ろうぜ！」
と言ってたのに、
翌年自分が別の学校に異動になってしまって。 - 生徒たちから
「続きを聞きたいから教えに来てください」
って言われたんですけども、それもむずかしくて。 - そこで生徒から「せめてYouTubeで」と言われて、
「おー、その手があるか」という感じで
撮りはじめたのがはじまりなんです。
- ──
- まずは生徒さんたちからの要望があって。
- 山﨑
- はい。最初はその生徒たちに向けた
ビデオレターみたいな感じだったんです。 - だけど公開していたら、見てくれる方が増えて、
いつのまにかこうなっちゃった感じですね（笑）。
こんなことになるとは自分でも本当に思ってなくて。
- ──
- だけど各200本って、けっこうすごい数ですよね。
- 山﨑
- そこはもう最初から
「200本にしよう！」と決めてはじめたんです。 - 高校の世界史って２年かけて教えるんですけど、
最後の１回でポンと「お、きちんと終われた！」
みたいな年があったんです。
そのとき授業の数をカウントしたら、約200回。
そこから「世界史は200分割できるのでは」と思ったんです。 - 教科書の項目を200枚のふせんに書いてみて、
床にバーッと並べて。
どの順番で教えると、年代を使わなくても
頭に入りやすくなるかを決めてから、
動画を撮りはじめたんです。
- ──
- だけどそれってゼロから新しく教科書を
作り直す感じじゃないですか。
どうしてそんな面倒なことを‥‥というか（笑）。
- 山﨑
- そうですね（笑）。
まあ、高校でのリアルな授業の場合は、
教科書があってテストがあるので、
そのとおりにはいくんですけれども。 - ただ、日頃から教えながら
「もっと頭に入りやすい順番があるんじゃないか？」
とは感じていたんですよね。
もしそういうことができるなら、やったほうがいいですから、
YouTubeをきっかけにやってみた感じでしたね。
- ──
- 私自身、社会に出てから世界史を学びたくなって、
いろんな動画を見てみたんですけど、
ムンディ先生の動画を見はじめたとき、
そのわかりやすさにびっくりしたんです。 - 一筆書きで、もう数珠つなぎに古代から現代まで
つなげるようなストーリーになってるから、忘れにくくて。
- 山﨑
- ああ、よかったです。ありがとうございます。
- 世界史全体としては、まず歴史を
「縦」のストーリーで一直線にとらえるのが、
いちばん頭に入りやすいかなと思っていますね。
- ──
- ムンディ先生は、すごくストーリーを重視された
教え方をされてますよね。
- 山﨑
- そうですね。私の授業動画はいわゆる
「18〇〇年」みたいな年代をほとんど使わないんです。 - 受験では年代って必要ですけど、
ストーリーのほうがずっと大事だと思ってて。
その話題ごとに
「誰が、どうして、どうなった」を、
楽しみながら知ってもらうのが先かなと。 - ストーリーがわかった上で
「ここが18〇〇年だよ」って言い方をすると、
頭への入りやすさが違って、丸暗記でなく
歴史を学習できるんじゃないかと思っているんです。
- ──
- だけど年代を頼らずにやるって、
けっこう冒険的じゃないですか？
- 山﨑
- これはもう私が学んだ高校の先生の影響ですね。
その先生もほとんど年代を使わずに
ストーリーで話してくださる方で、
それがおもしろかったから、という感じなんですけど。
- ──
- あと、先生の動画って、いろんな動画のなかで
いちばん「続けられそう」と思えたんです。 - なんでかな？と思ったんですけど、
毎回きちっと黒板に板書されるじゃないですか。
最近の授業動画の流行りのような、
ぜんぶ先にホワイトボードに内容が書いてあって
解説していく方法じゃなくて。 - その、ほとんど何もない状態から板書されていくところまで
動画に入っているのが、懐かしいし、どこかおもしろくて、
意外に続くきっかけになった気がするんです。
- 山﨑
- それも「ストーリーを伝えたいから」がありますよね。
全部の内容が最初から書かれてると、
やっぱりネタバレになっちゃうんですよ。 - 「何々戦争が起きた」というとき、
まだ勉強してない人にとっては、
どちらが勝つか負けるかわからないじゃないですか。
そこでの「勝った？ 負けた？ どうなった？」に
ストーリーのおもしろさがあるから、
最初にわからないほうが集中度が高まるというか。 - そこのおもしろさを活かせるのは、
板書の利点だと思いますね。
- ──
- ストーリーのおもしろさを伝えていくにあたって、
ほかにも具体的に注意されているところってありますか？
- 山﨑
- 出来事と出来事のつながりが
ちゃんとわかるように、というのは意識してますね。 - だから伝えるにあたって
「できるだけ主語を変えない」とか。
- ──
- 主語を変えない。
- 山﨑
- たとえばその話題で主役となるような国があるのなら、
常にその国の立場から話をする。
ギリシャが中心の話のときは、常にギリシャ目線で話をする。
中東をやってるときは、中東の目線から見るとか。
「攻め込んだ」とか「攻められた」とかも
きっちり使い分けて、目線がぶれないようにする。 - 世界史って往々にして、話のなかで
そこの目線がぶれてしまうことが多くて
聞くほうもどんどん混乱してくるんです。
逆にそこさえ外さなければ、一気にわかりやすくなるんですよね。
- ──
- そういった工夫はやっぱり、
実際に学校で教えられていた経験あってこそというか。
- 山﨑
- そうですね。
やっぱり全部生徒が教えてくれたことです。 - 授業で使う資料なども、
いつも生徒の反応や顔色を見ながら
「あ、こっちを先に説明した方がわかりいいだろうな」
みたいに、ちょっとずつ直してたんです。
その結果がYouTubeであり、本にもなってるというか。 - そしてYouTubeにしても、
やるときには実際の授業での生徒の反応を思い出しながら、
架空の生徒に話してるような感じで撮るので、
もうリアル授業の感じそのまんまというか。 - だから自分ではそんなにわからないんですけど、
どうも自分のしゃべりとか間とかって、
すごい独特らしくて（笑）。
「なんかわかんないけど、わかる」みたいな
話し方をしてるらしいんですよね。
そういうのをいいなと思ってくれる方が、
見てくださっている気はしますね。
（つづきます）
2025-10-01-WED
