「ほぼ日の贈りものマルシェ」
アンケートを実施した際、
みなさんの心に残る贈りもののエピソードも
おしえていただきました。

すると、とてもすてきなエピソードが
たくさん集まったんです。
家族との忘れられない思い出や
びっくりしたプレゼント、
まただれかへの贈りものを考えるときに
ヒントになるようなお話も。

そこで毎日ひとつずつ、
できるだけたくさんご紹介することにしました。
たぶん、1年くらい?
どうぞ、おたのしみください。

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episode

010

わが家のひとり娘は、
生まれたときから両親や
双方の親たちまでもが
プレゼント攻勢をかけてくる、
いわゆる「シックス・ポケット」で、
オモチャにも本にも
不自由することなく育ちました。

生まれつき障害があって体が弱いけど、
みんなして甘やかしざんまいなので
さぞワガママな子になるのでは、
と警戒していたけど、逆に物欲ゼロ!

お友達たちがオモチャやゲームで
遊びたおしていたって
ニコニコしているような、
どこか甲斐のない幼少時代でした。

成長してからは周囲の女の子たちが
「母の日のプレゼント」だ
「ママのおたんじょうびに」だと
可愛らしいプレゼントを
し合っているというのに、
彼女だけはわたしに
なにもくれませんでした。

まあそういうもんか、
わたしも親にプレゼントをあげる習慣は
なかったしなあと
気にもとめないでいるうち、
彼女は無事に大学へ入学し、
あるとき座ったままできる
占い師のバイトをはじめました。

それまで体が弱いがために
バイトはできなかった彼女が、
自分の才覚ではじめたタロット占いで
お金をもらえるようになった、
というのが親バカなわれわれには
驚きでもあり、喜びでもありました。

そんなある日、
彼女がわたしに
「ん」と手渡してきた包み。
「なあに?」
デパートで買ってきたらしい、
ちゃんとした包装の化粧水でした。

クリスマスでも誕生日でもないし、
そもそもアンタから
なにももらったこともないしーーと、
わたしは慌ててあれこれ考えました。

「バイト代が出たから、それあげる」
クールな「わたしの赤ちゃん」は
むっすりした顔のままで
そう言いました。

彼女はこれまで
おじいちゃん、おばあちゃんや
われわれ両親に
おこづかいをもらったり
プレゼントをもらったりして
大きくなってきたのですが、
「もらったお金で、
ママやおばあちゃんに
プレゼントを買うのは
違う気がしていたので贈らなかった」
そういうことか!

その後社会人になった娘は、
ことあるごとに両親やおばあちゃんに
プレゼントをしてくれます。

いいのに、と遠慮しても、
彼女は「感謝の意を表している」と
クールに答えます。

愛情表現の少ない子に思えていたけど、
表現はいろいろなんだなと
思うことであります。
(a)

2023-03-03-FRI

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