1981年に放送された名作ドラマ、
『北の国から』をご存じですか?
たくさんの人を感動させたこのドラマを、
あらためて観てみようという企画です。
あまりテレビドラマを観る習慣のなく、
放送当時もまったく観ていなかった
ほぼ日の永田泰大が、あらためて
最初の24話を観て感想を書いていきます。

イラスト:サユミ

前へ目次ページへ次へ

#16

ずっと川下り。

『北の国から』第18回のあらすじ

空知川の筏下り大会に初めて参加した純と螢。
趣向を凝らした手作りの筏が勢揃いするなか、
彼らは安全そうな中畑の「四畳半号」に乗り込んだ。
川下りの途中に偶然純は家出をしたつららの姿を見かける。
手分けをして探したが、結局つららは見つからなかった。
その夜、別の事件が起る。
涼子とUFOを見に出かけた螢が
夜中になっても帰ってこないのだ‥‥。

 

世にも美しい汽車のシーンの品質で、
このドラマがここで終わっても構わないとすら
ぼくに思わせた前回と打って変わって、
この回ははっきりいって、ゆるゆるである。

空知川という実在の川があって、
そこで「イカダ下り」という実際のイベントがある。
付近の住民のみなさんが、
さまざまな意匠を凝らした
手づくりのイカダをつかって、
10キロほどをみんなで下っていくという、
なかなかフィジカルな催しで、
競技性は薄いものの、途中は急流などあり、
毎年、なかなか盛り上がっているそうだ。

カメラは、そこに参加する人たちを映し出す。
要するに、ふつうにエントリーしている人たちだ。
手づくりの派手なイカダも、手描きの旗も、
川岸で応援している人たちも、
エキストラではなく、市民である。
地元でも人気のイベントであるらしく、
参加する人たちも応援する人たちも
たいへんたのしそうだ。

そこに、五郎たちのイカダも参加する。
あと、中ちゃんの大きなイカダも出るし、
草太兄ちゃんは二人乗りの
コンパクトなイカダで参加する。
つまり、ドラマの外側から全体をとらえると、
実際のイカダ下りのイベントに、
田中邦衛さんや竹下景子さんや
岩城滉一さんも混ざって参加し、
それをそのまま撮影してドラマに編集する。

要するに、『世界の果てまでイッテQ!』
撮影チームが外国のお祭りに参加するのと
構造としては同じである。

まあ、それはそれでいいんだ。
ぼくも、冒頭でその構造に気づいたときは、
「へえ、こんな撮影もしたんだ」くらいに思ってた。
こういう場面もちょっとありつつ、
ドラマが進んでいくんだね、と思ってた。

ところがである。
驚くことに、この『イッテQ』部分は
たっぷり30分くらい続いた。
1回のドラマが45分だから、
この回はほとんどイカダ下りである。

しかもこのイカダ下りに競技性がないものだから、
たとえば学園マンガにおける体育祭のような、
初期『ドラゴンボール』における天下一武道会のような、
臨時の横軸としての刺激もとくにない。
もっというと、ドラマとしての展開さえとくにない。
ちょっとした台詞や段取りはあるけど、
基本的には、いくつかのイカダに分かれて乗った、
純とか螢とか五郎さんとか中ちゃんとかが、
「父さんはー?」「ずっと先に行ったよー!」
とか言い合ってるだけである。
つららさんが川岸で目撃されるという
重要な要素はいちおうあるものの
時間的にはほんの一瞬で、
だいたいの時間はみんな
ばしゃばしゃたのしくやっている。
クマちゃんが見事な竿さばきで
イカダをコントロールしていたり、
タツミさんと五郎さんのイカダが
急流でひっくり返ってゲラゲラ笑ったり、
もう、テロップの出ない『イッテQ』状態である。

そんななか、かっこよかったのは、
岩城滉一さんの肉体美である。
驚くことに、岩城滉一さんときたら、
ドラマの主要キャラを演じる二枚目俳優なのに、
終始ランニングパンツ一丁である。
あんなに真っ黒に焼けて
俳優として大丈夫なのだろうか。

五郎さんは川を下る途中、
なんだかおねえちゃんとメロンを食べたりして
半端にイチャイチャしていたが、
いい歳してなにをやっているのだろうか。

で、涼子先生。
またUFOの話とか持ち出してきた。
え? UFOの話、まだつづくの?
あの不思議な目撃シーンで終わりじゃないの?

という、なんだかとらえどころのない、
『ククルス・ドアンの島』みたいな回だったよ。
あ、でも、最後まで観終わったら、
じつは重要な回になっているのかもしれない。
知らんけど。

(つづくと思われ。)

2020-02-18-TUE

前へ目次ページへ次へ