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#23 最後の家族写真

この漫画のもとになった投稿

生まれてから何度、
家族で写真を撮ってきただろう。

60年以上前は、父のお気に入りのライカや
二眼レフの縦型のカメラを前に
随分と長いこと待たされた。

そのころの写真を見ると
子どもたちの疲れ果てた顔が覗いている。

93歳の母が
一人暮らしから老人ホームに入り
病院に入院後、
バタバタと鬼籍に入ったのは今秋であった。

最後の家族写真は亡くなる数日前。

苦しいだろうに、なぜかピースサイン。
カメラを向ける度に、
反射的にピースサインを出す。

老人ホームに入る前の家族写真は
直立不動で穏やかな表情ばかりであった。
当然ピースサインはない。

結婚60周年の父との写真も
緊張感はあるものの嬉しそうに収まっていた。

変化があったのは
老人ホームでの生活を謳歌していたころから
だろうか。

母と一緒の写真は
いつもピースサインになった。

昨年、
慰問に来られたお相撲さん(炎鵬さん)とも
ピースサインで収まっていた。

いつかしら
ピースサインが刷り込まれたらしい。

告別式後、
最後の家族写真を弟と泣き笑いしながら見た。

母のピースサインに、救われる気もしている。

(母は桂子さん/
『雲のうえFM』への投稿より

2023-12-04-MON

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    今日マチ子

    漫画家。1P漫画ブログ「今日マチ子のセンネン画報」の書籍化が話題となる。文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に4度選出。戦争を描いた『cocoon』は「マームとジプシー」によって舞台化。2014年に手塚治虫文化賞新生賞、2015年に日本漫画家協会賞大賞カーツーン部門を受賞。『みつあみの神様』は短編アニメ化され海外で23部門賞受賞。コロナ禍の日常を絵日記のように描いた近著『Distance わたしの#stayhome日記』が、2022年1月『報道ステーション』にて特集された。

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    編集:奥野武範(ほぼ日)

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