三國万里子さま

　

まず、今年のMiknitsのねこさんたち（kittens）、
すごくいいですねー。
かつてともに目薬ポーチを編んだことのある山下が、
「久しぶりに編み棒をにぎりたくなった」と
目を輝かせていました。
担当のみっちゃんがきっとこのへんに
ねこさんのいい写真を載せてくれることでしょう。

Styling : Miyoko Okao　Photo : Nao Shimizu

　

このねこさんたち、実際に見てみると、
「大きさ」がいいんですよね。
存在感ありすぎず、なさすぎず、じつにいい大きさ。

　

思えばそういうことも三國さんが決めるんですよね。
色やかたちだけでなく、
「この大きさにできあがる」ということも、
三國さんの作品に含まれている。
人の手や身体に合わせるものと違って
ねこのニットの大きさには指針がないから、
そういう判断ってどうやってるんだろうと思います。

　

それはそうと！ 三國さん！ 
なんと、ミトンのデザインが決まった？
「プラン」ってデザインのことですよね？

　

わー、なんというスポーティーな展開。
これ、しかし、あれですね、
三國さんが編むわけだから、
あっという間に仕上がってしまうのでは？
数日で、いや、その日のうちに完成させてしまう？
というか、このメールを書いているいま、
もう、そのミトンは完成しているのかも？

　

うーん、なんという急転換。
ひょっとしたらこのままのんびり往復メールが続き、
「ひとつのミトンができるまで」のコンテンツなのに
むしろミトンができないことが売りの
長期連載になってしまうのではないか、
などと思っていましたが、うわあ、そうですか。
突然のうれしい知らせにばたばたしながら、
ある日「花とゆめ」編集部の電話が鳴り、
美内すずえ先生が「紅天女、決まりました」って
おっしゃったら編集者はひっくり返るだろうなあと、
まったく桁違いの妄想をしてしまいました。

　

ええと、そんなこと言ってる場合じゃない。
あっ、じゃあ、このコンテンツ、
急にエンディングに向かうわけですか、わあ。
ど、どうしよう。みっちゃん、どうしよう？

　

現実問題、「それ」を、どうお披露目しましょうね。
きっと、どこかで「ぽいっ！」と
投げてもらうことになるんですかね。
ああ、受け取るのはぼくか。なんと、なんと。
いやあ、これはちゃんと考えなきゃ。
よし、落ち着いて、考えよう。
ミトンが、できた、として考えてみよう。

　

たぶんですけど、三國さんの好みからしても、
そしてもちろんぼくの性分としても、
どこかに大げさな場を設けて、
「じゃじゃーん！」「わー！」「パチパチパチ！」
てな感じにしすぎないほうがいいですよね。
「パーン（クラッカー）！」
「ぱっかーん（くすだま）！」
「パタパタパタ（鳩）！」てな雰囲気は、
正直、苦手ですよね、ぼくら。

　

じゃあ、その、
ほんとのメールみたいになって恐縮ですが、
どこかでお会いして、ごはんでも食べたりしましょうか。
そこで軽く「ぽいっ」としてもらって、
わあ、と受け取ったりして。

　

コンテンツとしては、
クライマックスにその地味さはどうかと思いますが、
まったく背伸びしてない等身大の企画ですから、
そのくらい「ほんとう」のほうが、
いいんじゃないでしょうか。
どう？ みっちゃん？ 地味すぎる？
いや、もちろん、写真とかは撮るので。

　

そんな感じで突然の展開になりましたが、
みなさま、これをのんびりお読みのみなさま、
ミトンができるみたいです。
あ、もちろん、三國さんが編みながら
「やっぱりちょっと違った」
みたいなこともありえるかと思いますが、
この感じだと、そういうこともない気がするんですよね。

　

ええと、いつものくせで質問だけしちゃいます。
三國さん、その「ヒュンと届いた」ものは、
けっこう「完成形」なんですか？
それとも「方向性」なんですか？
あるいは、色とかコンセプトとか、
もっと「ふわっとしたもの」？
いつもそういう感じでほかのニットのデザインも
「ヒュンと」やってくるのかしら。
ぜひ、教えてください。

　

そして最後にメールでいただいた
三國さんからのリクエストに
お応えしようと思います、が。しかし。

　

じつはぼく、来週、尾瀬に行く予定になっていて、
それが今年最後の尾瀬なんですよ。
ですから、「シーズン終わり」の写真は、
きっと次のメールでお送りできると思います。
そのかわりに、これまで撮った写真のなかから、
「小さくて個人的な視点のある」、
こんな尾瀬の写真をお送りいたします。

　

これ、トリカブトです。
尾瀬のあちこちに生えてるんです。
たくさんあるわけじゃないんですけど、
ご覧のように花の紫色が目立つので見つけやすい。
あ、ここにもあるな、という感じ。

　

ご存知のようにトリカブトには猛毒があって、
人を死にいたらしめることもある。
これを摂取すると、死ぬかもしれない。

　

そういうものが、尾瀬のあの雄大な湿原のなかに、
ひとつの花として静かに咲いていることが、
いつもぼくはちょっと不思議な感じがするのです。

　

木道のそばにふわっと咲いている紫の花だけど、
あれを食べたりすると死ぬのだな、などと見るたび思う。
尾瀬に残っている手つかずの大自然。
その自然のなかには、当たり前に、
さまざまな死が混ざっている。
いや、むしろ、混ざってないほうが、
安全すぎるほうが不自然なのではないか。

　

そんなことを思わせる、紫色の花の写真です。
さて、あと数回でこのやり取りも終わるのでしょうか？
なんにせよ、新しく生まれるミトンが
ぼくはとてもたのしみです。

　

それでは！

　

ほぼ日・永田泰大