アジア人女性として初めて
世界最高峰のバレエ団「マリインスキー」に、
正式入団を果たした石井久美子さん。
華々しい経歴の裏側で、次々と起こるハプニング。
バレエのことをよく知らないわたしが、
こんなにも彼女に魅かれてしまうのは、
あらゆる逆境を乗り越え続けてきたにも関わらず、
あっけらかんと話す姿が、かっこいいから。
その前を向く力は、いったいどこからやってくるのか、
ため息が出るほどの美しさは、何からできているのか、
知れば知るほど魅力的な久美子さんにお話を伺いました。
担当は下尾（しもー）です。
石井久美子（いしいくみこ）
1994年９月７日東京生まれ。８歳〜16歳の約８年間、東京バレエ劇場、橘バレエ学校、祥子バレエ研究所に通う。17歳から２年間ロシア国立ワガノワ・バレエ・アカデミーに留学。留学最後に行われた国家試験（卒業試験）でマリインスキー劇場の芸術監督にスカウトされ、2013年アジア人女性として初の正式入団をはたす。入団直後の11月に『ドン・キホーテ』第３幕ヴァリエーションでデビューし、これまで数多くのソリスト役を演じている。「腰痛・ねこ背・巻き肩を解消！ 胸椎伸展 10分寝るだけストレッチ」を発売中。YouTubeも積極的に投稿している。
▶石井久美子さんのHP
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▶石井久美子さんのInstagram
▶石井久美子さん個人のInstagram
▶石井久美子さんのYouTube
- ──
- 寝たきりの間は、
どのようなことを考えて過ごしましたか？
- 久美子
- 切り替えが上手だから、私（笑）。
たまに泣くことはあっても、
今の自分に何ができるかなということを考えていたので、
バレエの器具を作ろうと思いつきました。
足の甲をキレイに見せるための、ストレッチ器具を
寝たままスケッチして、Instagramで、
それを作ってくれそうな工場を見つけて、
連絡したりしていました。
- ──
- 寝たきりになりながらも、
楽しいことは考えられていたんですね。
- 久美子
- はい。そして、起き上がれるようになったときも、
今まで自分が培ってきた部分の一部分なら、
まだ身体が痛い今、
自分が踊れなくても誰かに伝えられる気がして、
「教える」ということを始めました。 - そういう風に、自分にできることをやらないと、
生きている心地がしなかったから。
マリインスキーで、やっと踊れるようになったあとに、
またどん底に落とされた感覚はありましたが、
ここまで培ってきたものは、もう宝だと思えるので、
もっと自分の生きがいにしていかなきゃなと思って、
できることを始めたんです。
- ──
- 教える楽しみは、ありますか？
- 久美子
- あります、あります。
わりと、学生の頃から、先生になりたかったので。
そもそも工夫するのが大好きで、自分が工夫して、
うまくできたことを言語化して、
人に伝えるのが、すごく好きなんです。 - 私が伝えたことがきっかけで、
目の前の人が、パッとよくなるという、
小さな成功体験が10代の頃から、
とても多かったことも、
教えるのが好きな理由のひとつです。
- ──
- ご自身のYouTubeの中でも、
「この筋肉を使うんじゃなくて、こっちなの」って、
見ただけでわかるのって、すごくないですか？
- 久美子
- たぶん、母の血なんですよ。
その人が、身体を使えているかどうかは、
パッと見ただけで、わかります。
- ──
- それだけ、観察力にも長けていらっしゃるんでしょうね。
全然バレエを知らないのに、久美子さんのYouTubeは
見ていて、とっても面白いです。 - ご家族の話も、お聞きしたくて。
今日も、妹の菜々子さんがマネージャーで
お越しくださっていますが、
妹さんも、弟さんもYouTubeに出られていて、
お母さんのお話も、何度も出ています。
大人になっても、こんなに仲良しな家族って、
珍しいような気もするんですが。
- 久美子
- すっごく珍しいと思います。すっごく仲良しなんですよ。
もうずっと一緒にいて、まあ、意見がぶつかって
言い合いをすることはよくありますが、
いい方向に向かうために起きている議論なので、
その話が終わったら、ケロッと仲良くしています。
共同作業をしながら、
家族としても仲良くいられて、最高です。
- ──
- 理想の家族だなあと思います。
久美子さんの心の支えにもなっている気がします。
- 久美子
- 家族以上のものって、あるのかな
という感覚はすごくあります。自慢です。
私の唯一の（笑）。
- ──
- これからまた
ロシアに行こうとされていると思うんですが。
- 久美子
- 絶対に戻るつもりでは、います。
- ──
- でも今もまだちょっと身体は痛いですか？
- 久美子
- 痛いこともあるし、
あとは線維筋痛症の病気の種類的にも、
自律神経がすごく乱れやすいものなので。
そこを今一生懸命整えて、不安定じゃなくして、
安定させられるようになるまでは、
週一休みのあの世界へは、
絶対に戻れないなっていう状態なので、
そこをクリアしたら戻ります。
- ──
- 30歳という節目の歳に、
感じていることはありますか？
- 久美子
- バレエに関しては、ダンサーの寿命は短くて、
周りのダンサーを見ていても、
すごくよく踊れるのって35〜37歳‥‥、
本当にフルでパーンと踊れる期間って、
40歳手前ぐらいまでだと思うんですね。 - そういう意味で言ったら、タイムリミットがある中で、
どんどん迫っている感覚ではあるんですけど、
日本に帰ってきて、いろんなダンサーを見たり、
たくさんの問題を抱えている子たちを見たりしていく中で、
自分の中で今すごく
「踊りってこういうものなんだ」っていうのが
整理されてきています。 - コロナになる前の状態より絶対今のほうが、
いい踊りができるっていう自信がすごくあります。
身体も、よくなってきているし、
節目で思うこと、というのは意外にないかもしれません。
- ──
- 最初に入って来られてから、
今に至るまで、終始、美しいですよね。
- 久美子
- 褒めすぎ（笑）。
- ──
- 美しさについては、
常に考えていらっしゃるんでしょうか？
どういう風に立ったら、どういう角度でいたら、
美しくみられるかということについて、
常に意識していることなのか、考え抜いて、
その意識を無意識化させるところまでいっているのか、
知りたいです。
- 久美子
- 完全に無意識かと聞かれたら、
「無意識じゃない」が答えかもしれません。
人に見られていない、おうちだと
ダラけることもあります。 - でもやっぱり舞台でそんなことはしないし、
誰かに見られているときは、
職業柄、基本的にはパッと美しい姿勢でいる、という
スイッチが入るって感じですね。
- ──
- ご自身にとっての美しさって
何だと思いますか？
- 久美子
- バレエ的な意味でいうと
「しなやかなライン」です。
細い線の中に、しなやかさがあることを
美しいと思っています。
- ──
- 人として、美しいとは？
- 久美子
- うーん‥‥。
私は、わりと誰かのために
何かをするのが好きな人間なんですけど、
誰かのために、何かをしてあげるためには、
自分がブラッシュアップできている人間じゃないと、
いいものは渡せないんです。誰かのためにならないから。 - そのために自分をブラッシュアップして、
いいものが提供できた結果として、
誰かが喜んでくれるという永遠のサイクルができることが、
私のしあわせです。 - そして自分の心が健康であることで、
それが表面に出て、明るさに変わっていく気がします。 - だから美しさってカタチではないけれど、
なんか、そうやって
「あ、この人って、こうやって生きてるんだな」
という生き方そのものが、ひとつの美しさだと思いますね。
（おわります）
2025-03-10-MON
-
取材のあとに、久美子さんのイベントに参加して
胸椎伸展（きょうついしんてん）を体験してきました。
正直、10分なのに、とってもヘトヘトに。
久美子さんに無理はしなくていいけれど、
毎日やると美しくなれますよと言われたものの、
自分に甘い私は毎日続けられず、
気が向いたときだけ、このストレッチをすることに。
しばらくして背中のチャックがかたくて、
ひとりで着られなかったワンピースを
どうしても着たくて挑戦してみたら、
スッと着ることができました。
肩周りの可動域が広がったようです。
お試しされる方は
無理せず続けてみるのもいいかもしれません。
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