家で過ごすことが増えたいま、
充電のために時間をつかいたいと
思っていらっしゃる方が
増えているのではないかと思います。
そんなときのオススメはもちろん、
ほぼ日の学校 オンライン・クラスですが、
それ以外にも読書や映画鑑賞の
幅を広げてみたいとお考えの方は
少なくないと思います。
本の虫である学校長が読んでいる本は
「ほぼ日の学校長だより」
いつもご覧いただいている通りですが、
学校長の他にも、学校チームには
本好き・映画好きが集まっています。

オンライン・クラスの補助線になるような本、
まだ講座にはなっていないけれど、
一度は読みたい、読み返したい古典名作、
お子様といっしょに楽しみたい映画や絵本、
気分転換に読みたいエンターテインメントなど
さまざまな作品をご紹介していきたいと思っています。
「なんかおもしろいものないかなー」と思ったときの
参考にしていただけたら幸いです。
学校チームのメンバーが
それぞれオススメの作品を
不定期に更新していきます。
どうぞよろしくおつきあいください。

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no.1

『モノ申す人類学』長谷川眞理子

読んでから、歩く。
散歩とセットでオススメしたい。


『モノ申す人類学』
長谷川眞理子(青土社 1760円)

天気予報で「今日の降水確率は三〇%です」とあったら、
傘を持って出かけますか?
二〇%だったら? 七〇%だったら?
降水確率がどうであれ、
傘を「持っていく」か「持っていかない」か、
行動の選択肢は二つしかない。
傘を三〇%だけ持っていくことはできないのである。
人間は二分法が好きだ。
「陰と陽」「男と女」「右派と左派」「上と下」
「敵と味方」「我らと彼ら」などなど、
どの文化にも二分法はあふれている。
現実には、たいていの物事はもっと複雑で、
そんなにきれいに分かれるものでもない。

ほぼ日の学校「ダーウィンの贈りもの I 」で
講師をつとめてくださった
人類学者・長谷川眞理子さんの
新著から一節を引きました。
長谷川さんの講義でいちばん印象的だったのは、
ものごとを「丸ごと」見る姿勢。
行動心理学、細胞生物学、地質学……と
細かく分けるのではなく、全体を見る。
それはまさにチャールズ・ダーウィンがやったことで、
「ダーウィン大好き!」を公言する長谷川さんも
ずっとその姿勢で研究をつづけてこられました。

毎日新聞の連載コラムをまとめたこの本には、
「なぜダイエットは難しいのか?」
「『イヌが可愛い』は希望か?」
「思春期にはたくさん失敗しよう」
「『人を見る目』という能力」といった
幅広いテーマについての考えが短く書かれていて、
ある意味「余白の多い」読みものになっています。
言い換えれば、「あとは自分で考えてね」と
宿題を出されるようなもの。

なので、提案したいのは、散歩とセットで読むこと。
ダーウィンが思索のための散歩を日課としたように、
コラムを1本読んだら、
それについて考えるための散歩をする。
そんな組み合わせで読むのにぴったりの一冊なのです。

タイトルに「モノ申す」とある通り、
「科学者の世界の『産業革命』」など、
長谷川さんがいまの社会のあり方に対して抱く
危機感が随所にあふれています。

(つづく)

2020-04-17-FRI

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