2020年の年末、ほぼ日は
神田の町に引っ越してきました。
はじめてのこの町をもっと知りたいし、
もっと知ってほしいと思っています。
そこで、日本全国のすべての市町村を回った
若き写真家、かつおさんこと仁科勝介さんに
神田の町を撮ってもらうことにしました。
自由にやってください、かつおさん。

>かつおさんのプロフィール

かつお|仁科勝介(にしなかつすけ)

写真家。1996年岡山県生まれ。
広島大学経済学部卒。
2018年3月に市町村一周の旅を始め、
2020年1月に全1741の市町村巡りを達成。
2020年の8月には旅の記録をまとめた本、
「ふるさとの手帖」(KADOKAWA)を出版。
写真館勤務を経て2020年9月からは独立。

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#076


『神保町ブックフリマ』

直近の土曜日、神保町ブックフリマに訪れた。
ブックフリマは昨年
『神保町ブックフェスティバル』
が中止になったことから
発案されたアイデアだそうだ。
特定の会場で大規模な集客ができないからこそ、
各店舗のリアルスペースやオンラインで分散して、
フェアを行っている。

ほどよく賑わいが戻ってきた神田。
そもそも神田で町全体の
イベントに行くこともはじめてだ。
昨秋上京して、
情勢はずっと悪かったから、
神田でイベントがある、
ということすら不思議に感じられた。
参加していた約20会場をひとつずつ、
訪れてみることにしよう。

店舗だけでなく、
普段入ったことのない
ビルの上階や地下の会場にも、
たくさん入った。
エレベーターの階を押すだけで、
あたらしい冒険みたいだった。
会場にはもちろん人がいて、
このような場所があったんだなあと、
書店、出版社さんの名前をあたらしく覚えた。
「あの人は作家さんだよ」
というエレベーター内の会話、
「この資料は学部で読むのがいいね」
と大学教授らしき人、
会場を巡れば巡るほど、
「いま神保町にいる」
という実感がどんどん湧いてくる。
そして何より楽しかったのは、
お客さんもお店の方も、
みんな生き生きとしていたことだった。

ある会場では、
「ドサドサァ!」
と男性が本を落としてしまった。
すると周りの人たち(一応ぼくもね)が
迷いなく本を拾い集めて、
大丈夫ですか、と本を手渡していく。
中には「お怪我はありませんか?」
と声をかけた方もいて、
なんて紳士なのだろうと、
この場に居合わせたことを幸せに思った。
本が好きな人に、悪い人はいないよ。

ほぼ日の學校さんも含め、
すべての会場をまわって、
数えたら15冊ほど買ってしまった。
お金ないのになあ。
しかし、
「こんなはずじゃなかった」
の感情には、
「こんなにいい本と出会えるなんて」
という感情も大きく含まれていた。
並べてある本は選書されていたり、
書店さんおすすめの著者だったり、
「こういう本が欲しかったんです!」
という感情のオンパレードなのだ。
「神保町で本を探す」ことは、
つくづく贅沢でありがたいことだなあと、
再認識させられたのだった。

今回の写真は、
“本の雑誌社”さんの前で、
撮らせていただいた。
お店の方とお話しをしながら、
大山顕さんという写真家さんに
関係する本やアートブックを買った。
知っている方だったし(一方的に)、
出版社さんとのつながりを教えていただきながら、
「なるほど!」と話がいろいろ結びついた。
やっぱり、オフラインで
会話するからこそ得られる魅力も、
ありますよねえ。

神保町という、
唯一無二なオフラインの場で、
本を探せることのありがたさ。
この感情はイベントがない時間も、
ずっと大切にしたい気持ちだ。

2021-11-01-MON

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