クスッと笑いを誘うユニークな雑貨がならび、
「生活のたのしみ展2025」では
とても大きな反響があったミチルさんのお店
「架空が実在する雑貨店」。
このたび、オンラインショップとして
ほぼ日にオープンすることになりました。
「架空」のアイテムを生み出した張本人
ミチルさんがどんな人なのかもっと知りたくなって
どんな発想で生まれているのか、
ミチルさんが興味関心を寄せることなど、
「実在」するアイテムを見ながら
ご本人といろいろおしゃべりをしました。

>ミチルさんのプロフィール

ミチルさん

「架空の雑貨」をテーマに、
心くすぐるプロダクトを生み出すクリエイター。
2020年よりSNSを中心に活動を開始し作品を発表。
現実ばなれした世界観と独創的なデザインが注目を集め、
企業とのコラボ実績も多数。
これまでの作品を一冊にまとめた
『こういうの好き 架空雑貨集』(学研出版)が発売中。

前へ目次ページへ次へ

03 創作の原点とこれから。

――
ミチルさんが最初に世に出したものは、
何だったんですか?
ミチル
えーっと、なんだったんだろう。
正直あまり記憶にありません(笑)。
いま振り返ると、ロジックを深められていない作品が多くて、
自分の中だけでとどめていました。
でも、いざSNSをはじめると、
しだいに誰かに見てもらいたいという欲がふつふつとわいて、
そこからTwitterにポツポツと投稿するようになって、
見てもらえる数が増えて、活動が本格化していきました。
――
そこからミチルさんの妄想アイテムが
話題にのぼることが多くなって、
フォロワーもどんどん増えていったんですね。

ミチル
ありがたいかぎりです。
――
SNSでの投稿は短い文章で
簡潔に文章を書かれていますね。
ミチル
それはですね、SNSのプラットフォームの
特性みたいなところもあると思うんですが、
パッと見た瞬間にわかりやすいものがいいかなって。
言葉で説明するのは極力避けるようにしています。
言葉にたよらずとも、絵を見ただけで
おもしろさが伝わってくれればいいなと。
タイトルや説明文では、言葉をみじかくとどめています。
そうすると日本語にとらわれず、
ヴィジュアルだけで伝わって
海外の方からも反応をもらいやすいですね。
――
インスタグラムの動画を見ると、
英語のキャプションが入っていますものね。
ミチル
海外の方からのコメントって
意外性があっておもしろいんです。
たとえば、さきほどの「ハトの修正液」は、
なぜかフランスの方にたくさんコメントをいただいて。
――
へぇー!
フランスではハトが多いのかしら。
ミチル
なんでだろうと思って調べてみると、
フランスではハトがとても多いらしく、
広場や建物の屋根の上など
街のあちこちで見かけるようなんです。
――
日常にいる鳥として
親近感をもってもらえたのでしょうね。

ミチル
そういう異文化の背景が
垣間見えるのが、たのしいです。
ほかにも、「トカゲの鉛筆削り」というのがあって、
鉛筆の削りカスが首に巻きついて、
鉛筆削りがエリマキトカゲに変化する
アイデア文房具ですが、
アメリカの方からのコメントが思いがけなかった。
コメントをよくよく読むと、
映画『ジュラシック・パーク』でエリマキトカゲに似た
恐竜(ディロフォサウルス)が襟かざりで
威嚇して人間を襲うシーンと重ねていたようなんです。
――
あー!
そんなシーンありましたね!
ミチル
そういう自分では思ってもみたかった反応が
興味ぶかくておもしろい。
最近は台湾の方からのコメントが多くて、
その理由がわからないので背景を調べてみたいですね。
また、これは日本の方からでしたが、
「賛辞のおやつ」に対するコメントで
「大惨事のおやつ」だったら缶の中で
クッキーが割れていても商品として成立するのでは、
みたいなのがあって、
そんな逆転の発想もあるんだと、新鮮でした。
――
なるほど!
ミチル
「氷山になるティッシュケース」への反応でも、
減っていくティッシュを見て
「地球温暖化を考えるようになった」
というコメントがあって、
作ったときには想定してなかった視点にも
つねに刺激を受けていますね。

――
アイデアノートに書きためているものや
SNSで投稿されているものの中で、
これから商品化されるものもあるんですか?
ミチル
そうですね、いくつかあると思います。
まだどれかは言えないんですけど。
――
たのしみです。
気になるのは、これからのミチルさん。
今後やってみたいこと、
挑戦してみたいことはありますか?
ミチル
そうですね。
今までSNSでの投稿がメインで、一方向でした。
でも、「生活のたのしみ展」に参加させてもらったことが
ターニングポイントになっていて、
商品を手にとってくださる方がよろこんだり、
笑ったりする姿を見て、胸がいっぱいになりました。
「賛辞のおやつ」がみなさんのおかげで
すごくいいものに仕上がって、
発売前にWEB上で見ていただいた方から
「うれしい」「たのしみ」などの声を聞き、
実際に手に取ってほっこりしてもらえたり、
やさしい気持ちになってもらえたりというのが、
SNSに投稿して完結するより、うれしかった。
――
努力が相手にとっての救いやよろこびとなって、
直接的な感謝の言葉や笑顔をもらう機会があると
モチベーションも上がりますよね。
ミチル
だから、SNSの領域にとどまらずに、
もっと現実に足を踏み入れてみようと思っています。
「賛辞のおやつ」のような
やさしいプロダクトっていうんですかね、
そういうものにもっと力をそそぎたいし、
いつかプロダクトをこえて
インスタレーションのようなものを作って
多くの人にたのしんでもらえたらって思っています。
――
これからも、ミチルさんから
どんどんいろんなものが生まれてくると思うと、
とてもたのしみです。
どうもありがとうございました!

(おわります)

2025-07-14-MON

前へ目次ページへ次へ