世界の感じ方が少し変わるかもしれない
旅があるなら、行ってみたいと思いますか?

いろんな地域の方と関わる「ほぼ日あっちこっち隊」。
北海道では、増えすぎているシカの話をきっかけに
道東の西興部(にしおこっぺ)村にたどりつき、
さまざまな方と仲良くさせていただいています。

狩猟、釣り、きのこ狩りや山菜採りなど、
豊かな自然とともに、思い思いに暮らす人々。
あいまのおしゃべり。都市とは違う時間の流れ方。
固まっていた考えがほぐれてゆきます。

この魅力をいろんな方に紹介できたらと思っていたら、
エゾシカ旅行社さんのツアーへの企画協力のかたちで、
ほぼ日も関わらせてもらえることになりました。

知らない方も多い土地だと思うので、
ずいぶんしっかりめに紹介してみます。
あなたもぜひ、西興部に出かけてみませんか。

(写真=幡野広志)

前へ目次ページへ次へ

9. 「生きるとは」みたいなものを感じる。

 
紹介記事も終盤。滞在日のある夜、
ゲストハウス「ガコッパー」の和さん、
「エゾシカ旅行社」の中根さん、
ほぼ日あっちこっち隊の田中で話した
西興部の不思議な魅力の話をご紹介します。

中根
‥‥いま、こんなふうに夜、
あいた時間にみんなで話していますけど、
西興部に来て「ガコッパー」に泊まっていると
こういう時間も生まれるし。
田中
ここでの語らいという。
中根
そうですね。
こういうゆったりとした時間って、
作ろうと思って作れるものじゃないから、
ツアーに取り入れるのはすごく難しくて。
でも「こういうのがいいじゃない!」と思ってて。
旅行会社をやりながら、そんな時間を
提供できたらなという思いもあるわけです。
田中
それで言うと、去年このガコッパーに来たときに、
裏庭で焚火をした時間もめっちゃよかったです。
同じ時間をすごすことで、一体感も出て。
やっぱりいろいろ話して、みんな仲良くなるし。
和
あー、焚火よかったですね。
田中
とくに何をしたわけでもないんですけど。
肌寒い中で喋ってる人もいるし、
ただただぼーっとしてる人もいるし、
ひたすら飲んでる人も、
ずっと火に薪をくべてる人もいて。
都市で暮らしてる人たち、みんな実は
こういうことをやりたいんじゃないかな?
とはけっこう思いました。

和
そうですよね。火ってやっぱり最高で。
もちろん、毎回焚火をやれるかというと、
その日のぼくらの余裕のありなしとか、
お客さんの人数、雰囲気とかもあるんですけど。
だけど、そういうみんなで過ごす時間を
どう作れるかは、ぼくらも宿をやりながら、
いつも考えてることではあるんです。
今週だと、ガコッパーの裏庭で粘土を積み上げて、
窯をつくるワークショップを
やってますけど、そういうこともそうだし。
田中
あ、窯づくりもたしかに、そういう時間ですね。
みんなで一緒になって同じことをやって、
いい時間が過ごせるという。
中根
しかも窯ができることで、
「ガコッパー」自体でできることも増えますし。
和
最近、人間の生活に欠かせない
火や土や水などさえあれば、
そこからいろんなものがはじめられるって、
ちょっとわかってきたんです。
田中
西興部は、水系の魅力もなにかあるんですか?
和
水は、地下水はもちろん、
ウエンシリ岳とか、
ちょっと向こうに行ったところにある
拳骨(げんこつ)山の山水系もすごくきれいで。
ぼくらが西興部に住むことに決めた理由に、
水のよさはひとつありますね。
夏の水でも、いろんなのがあるんです。

中根
いやあ、そういうのを聞いたら、
やっぱり来たくなりますよね。
水のことなんて、日常的に触れていても、
考える機会がないですから。
田中
ないですね。
中根
それがここへやってきて、
「そうなんだ、全部違う水だよな」とか
聞いた話が、いろんな気づきの
きっかけになるかもしれないし。
和
ここでの生活自体が、そういうことを
いろいろと考えさせられる時間でもあるんですよね。
火、土、水とかの話もそうだし、
狩猟、畑、作物とかもそうですけど、
人間が生きていく基本のようなことを
じっくり体感しようと思ったら、
西興部村はほんとにもう、
すごくたのしめる場所だと思います。
田中
西興部って、北海道の別の地域の
人たちからしても、
「ここはちょっとほかと違うぞ」
みたいな感じがあるんですか?
中根
それはそうだと思いますね。
たとえば札幌なんて、生活が完全に違うし。
和
面白いのが、札幌や旭川などの
都市で暮らすライダーの人が
泊まりにきてくれることも多いんです。
そのとき、最初に来る理由はやっぱり
「ここを拠点にオートバイで走るのは面白そう」
とからしいんです。
だけど、実際やってきて、ここでの生活とか、
僕らのワークショップやイベントに関わるなかで、
「この場所はすごくいろんな気づきがある」って
言いはじめる人がときどきいて。
田中
へぇーっ。

和
忙しく働くなか、無理やり作った休みに
バイクで北海道を走りまわるだけで
たのしいんだけど、
「ここに来たら、自分の持っていた
価値観みたいなものがひっくり返る」とか言ってて。
「あ、生活ってこれでいいんだ」みたいな発見が
あるみたいなんですよね。
中根
おおー。
田中
西興部にはいったい、なにがあるんですかね?
和
うーん‥‥でも、具体的になにがあるとかは
けっこう言いづらいんです(笑)。
西興部村の良さって、ほんとに、
来てみなきゃわからないことだらけじゃないですか。
中根
そうかもしれない(笑)。
和
この場所にしても、ぼくらは観光地や名所を
作ったわけでもないし、
ただ、廃校になった校舎を再利用して、
自分たちが暮らしながら
ゲストハウスにしただけなんです。
でも、「なんかおもしろそうだから」って
あれこれ作ったり、ときどきイベントとかを
やるようになったら、なんとなく集落みたいに
人が集まるようになった。
それだけなんですよね。
田中
たしかに集落感、ありますね(笑)。
和
だからわかりやすい観光とかは別になくて、
暮らしているだけといえば、暮らしてるだけ。
むしろ自分自身が、この学校に暮らしながら
お客さんやこの土地からいろんなことを
勉強をさせてもらってる、みたいなノリですよ。
田中
だけど、この場所がいいのが、
集落なんだけど、全然クローズドじゃないというか。
「こういう人じゃないと来れません」
みたいな感じはまったくなくて、誰でも来れる。
過ごし方も自由で、
夜も、こんなふうにみんなで喋っててもいいし、
別に普通に宿泊だけしてもいいし。
和
その意味ではここはもう、自由ですね。
「こうしなきゃいけない」はなくて、
お客さんもみんな、過ごし方はフリー。
ソロのライダーの旅人が多いですけど、
家族も多く来てますし、ハンターさんも来るし。
こうやってね、なんかほぼ日さんとかもいて。
田中
こういう、よくわからないような人たちも来て。
和
よくわからないような人たち(笑)。

田中
旅行会社をされている中根さんとしては、
どのあたりに西興部村の魅力を感じてますか?
中根
いわゆる一般的な観光ツアーに行くとして、
もちろんたのしいんだけど、
そのなかで自分の価値観とかが影響を受けることって
そんなにないと思うんですよ。
だけど西興部村で過ごす時間ってなにか、
自分の深いところに響いてくる気配が
ちょっとある気がするんです。
今回のツアー? プログラム?でも、
そういうものを渡せたら最高だなあと思うんですけど。
田中
「2泊3日のワークショップに参加する」
みたいな感じもあるかもですね。
中根
あ、そうですね。
和
ちょっとホームステイに近い感じも
あるかもしれないです。
この村のリアルなライフスタイルに、
そのまま触れる時間。

田中
ホームステイ感、ありますね。
そしてホームステイみたいなことって、
実は大人になっても
ちょっとやりたい気持ちはあるんですよ。
中根
そうですね、そうですね。
和
だから、なんでしょうね。
西興部村って、
北海道で3番目くらいに人口が少ない村で、
たぶん観光が無い場所と思われていて、
観光要素が極小で、観光案内所すらないんです。
そこで「じゃあ何があるんだよ?」
となったときに、まずは、狩猟があり。
プラス、狩猟に関わって生きている
順平さんだったり、僕らだったりの村人がいて。
その生活には、肉だったり、野菜を作って
持って来てくれたり、地域の資源を活かしながら
生きている人たちもいて。
狩猟とか採集とかって、
都会の人からすると非日常だと思うんですけど、
そういう生活に触れて、たのしんでもらうっていう。
田中
いま、自分自身が都市で暮らしながら
日常があまりに情報中心すぎるから、
そうじゃないことをしたい思いがけっこうあるんです。
「情報」より「体感」をやりたい。
そっちがちょっと足りない。
中根
ほんとにそうだと思います。
誰かの写真を見て終わりとかじゃなくて、
自分でわざわざ行って、体験するようなことがしたい。
和
そうですね、情報は情報でしかないですから。
で、ここだと暮らしのなかに
五感を働かせる部分が多くて、
食とか水とか土とか空気とかに
実際触れて感じるおもしろさもあって。
スマホやPCの画面からでは
まったく得られない刺激を得ることができて。
出会いとかもあって。
そこで「生きるとは」みたいなものを感じる。
そういう旅先って、やっぱり自分も
行ってみたいなあと思いますけどね。

中根
わかります。
和
そういう意味では西興部村って意外と、
北海道の中でも最後のほうに残る
いい場所という気もします。
何もないがゆえに(笑)。
田中
いわゆる観光はないけど、
「ぜひ行ってみてください」と思える、
不思議な土地?
中根
そうですね。
ただ、おもしろがるにはちょっとコツとか、
きっかけがいる場所かもしれないので、
そこは今回、ツアーというかたちで、
橋渡しができるかなと思っているんですけど。

(つづきます)

2026-04-10-FRI

前へ目次ページへ次へ
  • こちらは、株式会社ほぼ日がさまざまな地域の方と
    コンテンツを作る「ほぼ日GO!」との連動企画です。
    読み物やイベントをはじめ、さまざまな企画を
    おこなっていきますので、ぜひご覧になってみてください。