母は10年前に癌になり、
抗がん剤の治療の副作用で
髪が抜け始めた。

髪がとても綺麗で
ヘアのお洒落も抜かりなく、
いつもファッションを楽しんでいた母が
それまでの治療で痛みや辛さからも
弱音を吐かず、
心配なくらい前向きに頑張っていたのだが
「髪がたくさん抜けちゃうの、
もうだめかな‥‥。」
と連絡がきた。

それから、
柔らかくてチクチクしない帽子、
病気の影響で
被らないといけないものではなく、
被りたくなるような
素敵な帽子を見つけるのが
私の出来る1番の贈りもの、
探すことが大切な親孝行の
１つとなった。

帽子のお洒落も楽しいね、
と笑顔で話す今がある。
あの時はお互い辛かったけれど、
被りたくなる帽子があれば
また生きてみようかなぁ、
お洒落を楽しめる気持ちを
思い出して貰えたら
髪がまた生えてくる時まで
素敵な帽子が母を守ってくれるかしらと、
探したあの時間、出会えた帽子、
贈る時の気持ちが忘れられず大事な記憶。

そんな贈りものが出来て、
贈りものに助けられた思い出があります。
（ｍ）