
制作に4年をかけた、福森道歩さんの「ごはん釜」。
人気作家として作陶をつづけ、新作を発表し、
料理家としても活躍している道歩さんは、
江戸時代から続く伊賀の窯元「土楽」の当主でもあります。
それだけに、このあたらしい土鍋「ごはん釜」の制作には、
ひときわ力が入ったといいます。
ごはんを炊くのに最適のまるい形、
圧力をかけるための重さのある蓋、
ふきこぼれをすくなくするくふう、
そして、重石にもなり、鍋敷きにもなるという
付属のドーナツ型陶器。
土楽が長くつくっている「織部釜」(羽釜)の
いいところを継承しながら、現代の暮らしにあう
あたらしいごはん釜ができました。
「生活のたのしみ展2025」で先行販売した
このごはん釜を、「ほぼ日ストア」で販売します。
ごはん釜(2合炊き)
16,500円(税込)
ごはん釜(3合炊き)
22,000円(税込)
2025年5月1日(木)午前11時に販売を開始した
「ごはん釜」(2合炊き/3合炊き)ですが、
販売開始から20分ほど、
「お買い物はこちら」のページに掲載されないままでおりました。
お買い物をたのしみにお待ちいただいたみなさまに
ご不便をおかけしましたこと、お詫びいたします。
その後、お買いものができるようになっておりますが、
一部のお客さまより、いまだ掲載されていないというお声をいただいています。
スマートフォンで「ほぼ日」アプリをお使いのかたは、
右上のリロードマークを押して再読み込みをしていただくか、
アプリからではなくお持ちのwebブラウザから
アクセスをしていただけますと、表示ができるかと存じます。
それでもごらんいただけない場合、
また、PCのwebブラウザをお使いで、ごらんいただけない場合は、
キャッシュクリアをお願いいたします。
キャッシュクリアの方法は、ブラウザによって異なるため、
お使いのブラウザ名と、キャッシュクリアという
キーワードで検索をしていただけますようお願いいたします。
ご不便をおかけして、たいへん申し訳なく思います。
ご質問などございましたら、
「postman@1101.com」まで、お問い合わせください。
どうぞよろしくお願いいたします。
(5月2日 土鍋チーム追記)
-
土楽が長く作り続けているごはん専用の土鍋「織部釜」。
昔ながらの羽釜のかたちは、
日本料理店で業務用として、
また家庭でも愛用するひとの多いロングセラーです。もちろん「ほぼ日」でおなじみ
「うちの土鍋シリーズ」の「ベア」鍋でも
ごはんを炊くことはできます。
けれども「ベア」ひとつだと、
鍋ものをつくるとき、
同時にごはんを炊くことができません。
福森道歩さんがあたらしい「ごはん釜」をつくりたい、
と考えた理由のひとつには、
「うちの土鍋」シリーズの仲間の
ごはん専用の土鍋がほしい、
ということもあったのでした。釜を球状にちかく。
まず内側のかたち。
織部釜(羽釜)は断面が「U」の字のかたちですが、
この「ごはん釜」は内側が球体に近くなっています。
いわば「C」の字を90度左に倒したよう。
米粒が釜の中で踊るよう、
沸騰させて対流ができるようにという考えです。
羽をすこしだけ上向きに。
そして、ふきこぼれ問題。
かまどを使っていた時代、
羽釜の羽の部分は、
穴から釜が落ちないようにするとともに、
ふきこぼれを受け止める役割がありました。
つまりむかしから、土鍋で炊くごはんは、
「ふきこぼれるのがあたりまえ」だったのですが、
現代のキッチンでは、
できれば、あまりふきこぼれないでほしいもの。
ガス台のクックトップは
できるだけきれいにしておきたいですものね。
そこで道歩さんは、
羽の形状をすこし上向きに窪ませることで、
ふきこぼれが留まるようにしました。
重たい陶製の蓋
蓋についても考えました。
織部釜の蓋は、厚い木製ですが、
今回のごはん釜は、釜本体とおなじ陶製。
厚みをもたせて重さを確保していますが、
うっかり手を滑らせて落として欠けることが少ないよう、
落としにくい持ち手にしています。
蓋は陶製、しかも重く。
そして、釜と蓋の組み合わせかたについても
道歩さんは発想の転換をおこないました。
織部釜は「のせる」蓋でしたが、
このごはん釜は、内側に落とし込むスタイル。
内側にひっかかりをつくることで
蓋が中まで落ちないようになっています。
多少のふきこぼれも、内側で受け止められ、
外にあふれでにくい構造です。
蓋の上に「重石」を。
さらにそれを「鍋敷き」に。加熱時にしっかりと内側に圧力がかかるように、
この蓋はかなり厚くつくっているのですが、
道歩さんは「さらに」と考えました。
じつは道歩さん、織部釜でごはんを炊くときには、
木の蓋の上に漬物石をのせているんです。
そこでこのあたらしいごはん釜では、
蓋の上にのせるドーナツ型の陶製の
「重石」をつくりました。
その「重石」は、炊き上がって、
すこし蒸らしたあとは、外して、鍋敷きとして使えます。
重石と鍋敷きの兼用なので名前は「共蓋重石」、
「(重石敷)おもしき」と名づけました。
この発想、じっさいに使ってみるととても良かったので、
土楽のほかの羽釜にも応用しはじめているんだそうです。
3点で1セットです。
釜、蓋、重石敷、この3点がセットになっているのが、
あたらしい「ごはん釜」です。
サイズは2種類、小さいほうが2合炊き、
大きいほうが3合炊きです。
使う前の準備は1日かけて。
お求めになったら、使う前に「目どめ」をしてください。
別鍋に水を入れ(分量は、土鍋の容量の8分目くらい)、
生米か、家で炊いたごはんをひとつかみ入れ、
白濁した「おかゆ」状態になるまでコトコト煮ます
(お米のとぎ汁を使ってもいいですよ)。
それを、水洗いをしてよく乾かしたごはん釜に入れ、
弱~中火にかけ、
沸騰したら弱火で1時間ほどコトコト炊いて、
火を止め、ひと晩置いておきます。
そのあとは洗ってよく乾かせば準備完了です。
おいしく炊くには。
炊くときは、洗って乾かしたごはん釜に、
研いで浸水させた米と適量の水を入れて弱火にかけます。
羽の部分まであたたまったら中~強火にして、
いちど、きちんと沸騰させます。
沸騰まで、火をつけてから十数分かかりますが、
ちゃんと沸点に達しないと
内側でお米の対流が起こらないので、
蒸気が出て吹きこぼれるくらいまで加熱してください。そのあとはごく弱火にして10分ほど炊き、
火を止めて5分ほど蒸らせば炊き上がりです。
炊いたごはんは、釜に残したままにせず、
おひつなどに移してくださいね。
道歩さんと円さんの
いろいろなごはん。ここからは、道歩さんと、姉の柏木円さんによる
「ごはん釜」をつかった料理をご紹介します。
こまかなレシピはありませんが、
どうぞ料理のヒントになさってくださいね。玄米も炊けます。これは2合炊き。半日ほどしっかり浸水させてから、1.5倍の水の量で、塩をひとつまみ加えて火にかけ、ご飯を炊く要領で沸騰したらごく弱火で30分ほど(蓋をあけて様子を見てください)炊きます。蒸らし時間は10分です。

お赤飯や具材のあるごはんは、3合炊きで2合を炊くとちょうどいいですよ。
3合炊きで、マッシュルームごはん。炊き上げたごはんに、火を止めてすぐ生のマッシュルームの薄切りとバターを加えて蒸らします。食べるときに、黒胡椒とパルジャミーノ(粉チーズ)をかけて。


円さん作、茗荷の混ぜご飯。レシピは円さんの著書『まどかの台所』をご参照ください。
帆立バター醤油ごはん。これも炊き上がったごはんに、生の(お刺身用の)帆立の貝柱を適宜、バターをひとかけ入れて蒸します。仕上げにおしょうゆをひとまわしして、全体を混ぜればできあがり。帆立はレアなので、食べ切ってくださいね。食べ切れない場合は、焼いてほぐした帆立でも。


中途半端なものは出したくない、
と、道歩さんが4年をかけて考え、
試行錯誤し、完成したこの「ごはん釜」。
ふきこぼれないように、
そしてしっかり内部に圧力がかかるよう、
さらに沸騰時にお米が対流をおこすよう、
蓋を落とし込み、重石をつくり、
本体を球体に近づける、というアイデアが、
このスタイルに結実しました。
「土楽らしさ」も継承した、あたらしいデザインで
道歩さんのつくった「ごはん釜」です。