日本を代表する写真家、
操上和美さんが「ほぼ日の學校」で、
写真の授業をしてくださることになりました。

テーマは「ポートレイト」です。

操上さんがポートレイトを撮るとき、
どんなことを考え、どういう指示を出し、
具体的にどうやって撮影を進めているのか。
その一挙手一投足が知りたくて、
操上さんにはこんな授業をお願いしました。

撮影現場にカメラを５台設置して、
準備から撮影の本番まで、
操上さんの動き、ことば、視線など、
現場で起きていることすべてを映像に収め、
そこからなにを学びとるかは
見る人に委ねてしまおうという、
そんな授業をすることになったのです。

操上さんに「撮られる人」として、
この授業に参加してくださったのが、
解剖学者の養老孟司さんです。
操上さんとほぼ同年代ながら、
これまで一度も会ったことがなかったとか。
すでに収録は終えているのですが、
２人のあいだでどんな会話が生まれたのか。
そのあたりのセッションも、
この授業の見どころのひとつになっております。

撮影が終了したあとは、
撮った操上さんと、撮られた養老さんと、
現場を見学していた糸井重里も交えた
３人で自由に話していただきました。
「ほぼ日刊イトイ新聞」では、
そのときの会話を、明日から全６回、
テキストにしてお届けいたします。

本日は、そのイントロ部分です。
操上さんの撮影がどんな雰囲気だったのか、
ダイジェストでお伝えいたします。

それでは、ごゆっくりおたのしみください。

▲写真家の操上和美さん。撮影時間の１時間半くらい前にスタジオ入りされました。アシスタントの方に短く指示を出しながら、撮影準備に入ります。

▲アウターはスター・ウォーズ。操上さんからヨーダ並みのフォースが漂ってます‥‥。

▲撮影用の椅子を選んでいます。足元は黒のコンバース。操上さん、きょうもかっこいいです。

▲この日の収録は「神田ポートビル」１階にある「ゆかい」さんのスタジオをお借りしました。

▲集合時間よりすこし早く、糸井もスタジオにやってきました。きょうの企画の言い出しっぺです。

▲さっそくカメラリハーサルのお手伝いをします。２人はこれまで何度もいっしょに仕事をしてきた旧知の間柄。

▲雑談をしながら構図やライティングなどをチェック。そうこうしているうちに‥‥。

▲養老さんがふらりとスタジオに登場。本日の、もうひとりの主役です。

▲外で談笑する３人。控室もご用意していたのですが、そのまま「じゃ、やりますか」と養老さん。急な展開に「ほぼ日の學校」スタッフもあわてて準備をはじめます。

▲撮影開始直前、養老さんの洋服をキレイに整える操上さん。「緊張しないでくださいね」とやさしく声をかけます。

▲この日が初対面というおふたり。撮る側と、撮られる側。いよいよセッションのスタートです。

▲「あごをちょっと引いてください、ああ、そうです」「もうちょっと。もうあと１ミリ」そんなふうに声をかけながらシャッターを切っていきます。

▲撮影中の操上さんは無駄な動きがありません。ファインダーをのぞく目が鋭く光ります。

▲何枚か撮影したあと、操上さんは構えていたカメラを下ろし、養老さんに動きの指示を出していました。

操上

‥‥ええとですね、なんか、
カブトムシか、昆虫を持ったときの感じ。
手で昆虫を持ってるとか、つまんでるとか、
その指ごと撮りたいんですね。

養老

あぁ、うん。

操上

どんな虫でもいいので、
ご自分で好きな虫を決めていただいて、
それをつまんだ指先が見えるように、
ちょっと、こう、持ち上げてみてください。

養老

（見えない虫をつまんで、持ち上げる）

操上

そうです、そうです。
はい、じゃあ、それでカメラです。
あまりうしろに寄っかからないでくださいね。
もうちょっと手上げてください。
そうです、オーケーです。

▲ふたたびカメラを構える操上さん。静まり返るスタジオのなかで、シャッターを切る音が小気味良く響きます。

▲途中、何度か撮った写真をモニターで確認。アシスタントの方と相談するような場面もありました。

▲後方から撮影を静かに見守る糸井。スタジオ内に緊張感が漂っています。

▲虫をつかんだポーズの養老さん。撮影中、養老さんから話しかけることは一度もありませんでした。

操上

（写真を撮りながら）
‥‥いま、虫はなんですか？

養老

なんだろう（笑）。
いつもは顕微鏡で見ちゃうから。
あんまり手に取らない。

操上

手に取って、あんまり見ない？

養老

うん。

操上

ちょっとあご引いてください。
はい、オーケーです。
今度は、手なしで、顔のアップだけです。

▲まっすぐとカメラを見つめる養老さん。今年で84歳になるそうです。

操上

一度、からだ、横に向けてください。
はい、そこからこっち見て。
はいはい。そうです。
ちょいとだけ、はい。オーケーです。

はい、これで撮影終わりです。
ありがとうございました。

養老

はい。

▲撮影は約10分ほどで終了。張りつめていた緊張感がふっと和らいだ瞬間でした。

操上

ちょっと疲れました？

養老

いやいや。

操上

大丈夫ですね。

養老

なんにもしてませんから（笑）。

操上

ちゃんと表現してましたよ。

糸井

‥‥終了ですか？

操上

終了です。

糸井

ありがとうございました。
第１部、終わりですね。

操上

撮影、終わりです。

一同

（拍手）

糸井

緊張感があって、おもしろかったです。
聞きたいこといっぱいある（笑）。

操上

次は選ぶんですよね。写真を。

糸井

そうです、そうです。
その選んだものを見ながら、
このあと３人で話をしようかって。

操上

わかりました。
じゃあ、ちょっと時間ください。

▲撮影終了後、休憩を取ることなくセレクト作業に入る操上さん。撮った写真をモニターに映し出しながら、本日のベストショットを選んでいきます。

▲「これはいい」「これはちがう」など、モニターを見ながら瞬間的に選んでいきます。そのスピードに迷いがありません。

▲約15分ほどでセレクション作業も終了。最終的に３枚の写真が選ばれました。

　

撮影パートはここまで！　
現場の雰囲気、すこしは伝わりましたか？

撮影にかかった時間は、およそ10分。
その場にいた全員が物音ひとつ立てず、
２人のセッションに見入ってしまいました。
こんな貴重な体験、なかなかできません。

このときの操上和美さんの授業は、
近日中に「ほぼ日の學校」で公開します。
現在、動画の編集中なのですが、
撮影シーンは「完全ノーカット版」になる予定です。
ぜひチェックしてみてくださいね。

　

さて、明日からはこの撮影のあとに行った
３人でのアフタートークを、全６回でお届けします。

撮影中、操上さんはなにを考えていたのか？　
養老さんはどんなことを思っていたのか？　
撮る側と撮られる側、写真の話から脳の話まで、
３人の話はいろんな方向へ広がっていきます。

明日からの連載、どうぞおたのしみに。