「好き」を言語化するとどんないいことがあるのか?
大ヒット新書『「好き」を言語化する技術』の
著者・三宅香帆さんに聞きました。
自分の気持ちをまず言葉にすることは、
自分をいたわる
“ケア”のような行為だと
三宅さんは言います。
また、日記がおすすめだという三宅さんは、
学生時代にほぼ日手帳を使ってくれていました。
ほぼ日手帳の存在が
言語化の技術を磨くことにつながったそうです。

ほぼ日の學校で、ご覧いただけます。

>三宅香帆さん プロフィール

三宅 香帆(みやけ・かほ)

文芸評論家。
京都市立芸術大学非常勤講師。
1994年高知県生まれ。
京都大学人間・環境学研究科博士後期課程中退。
リクルート社を経て独立。
主に文芸評論、社会批評などの分野で幅広く活動。
著書『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』
(集英社)、
『「好き」を言語化する技術
推しの素晴らしさを語りたいのに
「やばい!」しかでてこない』
(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など多数。
自身のYouTubeチャンネル
「三宅書店【本を読むモチベを上げるチャンネル】」で
動画を多数公開。

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第1回 ほぼ日手帳ユーザーだった。

──
今日はどうぞよろしくお願いします。
三宅
よろしくお願いします。
──
「ほぼ日の學校」は講師の方に
リラックスしてお話しいただく場なのですが、
今日はほぼ日の乗組員がずらりと並んでいます。
三宅さんのご著書『「好き」を言語化する技術』を
読んで、
三宅さんのお話を聞きたいと思っているメンバーです。
三宅
ありがとうございます!
──
たくさんの人がいる中でリラックスしてお話するのは
ハードルが高いかもしれませんが、
肩の力を抜いてお話しいただければと思っています。
今日は「言語化」についての話を
うかがいたいと思っているのですが、
本題に入る前に
三宅さんがほぼ日手帳を
使っていたと知りまして、その話から聞かせてください。
三宅
はい。わかりました。
──
高校、大学のときに使っていたんですよね?
三宅
はい。そうです。
──
高校生や大学生という
三宅さんの人生の中の多感な時期に、
ほぼ日手帳が関わっていたのがうれしいです。
そのときはどんな使い方をしていましたか?
三宅
私がほぼ日手帳を初めて使ったのは
高3の受験勉強の記録を取り始めたのがきっかけです。
当時、流行っていた
『ドラゴン桜』(三田紀房さん作)という
大学受験をテーマにした漫画に
自分の勉強した内容や時間を記録するといいと
書いてあって。
それで親にねだって買ってもらったんです。
縦に時刻が書かれた欄に勉強した時間を塗って、
他の部分にはその日勉強したこととか
覚えづらかったことなどをメモしていました。

▲三宅さんの高校時代のほぼ日手帳(実物)。テストの日程などもしっかり書き込んでいます。 ▲三宅さんの高校時代のほぼ日手帳(実物)。テストの日程などもしっかり書き込んでいます。

▲時間軸のピンクのマーカーは勉強時間。フリースペースには、重要ポイントと思われる書き込みが。 ▲時間軸のピンクのマーカーは勉強時間。フリースペースには、重要ポイントと思われる書き込みが。

──
受験勉強の記録として、
使ってくださっていたんですね。
三宅
それまで自分の思ったことを
ノートに書いてたりはしていたのですが、
毎日ではなかったんです。
ほぼ日手帳を使い始めてから毎日書くようになり、
その習慣は大学生になっても続きました。
大学のときは、
行った展覧会のチケットを貼ったりとか
手帳に日記を書いていました。
紙の日記として4回生ぐらいまで使ってましたね。
──
最初に購入したのは
お店でしたか?
三宅
いえ、ネットで買いました。
当時、三谷幸喜さんが脚本を書いた大河ドラマ『新選組』が
大好きだったんです。
ほぼ日刊イトイ新聞のサイトで
『新選組』の特集をやっていたので、
それを読んだり、
いま大河ドラマの『べらぼう』の脚本を書いている
森下佳子さんの
「ほぼ日TVガイド」シリーズを読むようになり、
そこから手帳の存在を知ったという流れでした。
──
ほぼ日のコンテンツを高校時代に
読んでくださっていたとは!

では最初は受験勉強の相棒として
ほぼ日手帳を書いていて、
大学生になると日記帳として使っていたと。
三宅
そうです。
大学時代の友達に
ほぼ日手帳に日記を書いている子がいて、
それで「日記として使ってもいいんだ!」と思って。
──
今で言う「推し」だったり、
夢中になっていたことなどを書いていたのでしょうか?
三宅
一番書いていたのは
読んで面白かった本の感想ですね。
詳しく書いていたわけではないんですけど、
毎日何かしら読んだり見たりしていたことを、
とりあえずタイトルだけでも書いていました。
──
手帳を書いていたことが
今の仕事や生き方に役立っている部分はあります?
三宅
それはあります。
ほぼ日手帳があったから、
日記の習慣ができましたし、
書く仕事につながったのかなって思いますね。
あるとき「ここに書いているものは、
私が死んでも残ってしまう」ということに気づいて(笑)
日記をパソコンやスマホで書くようになったんですが、
最初からパソコンで書いていたら
日記を書くのは続かなかった気がします。
紙の手帳だからこそ書き続けられたんだと思うんです。
──
なんと、うれしい!
日記をデジタル化したときのことを
もう少し詳しく教えてもらえますか?
三宅
書いたほぼ日手帳はずっと取っておいているんですね。
大学3回生くらいになると溜まっていって
4冊くらいになるとけっこうな量になるんですよね。
これをこのまま続けていたら、
捨てるに捨てられないということに気がついたんです。
パソコンなどのデジタルデータだったら、
一発で消せると思って。
そこから日記はデジタル派になりました。
──
やっぱり人に見られたくないことも
書いていたっていうことですか‥‥?
三宅
見られたくないものしか書いてないですね(笑)。
──
(笑)。

三宅
今も昔も、日記は
人に言えないこと書く場という感覚があります。
人に言うために発する言葉と
自分の中だけで使う言葉は
昔から分かれています。
受験勉強をどれぐらいしているかも
他人に共有できない感覚があったんです。
「今回の模試はどこがよくてどこが悪かった」
とか自分のために記録していました。
だから日記には人に見せられないことばかり
書いています。
──
デジタル日記にして10年近く経って、
ほぼ毎日、書いているとのこと。
日記を書き続ける秘訣はありますか?
三宅
毎日たくさん書いているわけではないんです。
2、3行しか書かない日もいっぱいありますが、
それでも全然よしとしています。
──
書く時間を決めるとか、書く場所を決めるとか、
ルールはありますか?
三宅
わたしはルールなど何も決めないことが
続ける一番の秘訣だと思っているんですよ。
つまり、こういうシチュエーションにならないと
書いちゃいけないとか、
こういう時間帯に書きたいみたいなのがあると、
ルーティンをこなせないときに困ってしまう。
例えば、旅行中とか仕事が忙しかったりとか。
「毎日日記を書いています」と言いながら、
2、3日まとめて書くことはよくあります。
それでもよしとしています。
あるいは「もう疲れた」ぐらいの一言しか
書かない日もあります。
一応読んだものや見たものを
書くようにしようとは思っているんですけど、
書けないときもよくあるので。
むしろルーティンがないほうが
続くんじゃないかと思ってますね。
──
では移動中の電車の中とかで書いたりとかも
ありますか?
三宅
めちゃめちゃあります。
──
三宅さんも毎日必ず書いているわけではないと知って
安心しました。
三宅
はい。出張中なら一刻も早く寝たいですよね。
──
そうですね。飲み会があって
疲れて書けないときとかもあります。
三宅
そうそう。
そしたら翌日「昨日の飲み会、マジで疲れた」と
書けばいいんですよ(笑)。
──
そうか。
それでも続ける、が大事ですね。
三宅
日記は続ければ続けるほど貯まるので、
過去に書いた日記を見返すのが面白くなるんです。
あとで見返すことが、
日記を書き続けるモチベーションになっています。

(明日につづきます)

2025-10-11-SAT

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  • 三宅さんの新刊

    「話が面白い人」は
    何をどう読んでいるのか』

     

    book

    みんなが知っているあの本や
    話題の漫画を
    面白く語れるようになる
    三宅香帆さん流の
    インプット術の本。
    言語化の次の段階として、
    自分の話を面白く
    聞いてもらえるようになる
    コツが書かれています。