古田

フェイクニュースは口コミでも広がります。
ぼくらが国際大学グローコム（GLOCOM）と一緒に
行った調査で、
偽情報を見てもらった後に、
情報をシェアした場所を聞いてみたんです。

ダントツで多かったのが家族や友人との口コミ。
ソーシャルメディアよりもメインの流通経路なんですよ。

（資料提供：日本ファクトチェックセンター）

──

そういえば思い当たります。
びっくりする情報を知ったとき、
「〜なんだって」などと良かれと思って
家族や友人に話してしまうかもしれません。

古田

新型コロナウイルス感染症が流行った頃を
思い出してもらいたいんですけど、
家族や友人から
「赤十字の人からの情報で、
うがいをしたらいいらしいよ」とか、
「マスクはきかないらしいよ」みたいな情報を
聞きませんでしたか？

家族や友人などの近しい人の話は信頼されるんです。
「情報経路で何をいちばん信用しますか？」
という調査でも、
いちばん信用度が高いのは「家族や友人」の情報でした。

「なぜその情報をシェアしたんですか？」という調査では、
いちばん多い理由は「情報が興味深いと思ったから」。
２位は「情報が重要だと思ったから」。
つまり善意で、
偽情報や誤情報をシェアしているんですよね。

古田

あなたの家族や友人は悪い人ではないけれど、
「大切な情報だから、あなたにも知ってもらいたい」
と思って、
善意から間違った情報をシェアすることがある。
こういうことが十分あり得ることを
知ってほしいと思います。

──

怖いですね、ほんとに。
自分がフェイクニュースを大切な家族や友人に
拡散しているかもしれないと思うと怖い。

ちなみに、メディアリテラシー教育が
うまくいっている国の例はあるんですか？

古田

北欧諸国は成功事例として取り上げられることが多いです。
小学校からメディアリテラシー教育をやっていて、
社会人にも行きわたるような努力をしているため、
偽情報に対する耐性があると言われています。

ヨーロッパでは、
ロシアからの偽情報を警戒しています。
ロシアがヨーロッパ諸国の選挙に影響を及ぼそうとして、
偽情報を拡散させる事例が多数報告されているんですね。

でも偽情報を完璧に抑え込んでいる国なんて、
ほとんど存在しません。
なぜかというと、表現の自由があるし、
人それぞれの思想信条がある。
そんな社会ではいろいろな意見があって当然です。

そうすると「意見の違い」なのか、
それとも「事実関係が間違っている」のか、
グレーゾーンが存在するんですよ。

ぼくたちもファクトチェックしながら
「これはファクトというよりオピニオン（意見）かな？
対象外にすべき？」と日々悩んでいます。
なので、フェイクニュースを抑え込むのは難しい。

フェイクニュースを抑え込める国もあります。
それは、政府の公式発表が圧倒的に強い、
いわゆる権威主義的な国です。
表現の自由や言論の自由がないので、偽情報だけでなく、
そもそも情報が流れにくい国です。

──

それだと生活しにくいですね。

古田

そうですよね。
日本がそういう国になるのは嫌ですよね。
言論の自由は大切だし、
自分の好きなことを言いたい。

言論の自由がある民主主義国家こそ、偽情報に弱い。
これは悩みどころです。

──

そうか。言論の自由があるということは
偽情報ともうまくつきあっていかないといけない。

古田

そうなんですよ。