2019年の夏の終り、
ほぼ日の山下と光井は富良野を訪れました。
『北の国から』の展覧会を開く準備のために。
せっかく北海道に行くのだから良い写真も撮ってほしくて、
写真家の池田晶紀さんにも同行してもらいました。
池田さんは『北の国から』の大ファンなんです。
その道中を振り返って、レポートします。
ゆるゆるとした記録ですが、
レポートの中には「北の国から資料館」の館長だった、
仲世古善雄さんへのインタビューも、あります。
そこでは貴重なお話を、たっぷりどうぞ。
いや~、
富良野はいい場所でしたよ~。
- ───
- 一緒に焚き火にあたりながら、
「先生、ぜひここでドラマを作ってください」。
そこから仲世古さんと、
そして富良野の未来が
大きく変わっていくことになるわけですね。
- 仲世古
- その後しばらくして
フジテレビの人が訪ねてきました。
「実はこれから会議にドラマの企画を出します。
つきましては、地元のみなさんのご協力は
絶対の条件になります。
それがないと成り立ちません。
ご協力いただけますでしょうか」とおっしゃる。
それで、私がまた軽いもんですから、
「しますよ」と(笑)。
- ───
- また、ポンとお返事を(笑)。
- 仲世古
- それでもですね、
先生にそのことを伝えたら、
「いや仲世古さん、みんなの理解が必要だから
麓郷の人たちにちゃんと話したほうがいいですよ。
観光客がどっと来る可能性がありますから」
とアドバイスしてくださったんです。
「麓郷」という名前を使っていいのか、
架空の地名にしたほうが
迷惑がかからないんじゃないかと、
先生はそれも心配されていました。
- ───
- ほんとうに好きになった場所だからこそ、
本気で心配されたのですね。
- 仲世古
- みんなに相談しました。
かくかくしかじかで先生がご心配されてると。
そしたら、地元のみんな、声をそろえて、
「こったらとこに観光客が来るわけないべっ!」
- ───
- (笑)
- 仲世古
- 「それがほんとなら、来るようにやってくれ!」
- ───
- あり得ないと思ったんですね。
- 仲世古
- でもこれで、みんなの了解を得ました。
「協力します」と
正式にお返事したのがはじまりで‥‥。
- ───
- はい。
- 仲世古
- それからが、まあ、たいへんなことに(笑)。
- ───
- それは、どんなふうに?
- 仲世古
- まず、現地にマスコミを集めて
「ここでドラマを作ります」と発表がありました。
それがテレビや新聞に出ますでしょ?
- ───
- はい。
- 仲世古
- そしたら、渋滞しちゃったんです。
- ───
- ‥‥え? どこがですか?
- 仲世古
- 麓郷の道が。
- ───
- まだドラマが始まってないのに?
- 仲世古
- あれは恐ろしかった。
農家のトラクターが動けなくなっちゃった。
- ───
- はあーーー。
- 仲世古
- 都会から来た人は
ジャガイモや麦なら作物とわかるけど、
牧草を育ててる場所は、
農地だとわからないんですよ。
そこに誰かが車を停めたもんだから、
みんなも次々に停めちゃった。
農家から私に文句が来るわけです。
「なにやってんだーーーっ!!」
- ───
- 仲世古さんに来るんですか。
- 仲世古
- そうですよ。私が窓口なので。
いや、困った。これは困ったことになった。
先生が言ってたとおりだ。
- ───
- ドラマが始まる前で、それですからね。
- 仲世古
- このままだと、
人様の土地に迷惑がかかると思いました。
自分の土地なら迷惑を最小限にできると。
ですからね、
たとえば「石の家」なんかは、
私、買ったんですよ。
- ───
- え‥‥。
ロケのために、仲世古さんが土地を買った。
- 仲世古
- できるだけそうしたほうがいいかなと。
ちなみに言うと、
「拾ってきた家」や「丸太小屋」も
今は私のところにあります。
前は借りたりもしたんですけど。
- ───
- いやぁ‥‥そうでしたか。
仲世古さんの土地が、
今では観光地になっているわけですね。
- 仲世古
- 観光地と言えばですね、
「北の国から資料館」を
どうして作ろうと思ったかという、動機。
- ───
- 動機。そこはぜひうかがいたいです。
- 仲世古
- 観光なんです。
『北の国から』が有名になっても、
富良野の町に人が行かなかったんですよ。
- ───
- ああ、そうだったんですね。
- 仲世古
- 飛行場に着いて、車でラベンダー畑を見たら、
そのまま麓郷へ直行。
富良野の町に寄らない人が多かったんです。
そこで、町にも立ち寄ってもらうために、
あそこに資料館を作ろうと。
- ───
- 富良野駅の、すぐ側ですよね。
- 仲世古
- ええ。
資料館ができたときは、すごかったんです。
人が大勢やってきて。
あれはほんとうに、すごい賑わいでした‥‥。
(つづきます)
2020-01-31-FRI