入社３年めのサラリーマン、
川西宏幸さん25歳。
彼は去年の夏、
ボーナスをつぎこんで
あるお笑いライブを開催しました。
その名も、
「サラリーマン川西の
夏のボーナス50万円争奪ライブ」。
そう、彼は半年間働いて得たボーナスを
たった１回のお笑いライブの
賞金にしたのです。
このライブは反響を呼び、
チケットは即完売。
配信チケットも約300枚を売り上げました
（自主ライブとしては、かなりの枚数のようです）。
“サラリーマン川西”は、
いったい何を考えて
ボーナスをこんなふうに使ったのでしょう？
本人に聞いてみました。
1996年、岡山県出身。
高校２年のとき、
「ハイスクールマンザイ2013」で優勝。
翌年「ハイスクールマンザイ2014」にも出場、
準優勝をかざる。
同志社大学入学と同時に
お笑いサークル「喜劇研究会」に入り、
４年間お笑い漬けの日々を送る。
2019年、在阪の放送局に入社、
アシスタントディレクターや
ディレクターを経験し、
2021年、東京に転勤。
- ――
- 「サラリーマン川西の
夏のボーナス50万円争奪ライブ」
のことを、わたしは最初に
Twitterで見かけました。
とにかくライブのタイトルが強烈なのと、
出演していた芸人さんたちの感想が熱かったので、
配信でライブを見てみたら、
とてもおもしろくて。
サラリーマン川西の夏のボーナス50万争奪ライブありがとうございました！
優勝はママタルトさんでした！！！
おめでとうございました！！
みなさんありがとうございました！
最高のライブでした！次は冬にお会いしましょう！！！ pic.twitter.com/k319tCzBoT
— 川西宏幸 (@cawanushi) August 26, 2021
- 川西
- そう言っていただけるだけで
めっちゃうれしい。ありがたいです。
やってよかったなと思います。
- ――
- なぜあんなライブが生まれたのかを
知りたくなりました。
サラリーマン川西さんは、
お若いですよね？
- 川西
- 25歳です。
会社には新卒で入って、入社３年めです。
- ――
- そんな若い川西さんが
50万円をお笑いライブに‥‥。
- 川西
- はい（笑）。
- ――
- そもそも、
お笑いを好きになったきっかけは？
- 川西
- 子どもの頃からお笑いは好きでした。
2005年のM-1グランプリで優勝した
ブラックマヨネーズさんの漫才を見て
「うわ、すごい！ 面白い！」と思って、
そこから『爆笑！ オンエアバトル』のDVDを借りたり、
深夜バラエティを観たりするようになったんです。
熱心に見ていたのが『くりぃむナントカ』。
さまぁ～ずさんの『神さまぁ～ず』も好きでした。
ほかにも、
中川家さん、タカアンドトシさん、
サンドウィッチマンさんにトータルテンボスさん、
囲碁将棋さん‥‥。
- ――
- たくさん見ていたんですね。
ご自分ではやらなかったんですか？
- 川西
- やりましたよ。
ぼく、小学校からずっとサッカー部で、
高校でもサッカー部に入ったんですが、
ふと、「９年間やってきて、
今まで一度もスタメンになれたことないな」
と気づいたんですよ。
「向いてないんちゃうかな」と思って
すぐにサッカー部を辞めて。
高１の冬くらいに
高校生を対象とした
「ハイスクールマンザイ」という大会の存在を知ったんです。
そこで「お笑い好きだし、
自分でもやってみようかな」と思って、
高２のときに友だちを誘って挑戦したら、
優勝させてもらって。
- ――
- え、いきなりですか？
- 川西
- はい、ありがたいことに。
翌年も出て、そのときは準優勝でした。
そんなこともあって、
大学では喜劇研究会というサークルに入って
４年間漫才なんかをやっていました。
- ――
- それだけの評価を得て、
プロの芸人としてやっていこうとは
思われませんでしたか？
- 川西
- それは何度も考えました。
高校時代は「芸人をやるにしても、
大学は卒業したほうがいいな」と思って大学進学して。
大学在学中は喜劇研究会が楽しすぎて、
「卒業してからでいいや」と思っていたんです。
そしたらつきあっていた彼女に
「ちゃんと就職してほしい」と言われて。
- ――
- ああ‥‥。
- 川西
- 親からもやんわり
そんな雰囲気が出ていたので、
そこから急いで就職活動をして、
いまの会社に拾ってもらいました。
- ――
- どんな仕事ですか？
- 川西
- 作り手として笑いに関われたらと思って、
大阪の放送局に入りました。
入社して２年は
ADやディレクターをやっていたんです。
でも異動を言い渡されて、
突然、東京で営業をやることになりまして‥‥。
- ――
- それで、いわゆるスーツ姿のサラリーマンに。
「作り手として笑いに関わる」という
希望からは少し離れてしまいますね。
- 川西
- そうなんです。
最初は「なんでだよ」と思いました。
会社に所属している以上、
異動はしかたないことですが、
営業ではお笑いへの関わりも限られてしまう。
ちょうどその頃、
つきあっていた彼女に振られまして‥‥。
- ――
- 彼女の希望もあって就職したのに！
- 川西
- 仕事でも希望の道から外れたうえに、
お金の使いみちも
なくなってしまったんです。
ボーナスをもらっても、
とくに使う予定がない。
だったらこのお金を
ちょっと変わったことに使いたいと思って。
いろいろ考えて、
「お笑いライブの賞金にできないかな」と。
- ――
- 突然。
ちなみに、今までのボーナスは
何に使っていたんですか？
- 川西
- 親になにか贈ったり、
洗濯機を買ったり、
彼女と同棲しようと思っていたので
そのために貯金したり。
ごくごくふつうの使い方でした。
- ――
- それが、営業に異動して、
これまでと違う使い方をしようと思ったときに、
お笑いライブに。
- 川西
- 考えてみれば
高校、大学とお笑いが僕を支えてくれて、
会社にもお笑いのおかげで入れた。
だからお笑いに還元できたら、という気持ちもあって。
せっかくなら面白い使い方をしたいなと
思ったんです。
（つづきます）
文：釣木文恵
2022-01-21-FRI
