
9つの音を組み合わせて、
じぶん好みの環境音がつくれる
無料のウェブツール『ラクノオト』が、
またたく間に多くの人の心をつかみました。
このツールを開発したのは、
グラフィックデザイナーのトミナガハルキさん。
じつはこの方、『ラクノオト』だけじゃなく、
これまでいくつもヒットを飛ばしている、
知る人ぞ知る、ちょっとすごい方だったんです。
しかも、その自作ツールのほとんどを、
じぶんでコードを書かずにAIでつくっているとか。
1年ほど前から独学ではじめ、
いまでは100個以上のツールをつくり、
そのほとんどを無料公開しているそうです。
いったい、この方、何者なんでしょうか‥‥。
ご本人にオンラインで直撃してみました。
担当は、イマコレキニジャーナルの稲崎です。
トミナガハルキ
デザイン事務所AMIX 代表 /
グラフィックデザイナー
外国語大学在学中に、
突如グラフィックデザイナーを志す。
独学でIllustratorとPhotoshopを学び、
パッケージ製造メーカーへデザイナーとして入社。
その後、3つの企業でデザイナーや
広報チームの運営などを経験した後、独立。
「デザイン事務所AMIX」を立ち上げる。
主にポスターやパンフレットなど、
紙媒体のグラフィックデザインを得意とする。
2025年4月からウェブツールづくりにハマり、
現在は100個以上を無料で公開。
『かがやきメーカー』『ガビビ』『ラクノオト』など、
SNSでも大きな話題になっている。
著書に
『#ズボラPhotoshop 知識いらずの絶品3分デザイン』。
ラクノオト
『ラクノオト』とは、
雨音・ブラウンノイズ・ホワイトノイズ・
川のせせらぎ・街の音・焚き火・波打ち際など、
9種類の環境音を自由にミックスして
シームレスにループ再生できる
アンビエントサウンドツールです。
#02
『ラクノオト』ができるまで
- ──
- 『ラクノオト』のアイデアは、
どんなときに思いついたんですか?
自分がADHDグレーで、落ち着ける音がほしくて作った「ラクノオト」を公開しました。雨音やノイズを自由に混ぜて、自分だけの環境音が作れます。…これは本当に作ってよかった。自分の脳(心?)が静かになる感覚があります。https://t.co/XRRuO0PHwm pic.twitter.com/IkRhMRnrY0
— トミナガハルキ | フリーランス歴10年な人 (@asobodesign) March 10, 2026
- トミナガ
- いまフリーの環境音って、
YouTubeでもいっぱい聴けるんですけど、
じぶん好みのものを探すだけで
30分くらい時間が経っていたりするんです。
「いまの時間で仕事できたやん」みたいな。
- ──
- わかります(笑)。
- トミナガ
- そんなのに時間を使うくらいなら、
じぶんで音がカスタムできたらいいなって。
まずはそれがきっかけですね、
試しにプロトタイプをつくってみたら、
「けっこういいかも」というのができて、
音をちまちまカスタムするのって
ゲーム性もあっておもしろいかもって。
そこでちゃんとつくってみようと思ってできたのが、
あの『ラクノオト』なんです。
- ──
- アイデアが思いついてからリリースまで、
どれくらいの時間がかかっているんですか。
- トミナガ
- 『ラクノオト』は他よりけっこうかかっていて‥‥
たぶん1週間ぐらい?
- ──
- アイデア出しから1週間ですか?
- トミナガ
- それくらいですね。
もちろん昼間は別の仕事があるので、
帰ってからちょこちょこ作業してって感じで。
- ──
- すごいスピード感ですね。
収録されている音はどうしたんですか?
- トミナガ
- あれは商用利用できる音源を使っています。
元の音源は1~2分くらいなんですが、
環境を録音したもの(サウンドスケープ)なので
そのままだとぷつっと切れて、
きれいにループしてくれないんです。
それがすごく嫌だったので、
自然にループさせるための別のツールを開発して、
それで音源をつくりました。
- ──
- 音源専用のツールをつくって‥‥。
- トミナガ
- そのループ専用のツールをつくるのに、
また1日くらいかかったんですよね。
それがなかったらもっと早かったと思います。
- ──
- たしかに、ずっと聴いていても
ループの境目はぜんぜんわからなかったです。
- トミナガ
- 『ラクノオト』はそこがけっこう肝です。
というのも、ぼく自身が
境目にすごく敏感なタイプなので、
気持ちよくつながるようにしたかったんです。
- ──
- じぶんのためにつくったツールですもんね。
- トミナガ
- ツールの仕組みはすぐできたんですけど、
テストで使っているときに、
「あ、この音は気持ちよくない」って思っちゃって。
それを解消する方法をけっこう考えました。
- ──
- そういうのもAIといっしょに考えるんですか。
- トミナガ
- AIに相談しながらですね。
そのツールも無料で公開してますよ。
『ラクノオト』のための裏ツールなので、
味気ないデザインですけど。
- ──
- いまの「境目」の話もそうですけど、
トミナガさんがつくるツールって、
そういう心地よさを大事にしてますよね。
- トミナガ
- それは、やっぱりじぶんが使うからで、
気持ちよくないものは使いたくないので。
- ──
- 『ラクノオト』は音の質もいいんですよね。
派手すぎず、かといって、無機質すぎず。
最初、音も自作したのかと思っていました。
- トミナガ
- AI生成も試してみたんですけど、
やっぱり音がちょっとキレイすぎたんです。
澱みがないというか。
あと、録音素材のなかでも、
最近録音されたものとかじゃなく、
2010年代のちょっと古いものにしました。
ちょっとノイズがあっていいんですよね。
- ──
- そこにもトミナガさんの好みが
入っているんですね。
- トミナガ
- YouTubeにアップされている環境音って、
やっぱりそこがイマイチなんです。
ハイクオリティすぎるというか。
実際に海に行ったり、川のそばを歩くときって、
もっとノイズがあって、
ザワザワいろんな音があるはずで。
そういうのがなくなると、
やっぱり環境音としては不自然なんだと思います。
- ──
- そういう感覚的な判断って、
最後は人間がするしかなさそうですね。
- トミナガ
- 実際に耳で聴かないとわからないですね。
なので仕事をしながらずっと聴いて、
「あ、これなら聴いていられるかも」という音を、
『ラクノオト』では使っています。
原則としては「じぶんのため」なので、
そういう選ぶ作業もけっこうおもしろいです。
- ──
- 『ラクノオト』の機能のひとつに、
「誰かのつくった音が聴ける」というがありますけど、
あのアイデア、すごくいいですね。
「ラクノオト」に新機能!今聴いている世界の誰かと同期できる機能を追加しました。お礼は同期した相手に届きます。誰かも分からない、いいねの数も表示されない。でも繋がりはある。ドーパミンや承認欲求とは離れた、ささやか交流機能です。 https://t.co/OGX0wEreFe pic.twitter.com/cYjthBByte
— トミナガハルキ | フリーランス歴10年な人 (@asobodesign) March 14, 2026
- トミナガ
- 小島秀夫さんが制作した
『デス・ストランディング』というゲームがあって、
それがすごく好きなんですね。
依頼された荷物を受取人まで届けるっていうゲームで。
じつはちょっとあれの影響もあって。
- ──
- そうなんですか?
- トミナガ
- あのゲームって、
他のプレイヤーは直接出てこないんです。
でも、みんなでフィールドを共有しているので、
他の人が通ったであろう道は、
獣道みたいにちょっと歩きやすくなっていたり、
誰かがハシゴをつくってくれたおかげで、
上に登れるようになっていたりするんです。
他のプレイヤーは出てこないけど、
その残り香的なものは共有されるという。
- ──
- へぇー、おもしろそう!
- トミナガ
- で、そのゲームは他のプレイヤーに対して
「ありがとう」が言えるんです。
誰かはわからないけど、
「ハシゴをかけてくれてありがとう」みたいに、
「いいね」が押せる仕組みがあるんです。
- ──
- あ、なるほど。
『ラクノオト』の「ありがとうを伝える」に似てますね。
- トミナガ
- ああいうゆるいつながり方が、
ぼくはけっこう好きなんです。
「誰かがいいねしました」だと、ちょっとしんどい。
そういうゆるい感覚を
『ラクノオト』にも取り入れてみようかなって。
- ──
- そのアイデアは、
リリースした後に思いついたんですか?
- トミナガ
- リリース後です。
Xのコメントのなかに
「シャッフル再生機能がほしい」というのがあって、
どうやったらおもしろくできるだろうって
考えていたときに思いつきました。
- ──
- シャフル機能が最初なんですね。
おもしろいなぁ(笑)。
- トミナガ
- というのも、『ラクノオト』を使って、
音をがんばって調整してくれた人がたくさんいるわけで、
そういう「みんなのベスト」を共有できたら、
おもしろいなって思っていたんです。
でも、それって人のものを奪うことにもなるので、
じゃあ「ありがとう」を伝える仕組みを
入れたらみようかなって。
(つづきます)
2026-04-01-WED