ほぼ日の「生活のたのしみ展2025年」
でおひろめした、
fog linen workの「ボイラースーツ」。
このたび、受注販売にてお届けできることになりました。
じつは、この服、fog linen workの関根由美子さんと、
Roundabout & OUTBOUNDの小林和人さんが
一緒に作ったものなんです。
ボイラースーツといえば、もともとは、
英国のボイラー工の着ていたツナギの作業服をヒントに、
ウィンストン・チャーチルが
スーツ生地で仕立てたのがはじまりといわれています。
そもそもはメンズウェアだったものですけれど、
現代ではいろいろなブランドがそれぞれのデザインで
レディスウェアとして発表しています。
そんな中、小林さんと関根さんのボイラースーツは、
またひとあじ違う、ユニークなルックス！
どうやらそのアイデアのヒントは、
チェコ軍のツナギにあったらしいんです。
このボイラースーツ、一見、難易度が高そうですが、
たのしみ展の会場では、
試着した方のほとんどが購入してくださったほど。
女性はもちろん、男性にも人気だったんです。
今回、「ほぼ日ストア」で紹介するにあたり、
作り手の関根さんと小林さんに
この「ボイラースーツ」のことを
たっぷり語っていただきました。
小林和人（こばやし・かずと）
手仕事の味わいや背景を感じられる品揃えの
吉祥寺「OUTBOUND（アウトバウンド）」と、
機能的で美しい生活雑貨をそろえた
東京・代々木上原の「Roundabout（ラウンダバウト）」の店主。
自店の運営以外にも、富ヶ谷の日用品店「LOST AND FOUND」（ニッコー株式会社）をはじめとした商品選定業務、各種媒体での執筆やスタイリング、商品企画監修なども手掛ける。
関根由美子（せきね・ゆみこ）
ふだん使いをテーマに、リトアニア産の麻素材で。
シンプルなデザインのキッチンリネンやベッドリネン、
ウエアなど、日々の暮らしに寄り添う布製品と
雑貨を展開する、下北沢「fog linen work」のオーナー。
すべてのアイテムがオリジナル、
関根さんはそのデザインと企画を行なっている。
また、南インドの人たちの日常着
「ルンギ」の生地を使って
いろいろな商品を作るべく、あたらしいブランド
「miiThaaii」（ミーターイー）を立ち上げ、
自らが現地への仕入れに赴いている。
下北沢のショップでは
fog linen workとmiiThaaiiのオリジナル製品のほか、
インドのワイヤーバスケットや雑貨類、
世界各国のアクセサリーやインテリア雑貨を販売。
- 関根
- 「ボイラースーツ」というネーミングは、
小林さんがつけてくださったんですよね。
どんな意味を込められたんでしょう。
いわゆる英国的な「ボイラースーツ」とは
ちがうものですよね。
- 小林
- 原型にしたチェコ軍のツナギというのは、
整備の際に着用するために作られた服だと思うのですが、
でも航空機とかの整備だと
もっとテキパキした雰囲気になるだろうし、
このゆったりしたシルエットから、
なんとなくボイラー室で黙々としずかに保守点検している
イメージが思い浮かんだんです。
“ボイラー” という語感もいいなと思って、
「ボイラースーツ」の名前をつけました。
「ちょっとゆるめな余白のあるツナギ」というイメージです。
カジュアルすぎないんだけど、
かといってパリッともしていないので、
やっぱり「ボイラースーツ」というのがぴったりな気がします。
- 小林
- ツナギといっても、
これは幅広い着回しができる服なんです。
ベルトをつけてブラウジング（ウエストより上の部分に
ギャザーをつくって膨らみを持たせる）をしたり、
袖も７～８分丈で、スリットを入れたので、
まくって着られるようになっています。
- 関根
- たとえば中にきれいめのストライプシャツなんかを合わせて、
一緒に袖をロールアップすると、
襟元と袖口に柄がちらっと見えて素敵ですよね。
- 小林
- うん、いいですね！
ボタンも気に入ってるんです。
生地と同系色がいいですねって話していたら、
関根さんがこのボタンを選んでくださったんですよね。
これはどんな素材なんでしたっけ。
- 関根
- コロゾボタンといって、
コロゾ（象牙ヤシ）という木の実なんです。
以前はよく、シェルボタンを使っていたんですが、
最近はヨーロッパのほうで環境によくないという理由から、
生産ができなくなってきているんです。
コロゾはたくさん採れる実ですし、
もともとは白なんですけど、
生地に合わせて染められるんですよね。
プラスチックと違って、
木の風合いが感じられるのがいいところです。
- 小林
- このマットな感じ、すごくいいですよね。
リネンは特に、
経年するにつれていい風合いが出てくるので、
コロゾボタンともいいコンビネーションになるだろうなと。
- 関根
- ええ、それも着ていくうちのたのしみですよね。
足元は、小林さんはどんなものを合わせますか？
- 小林
- 今日は革のスリッポンを履いてきたんですけど、
こういった素材感のあるものを持ってきてもいいですし、
ローファーやストレートチップ（つま先に横一文字の
切り替えデザインが施された革靴）のような、
カチッとした靴も合うと思います。
- 関根
- ボイラースーツがきれいめだから、
きちんとした靴もかっこいいですね。
- 小林
- 夏は、レザーサンダルにも合いますよね。
僕は身長が178cmなので、
袖を通して上までボタンを留めると
丈がかなり短くなるんですけど、
175cm以上の方なら、
こんなふうに上半身を出して腰に巻くと、
丈もしっかり出して着ていただけます。
- 関根
- その着こなし、すごくかっこいいですよね！
落ちてはこないですか？
- 小林
- ボタンが留まっているところの上で
左右の袖部分を結んでから、
少し外に折り返すと落ちてこないです。
着心地の検証のために、
自宅から吉祥寺の店まで自転車で行ったんですけど、
まったく問題なく動けました。
乗るときは股下部分をちょっとたくし上げてサドルに座って、
降りるときは足を後ろに振り上げずに、
女性がされるようにサドルの前側から
足を横に下ろすようにすると、
股上がひっかからないです。
1970年代の漫画の『はいからさんが通る』にあった、
袴で自転車に乗るシーンみたいだけれど（笑）。
- 関根
- ふふふ。なるほど。
『はいからさん』では主人公の紅緒さんが
袴で自転車を漕いでましたものね。
- 小林
- こんなふうに下をパンツとして穿くと、
上は半袖のＴシャツでもいいので、
夏も着られますよね。
厚地なんだけど、
生地自体がわりとざっくりした素材なので、
暑すぎないと思います。
冬は下にタイツを重ねたりすれば、
オールシーズン着られるかなと。
- 関根
- それがリネンのいいところですよね。
このボイラースーツ、
田中美和子さんとコラボしたケサバックともよくマッチして、
別々な方にお願いしたとは思えないような仕上がりで、
すごくよかったなと思いました。
- 小林
- そうですね。
いいチームで作れたなと思います。
「生活のたのしみ展」では田中さんと一緒に
店頭に立たせていただいたりして、
楽しい時間でした。
- 関根
- 「生活のたのしみ展」の期間は、
ちょうど私が海外出張で不在にしてしまったんですけど、
たくさんの友人から
「お店行きましたよ」って連絡をいただいたんです。
みなさん楽しんでくださったみたいで、
私もすごくうれしくって。
- 小林
- 「生活のたのしみ展」って、
大人が本気で取り組む学園祭みたいな熱気があるので、
こういう形で参加させていただけて、
僕もたのしかったです。
お店同士の交流もあったりして、
CASICA（カシカ）さんのスタッフさんが何名か
ボイラースーツを買ってくださって、
そのまま店頭で着用してくださったのはうれしかったなぁ。
上はシンプルだけど、
裾を大胆にロールアップしてポイントになる靴下を見せる
という着こなしがおしゃれで、
こんなふうにも着られるんだと、
作った側も自信が持てました。
- 関根
- 意外と男性も買ってくださったとか。
- 小林
- そうなんですよ。
ケープもボイラースーツも、
意外と男性の方も買ってくださいました。
いろんな身長の方が、いろんな似合い方をしていて、
見ていてうれしくなりました。
- 関根
- そうですね。
ワンサイズですけど、
背が高い方は今日の小林さんみたいにパンツとして着たり、
小柄な方は裾をロールアップしてもシルエットが変わらないので、
いろんな身長の方に着ていただけると思います。
- 小林
- そうそう、たのしみ展でも、
ハンガーにかけていたら丈が長く見えたみたいで、
「ちょっと大きすぎるかも」
と言われる女性のお客さまが結構いらっしゃったんですよ。
でも、「ほぼ日」の担当の女性（158ｃｍ）が
これを制服にして接客してくださったので、
「あちらが同じサイズです」ってお伝えすると、
「そうなんですか？！ じゃあ大丈夫そうだから買います」
ってお求めいただけたりしました。
- 関根
- 先日会った男性の友人は、
身長が175ｃｍで細身なんですけど、
「すごく気に入ってよく着てます」って、
裾は折らずに着られてました。
丈がちょっと短めなんだけど、
おしゃれなスニーカーをあわせていて。
- 小林
- ああ、いいですね。
くるぶしを出して履ける丈だと、
スニーカーがほどよく見えてかっこいい。
そんなふうに、
僕たち作り手の想像を超えて、
着る方がいろんな着こなしを試していただける、
余白のあるプロダクトになってよかったです。
- 関根
- そうですね。
着る方の個性に寄り添う服になりました。
どうもありがとうございました。
- 小林
- こちらこそ。
またぜひご一緒しましょう。
（おわります）
2025-05-23-FRI
