• 突然ですが、なんとなんと、
    「ほぼの駅 AKAGI」の山バッチができました!
    ぱちぱちぱちぱち~。
    (実はすでに完成して、現地では販売をはじめています)

    「山バッチ」って知っていますか?
    登山記念バッチとも呼ばれる、
    山小屋などで販売している、金属製のバッチ。
    それぞれの山に登った思い出として、
    鞄につけたり、部屋に飾ったりなどして、
    昔から山が好きな人たちに愛されてきたものです。

    まさに「山のお土産といえば?」のアイテムで、
    実際にお問い合わせも多く、
    「ほぼの駅AKAGI」でも作れたらと思っていたのですが、
    調べてみるとなんと、ご近所の高崎に、
    日本でいちばん山バッチを多く手掛けている
    会社さんがあることがわかりました。

    それが、50年以上の歴史のある、
    山バッチの高崎金属工芸さん。
    山登りがライフワークだった前社長の
    清水澄雄さんの理念を引き継ぎ、
    現代表の清水篤司さんが、山バッチを中心とした
    たくさんのオリジナル商品を製作されています。

    小ロットでも作ってくださるとのことで、
    より魅力的になるポイントなどを教わりながら、
    今回、「ほぼの駅AKAGI」の山バッチを
    一緒に作らせていただきました。

    そして完成したものが、こちら!

    ▲「ほぼの駅 AKAGI」山バッチ(税込990円)

    なんと、名物のおおきなソフトクリーム入り。
    つやつやした白い色がおいしそう。

    中央には大きく「赤城山」の文字が入り、
    こちらは渋い色合いがいい感じ。
    そばには「標高 1828m」の表示。
    まわりを囲む山々は、上毛かるたの句
    「裾野は長し、赤城山」を思い起こさせます。
    奥には赤い三角屋根の施設の絵、
    「ほぼの駅 AKAGI」と入った旗もそばに。

    色は白、金、赤がアクセントに入っているのみですが、
    実はこんなふうに色数を絞ったところもポイント。
    この山バッチは「銀いぶし加工」で
    製作しているものですが、
    ある程度、色数を抑えたほうが
    印象的な見た目になりやすいとのことで、
    こんなデザインになりました。

    実物ものすごく、いいのです。
    ソフトクリームや赤い建物のかわいさと、
    いぶし加工による陰影の
    黒っぽい部分とぴかぴかしたところの
    渋い雰囲気がポイントです。

    リュックなどにちょんとつけると、
    さりげなく「行ってきたよ!」という感じが出て、
    ちょっと嬉しい気分になります。
    また山バッチは、布に並べてつけて、
    部屋に飾る人もいるそうですが、
    そんなたのしみ方でもぜひ。

    そしてこの山バッチは、赤城山の頂上エリアにある
    「ほぼの駅 AKAGI」のみでの販売です。

    というのも、山バッチはそもそも
    「登頂記念バッチ」とも言われるように、
    「その場所を訪れた印」としての意味合いが強いもの。
    行かないと買えないのが嬉しさでもあるので、
    製造されている高崎金属工芸さんのほうでも、
    基本的に「現地の山小屋のみでの販売」にして、
    山バッチの文化を守ってこられているとか。

    ですので、こちらの山バッチも現地限定。
    ぜひ、「ほぼの駅 AKAGI」を
    訪れるきっかけにしてください。

    また、あわせて知っていただきたいのが、
    実は山バッチ、高崎金属工芸の清水さんとしては
    「たぶん自分の代で終わりだと思う」とのこと。

    型職人の方、プレス屋さんやメッキ屋さんなど、
    製造に関わられている工場の方々が、
    高齢化などにより廃業される方が多いのだそうです。
    清水さんも、自らあちこち動き回って、
    お願いできる工場を探されているそうですが、
    高齢の社長さんがいちばんの技術者だったり、
    単価が安かったり、人手不足だったり、
    あたらしい仕事を受けられなかったりで、
    なかなか難しいところがあるのだそうです。

    ですので、少しでも「山バッチ」の文化が
    長く続いていくためにも、
    ひとまずいま、多くの方に山バッチについて
    興味を持ってもらうことがとても大事。
    清水さんも、取材などがあればできるだけ
    受けようとされているそうです。

    なので、このページについても、
    「ほぼの駅 AKAGI」の山バッチのことを
    知っていただくとともに、
    「山バッチ」という素敵な文化に興味を持つ
    きっかけにしていただけたら、とても嬉しいです。
    もしかしたらいましか手に入らない
    貴重なものでもありますので、ぜひあちこちの
    山小屋に行かれたら、記念に買ってみてください。

    さて、高崎金属工芸さんの工房を訪れた、
    「ほぼの駅 AKAGI」チームの我々、
    実際の制作方法や、これまで作られてきた
    たくさんのバッチについても見せていただきました。

    ▲指示書はこんなふう(いろんなパターンがあります)。
    山小屋の方から伝えられたイメージをもとに、
    高崎金属工芸さんが長年の経験をもとに
    アドバイスをし、一緒に仕上げていきます。

    ▲こちらは金型。バッチの印象をつくる
    なにより大事な部分が「彫り」なんだとか。

    ▲型を使って、こんなふうに金属を打ち抜きます。

    ▲色つけの作業。ひとつずつ手で色を入れます。

    ▲いまは、昔ながらの「銀いぶし加工」のほかに、
    デザインの自由度の高い「疑似七宝」タイプの
    山バッチも作られているとか。どちらもかわいい!

    ▲できあがった山バッチは山小屋さんに届けられ、
    販売されます。
    駄菓子屋のお菓子のように売ったり、
    カプセルトイの機械で販売したりするところも。

    ▲高崎金属工芸さんでこれまで作られた
    山バッチは、3000種類以上!
    北海道の朝日岳から、九州・宮崎の祖母山まで、
    全国各地の山バッチを作られています。

    ▲富士山や槍ヶ岳など、人気の山だと
    いろんな種類が作られていたりもします。
    山に登るたびに、ひとつずつ買うのも嬉しい。

    ▲サイズは30ミリくらいがスタンダード。
    ひとつでも、たくさんでも、とてもかわいい。

    ▲ホテルの周年記念で販売されたものや、
    映画の小道具として作られたものなども。
    コレクション魂をくすぐります。

    工房には、製作前の打ち合わせでお邪魔したのですが、
    実物の山バッチをたくさん見せていただき
    「なんてかわいい‥‥!」
    「まず作るのは、銀いぶし加工かな。
    でもポップな疑似七宝のものもあったら嬉しいかも」
    など、みんなで非常に盛り上がって帰りました。

    そんなふうにして生まれたほぼの駅の山バッチ、
    まずは銀いぶし加工のものをひとつ作りまして、
    ただいま「ほぼの駅 AKAGI」のSHOPで販売中です。
    訪れた際に、ぜひチェックしてみてくださいね。

    高崎金属工芸のはじまり

    バッチの色塗りをしている清水さん

    先代の亡くなった親父が山が大好きで、
    遊びで山小屋を訪れたときに山バッチがあるのを見て
    「自分も作れるからやらせてくれないか」
    「じゃあ、次来るときにもってこい」
    みたいに置かせてもらったのが、はじまりのようです。
    リュックに入れて出かけていって、
    売れたら注文をくれる、という形でやっていて。

    そこからだんだん口コミで、
    「遊びに来るやつで、バッチを持ってくるやつがいる」
    ということから、
    「うちでも作りたいんだけど」「じゃあ紹介してやる」
    みたいに広まっていったみたいです。
    山小屋さんって横のつながりがあるから。

    その後、いわゆる観光地ブームで
    キーホルダーやペナントなどのおみやげも
    つくるようになっていったんですけど、
    もともと山バッチからはじまってるし、
    長くやってるから、山バッチを作りたい人が
    「ここで作るのがいいかな」みたいに注文してくれて、
    山バッチの会社になっていったような感じです。

    山バッチって、どう作る?

    バッチの色塗りをしている清水さん

    まずは、図案作りからはじまります。
    いまはみなさんIllustratorのデータで送ってくれるけど、
    昔は山小屋の人が絵を描いたり、
    絵柄のコピーを切り貼りしたようなものから、
    うちで「ここはこうしたほうがいいですよ」などと
    アドバイスしながらつくることが多かったですね。

    山の写真を送ってもらうことも多くて、
    それは、ただの線だと立体感が出ないからですね。
    彫り方で陰影をつけたりするんですけど、
    写真があると「ここは深めに」とか
    「ここは道だから色の段差をつけてほしい」とか
    それぞれの山の感じを出しやすくなるんです。

    そのとき、山のかっこよさって、
    登山する人の感覚なんです。
    だから、山って切り取り方でかっこよさが
    すごく変わるんですけど、お客さんのイメージに
    できるだけ沿うように図案を作りたいわけです。

    そのときうちの父は、趣味でしょっちゅう山に登っていたので、
    お客さんの気持ちがわかったみたいです。
    「登るときに見えるあの景色を入れたいんだな」とかって。
    それでたぶん、ほかの徽章業者(社章や高章製作社)の方
    よりも感覚が伝わって話も早いし、
    うちに注文が来るようになったのかなと思います。

    私自身は、山登りが趣味ではないけれど、
    実際に山小屋さんと打ち合わせしたり
    仕事をしながら身につけた感覚とか経験から、
    できるだけ登る人の気持ちに沿うように
    バッチを作れたらと思っていますよね。

    以前は行ったことがない山の情報は
    集めるのに苦労していましたが、
    今はSNSで情報を集められるので、
    前よりだいぶ作りやすくなりました。

    登頂した!という意味合いで

    いろんな山バッチが並んでいる

    山バッチの条件?
    うーん、そんなにない気がしますけど(笑)、
    「標高」は入っているほうが喜ばれますよね。
    昔はけっこう、いい加減なものをありましたけど、
    いまは国土地理院の地図がほぼ100%正しいので、
    その数字を入れる事が多いです。

    山って登ると達成感があるし、山バッチって
    「私はここまで登りましたよ」の意味合いで
    買われるんだと思うんです。
    登山の証というか一種の「勲章」ですかね。
    特に富士山はみなさんが知ってる標高なので、
    標高明記は必須です。

    これは私見ですが、
    登山は余暇や趣味、旅行の延長として
    欧州から明治以降に日本に入り、
    また国家事業として三角点等の測量を
    軍隊が行うことが民間にも知られることで
    大衆に広まっていったかと思います。
    さらに大正、昭和初期は富裕層や文化人の多くが
    登山を楽しみはじめていたし、
    もともと日本には山岳信仰は幅広く根付いていたので、
    レジャーの一部として受け入れやすかったと思います。
    欧州の記念品と軍事行動における勲章、
    そして日本のお土産文化がMIXして根付いたのが、
    現在の「山バッチ」として
    広がったのではないかなと思っています。

    山小屋の収入増は安全にもつながる

    作業台に座っている清水さん

    山バッチは山小屋さんにとっては
    重要な販売収入かもしれませんね。
    自分の山の宣伝にもなるし、
    購入した登山者の思い出にも残る。
    山小屋の限られた販売スペースや
    荷揚げ重量を考えてもコンパクトで扱いやすいですから。

    日本のほとんどの山小屋を含む登山観光地は
    ゴールデンウィークあたりから9月頃までを
    限定期間運営する季節産業です。
    冬は雪深いとこが多いので閉鎖されてしまうので。
    また山小屋は小屋の運営に限らず、
    登山客の安全という意味で、
    標識や登山道の管理、安全情報のお知らせとかを
    積極に行っています
    (県や国の指定管理者になっている場合もあります)。

    その意味でも、山バッチ販売だけでなく、
    山小屋や山岳観光地の収入が増えれば
    山の管理も向上すると思います。
    「山小屋さんや山岳観光地の収入増は
    みなさんの安全に寄与している」というのも、
    もっと広く知ってもらえるといいですよね。

    山は思い通りにならなさが面白い

    作業台に座っている清水さん

    なにより山登り自体の魅力も、
    もっと広く知られていったらいいですよね。

    私が山にいくのはほぼ仕事だけど、
    登る人の気持ちはよくわかります。
    仕事等の悩みがあっても山へ行く自然の壮大さに
    世の中の些細な悩みごとなんて忘れさせてくれますから。
    なにをくよくよしているんだと。

    そして登山は自分の体だけが頼りです。
    どんなにお金積んでも誰も頂上まで運んでくれませんし、
    下山もさせてくれません。
    頂上でタクシーは待っていませんから。
    雨が降ればもう登れないし、そこで無理すれば遭難する。
    下界ではお金の力で解決できることが多々ありますが、
    山では思い通りにならない。
    登山は誰もが楽しめるし、また厳しくもある、
    つまり山(自然)は平等なんですよ。
    それが面白いんじゃないかな。

    あと、装備さえ揃えれば交通費だけだし、
    同じ場所を何回も楽しめますからね。
    今度はあっちから、次はこっちから、
    春に、秋に、冬にちょっと雪があるときに
    行ってみよう、とかって。
    地図を広げれば日本全部が
    山岳観光地ってことがわかります。

    赤城山もいいですよね。
    東京から車で1時間ちょっとだし、
    日帰りできるし、思った以上に行きやすい。
    みなさんの施設ができたことをきっかけに、
    また、出かける人が増えるといいなと思いますけどね。

    山バッチの展示?
    何度か軽い気持ちで企画したことあるんですけど、
    事前の告知の段階で
    「ここで買えないんですか?」っていう
    問い合わせも多すぎたし、
    詳しいコレクターの人の要望が多すぎて
    なんども挫折しています。
    いつかきちんと整理してやってみたいですね。

    この山バッチの製造も
    ずっと続けられるかどうかわからないから、
    今年あたりから、これまで製造してきたものを
    ナンバリングして、きちんと資料として
    残していくことも考えはじめていますね。
    ひとまず、いろんな人に山バッチについて、
    より興味を持ってもらえたらと思うんですけど。

    (おわります)