
「好き」を言語化するとどんないいことがあるのか?
大ヒット新書『「好き」を言語化する技術』の
著者・三宅香帆さんに聞きました。
自分の気持ちをまず言葉にすることは、
自分をいたわる
“ケア”のような行為だと
三宅さんは言います。
また、日記がおすすめだという三宅さんは、
学生時代にほぼ日手帳を使ってくれていました。
ほぼ日手帳の存在が
言語化の技術を磨くことにつながったそうです。
三宅 香帆(みやけ・かほ)
文芸評論家。
京都市立芸術大学非常勤講師。
1994年高知県生まれ。
京都大学人間・環境学研究科博士後期課程中退。
リクルート社を経て独立。
主に文芸評論、社会批評などの分野で幅広く活動。
著書『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』
(集英社)、
『「好き」を言語化する技術
推しの素晴らしさを語りたいのに
「やばい!」しかでてこない』
(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など多数。
自身のYouTubeチャンネル
「三宅書店【本を読むモチベを上げるチャンネル】」で
動画を多数公開。
- ──
- イベントに行ったり、映画を見たりして
いろいろインプットしたのに、
いざ書こうとすると詳細を覚えてなくて
切なくなることがあるんです。
そのあたりはどうしてますか。
- 三宅
- 私はメモを取るのが大事だと思っています。
全部を覚えておこうというよりも、
自分にとって面白かったところとか、
大事だったところだけメモする。
そして忘れないうちに、
その日かその翌日に日記に書くといいですよ。
- ──
- できるだけ早く忘れないうちに
メモしておくといいんですね。
スマホのメモ機能でもいいですか?
- 三宅
- はい。まさに、スマホのメモでOKです。
- ──
- 話が少し飛んでしまうかもしれませんが、
自分の気持ちを言葉で表すのは、
自分を知るきっかけにもなるのかなと思いました。 - 例えば好きな映画があるとして、
「この作品のどこが好きか」を深掘っていくと、
「自分はこういう人間だから、
この登場人物のここが好きになった」とか
自分自身を考えることになりますよね。
- 三宅
- わたしも、そう思います。
自分の好きなものは、
自分に影響を与えているものだと思うんです。
だから好きなものをひも解いていくと
自分がどういう人間に影響されるタイプだとか、
自分は人のどういうところに惹かれるのかとか、
わかっていきます。 - 自分を知ろうと思うとき、
自分自身を深掘るより、
自分の好きなものを深掘ったほうが
見えてくるものが大きいといつも思うんですよね。
- ──
- たしかにそうですね。
自分のことを考えるのはむずかしいけれど
好きなもののことは考えやすい。 - あと「好き」を言語化する技術が上がっていき、
多くの人が自分の気持ちを
うまく表現できるようになっていったら、
世の中がどのように変わっていくと思いますか?
- 三宅
- いろんな「好き」が
言葉で保存されていることになるので、
そのこと自体がすばらしいことだと思います。 - 流行っていたものとかは
記憶として残ると思うんですけど、
実際どのように好かれてたのかとか、
どういう熱狂が起こってたのかは
意外と残らないと思っていて。 - でも言葉は残りやすい。
言葉が残っていると、あとから見たときに
「あ、こういうふうな好きな人たちがたくさんいたんだ」と
伝わる。
そのこと自体がすばらしいなと私は思いますね。
- ──
- 後世に伝わるのはいいですよね。
- あとは「好き」を言語化するのが上手になっていくと
自己肯定感が上がっていくような気がしています。
言い過ぎですかね?
- 三宅
- わかります!
私は自己肯定感が高いと思うんですけど、
それは自分がすばらしいというより
自分が読んできた本がすばらしいと
認識しているからです。 - 「すばらしい本に影響を受けているということは
私もすばらしい人間なのだろう」と思っている。
だから自己肯定感が高いんだと思うんです。 - 反対のことを考えるとわかりやすいです。
自分のことは否定するのに、
自分の影響を受けたものを否定しないのは
なかなか難しいんじゃないかと。 - 自分に影響を与えたものがどんなにすばらしいかを
言語化していくと、
自分の人生もいいもんだなと思えるんじゃないかと
思いますね。
- ──
- そうですよね。
自分の人生に満足できるようになりそうです! - 自分に満足ができる人が増えていくと、
社会全体としていい影響があると思うんですよね。
- 三宅
- はい。まさに。
他人と比較して、
自分って何もしてないって落ち込むことが
私にもあるんです。 - 一方で、
自分の好きなものにフォーカスを当てると
他人と比べる必要がなくなってくる。
自分の好きな映画は自分が好きなだけでいい。
人と比べる必要はない。
好きなものにフォーカスを当てて、
自分のことを説明したり、
自分のことを認識するのは大事かなと思いますね。
- ──
- 好きを言語化することの可能性をすごく感じます。
- 例えば、人と比べてもっと賢くなりたいと思って、
たくさん本を読んで、読書量で勝とうとしても、
身についた感じがしないと虚しい。 - でも、本のどこが好きかにフォーカスを当てて
うまく言語化できると、
自分が満たされていく気がします。
- 三宅
- そうそう。
何を面白いと思ったかとか、
どこに興味があるのかに
フォーカスするのが大事だと思うんですよ。 - 自分は何を面白いと思ってて、
何を楽しいと感じるか、
その感情にフォーカスを当てると、
あんまり他人が関係なくなってきます。
(明日につづきます)
2025-10-13-MON

