一般社団法人HASSYADAI socialが主催する
「CHOOSE YOUR LIFE FES #18歳の成人式」は、
18歳のための「新しい成人式」です。
今年、そのトークステージに登場したのは、
岸田奈美さん、アフロさん、
ラランドのニシダさんでした。
３人が「先輩」という立場で、
それぞれの挫折や迷走、
「あーっ！」と叫びたくなる思い出から
必死に掴み取ってきた「知恵袋」を、
惜しみなく会場へ贈った70分。
ステージ上も観客席も大いに盛り上がったトークを
よみものでお届けします。
司会は、ハッシャダイソーシャル共同代表理事の
三浦宗一郎さんです。
岸田奈美（きしだ・なみ）
1991年生まれ、兵庫県神戸市出身。
関西学院大学人間福祉学部
社会起業学科在学中に
株式会社ミライロの創業メンバーとして加入、
10年に渡り広報部長を務めたのち、
作家として独立。
テレビ出演、ポッドキャスト番組、
脚本執筆など活躍の場を広げている。
著書にドラマ化もされた
『家族だから愛したんじゃなくて、
愛したのが家族だった』をはじめ、
『国道沿いで、だいじょうぶ100回』（小学館）、
『もうあかんわ日記』（ライツ社）、
『飽きっぽいから、愛っぽい』（講談社）など。
2025年２月６日に
『もうあかんわ日記』文庫版（小学館）を発売。
X：https://x.com/namikishida
note：https://note.kishidanami.com/
ニシダ（にしだ）
1994年生まれ、神奈川県出身。
お笑いコンビ「ラランド」のメンバー。
2025年1月31日、KADOKAWAから
2作目となる小説集
『ただ君に幸あらんことを』を出版。
X：https://x.com/mouEyo_Nishida
note：https://note.com/rrndnsd
三浦宗一郎（みうら・そういちろう）
一般社団法人HASSYADAI social理事。
1995年生まれ。愛知県出身。
中学卒業後、
トヨタ自動車の企業内訓練校・
トヨタ工業学園に進学。
卒業後、トヨタ自動車に就職し、
自動車製造にかかわる。
2017年に内閣府「世界青年の船」日本代表に選出。
その後、トヨタ自動車を退職し、
約20カ国を旅する。2018年より
株式会社ハッシャダイ入社、
ヤンキーインターンの講師を務め、
2020年より一般社団法人HASSYADAI socialを
設立し、共同代表理事に就任。
一般社団法人HASSYADAI social HP：https://social.hassyadai.com/
- 「恋愛」の次に、18歳のみなさんが選んだ
トークテーマは「自分」でした。
- アフロ
- 「自分」いってみましょうか。
（１枚取り出して）‥‥よいしょ！ 読み上げます。 - 「夜になると過去のことを思い出して、
泣きたくないのに涙があふれてしまう日があります。
自分のしたことは自業自得だとわかっているけれど、
どれだけ後悔しても足りなくて苦しくなります。
そのつらさから、
『なぜ私はいま生きているんだろう』
『消えてしまいたい』と思うことがあります。
過去を完全に忘れることはできないと思います。
ですが、もし少しでも楽になる方法があるなら
知りたいです」
- 三浦
- 質問をくださった方、ありがとうございます。
こちらに答えていきたいと思います。
- アフロ
- ニシダさんは、
過去のことを思い出して苦しくなること、
ありますか？
- ニシダ
- あります、あります。
ネタがめちゃくちゃ滑ったことや、
嫌な態度をとってきた人のことは、
しょっちゅう思い出します。
よかったことは
写真や動画を見ないと思い出さないのに、
悪いことは目をつぶった瞬間に
ファ～っと記憶が蘇るんですよ。
- 岸田
- 私も、ものすごく恥ずかしかった出来事を
思い出して、「ああー！」って
言っちゃうことがよくあります。
- アフロ
- 思い出すと恥ずかしいことは、僕もあります。
昔、バンドマンがいっぱいいる楽屋のなかで、
ほかのバンドマンに「ただ者じゃないな」
と思われたくて、
ずーっと楽屋の端っこでリンゴかじってたんです。
- 岸田
- あはははは。
- ニシダ
- センスの出し方がすごいな。
- アフロ
- 文庫本を読みながら、獣みたいな目をして
リンゴかじって。
ふと宙を見上げて
「ああ、そういうことか」ってつぶやいてみたり。
- 会場
- （笑）
- アフロ
- 当時のことを思い出すと、夜、
「あー！」となります。
- ニシダ
- そういう記憶は、ほとんどの人にありそうだなぁ。
でも、この質問をくれた方は
「消えてしまいたい」とまで言っているから、
きっとすごくつらいんですね。
- 岸田
- この方は「泣きたくないのに泣いてしまう」と
おっしゃっているけれど、
私は、人体は無駄なことをしないと考えていて。
きっと、この方の身体にとって必要なことだから、
涙が出るんだと思います。
ある記憶を思い出して悲しむのは、
いつかその記憶を自分のなかに取り込んで、
心身を健やかにしていくために
必要な行為なのだと思う。
- ニシダ
- ああー、なるほど。
- 岸田
- 「なぜ生きてるんだろう」
「なぜあのとき、あんなことをしたんだろう」
という問いから、
答えが出てくることってほとんどないです。
あとから逆算して
「私はこれがやりたいからこの仕事を選んだんだ」
などと理由を見つけることは多いけれど、
本当の理由はもっと衝動的だったり、
偶然だったりします。
この方のつらい記憶も、もしかしたら
完全には「自業自得」ではなくて、
偶然起こってしまった要素もあるかもしれません。 - だけど、この方の記憶は、
きっと消化に時間がかかるものなんですよね。
だから、この方が
「いくら『なぜ』と考えても意味がないな」
という結論にたどり着くには、
思い出して泣くサイクルが必要だと、
身体が判断したんじゃないかな。 - 人間は生きていくうえで「物語」を必要とします。
自分の過去を物語として受け入れることで、
前に進んでいける。
きっと、質問者さんは自分の物語を
取り込んでいる最中だから、
「これからずっと過去にとらわれて、
楽になれないのかな」と心配しなくても、
大丈夫だと思います。
- 三浦
- お三方ご自身は、どうしようもなくつらい日を
どうやって乗り越えていますか？
- アフロ
- 僕は、もう、歌詞書くよ。
- 三浦
- そうか。
- アフロ
- すごく不謹慎かもしれないけれど、
「どうしようもなくつらいとき」って、
物語を書いたり、曲をつくったりする行為が、
一番はかどるときだと思います。
芸術の役割は、
見たり聴いたりする人を喜ばせるだけじゃなくて、
作品をつくる側が癒されることにある気がしていて。
だから、創作という行為に頼ってみたらいいと思う。
人に見せても、見せなくてもいいです。
ノートに書いても、
声に出して録音してみてもいいです。
それって、つまり表現なんです。 - 歌詞を書くという表現によって癒されてきて、
結果としてそれが仕事になった、
僕のような人間もいます。
- ニシダ
- 書き出すのはいいですよね。
書いたら、出来事や気持ちが自分の外に出るから、
いじれるんです。
僕は芸人なので、
おじいちゃんが亡くなったときのことも、
笑い話として話したりします。
ちなみに、そのとき、
親戚が連れてきたチワワが
棺桶に入っていっちゃって、
おじいちゃんが毛だらけになって。
しかたないから僕、
おじいちゃんに１回コロコロかけたんですよ。
- 会場
- （笑）
- ニシダ
- こうやって、なにかしらおもしろポイントを探して、
人に話してみたり。
自分の外の世界でいじっていくと、
楽になる気がします。
- 三浦
- 岸田さんがおっしゃっていた
「物語が必要」というお話は、
いまのニシダさんのお話に近いのでしょうか。
- 岸田
- 近いと思います。
私の場合は、つらかったときに、
よく知らない人から
「かわいそうだね」「がんばってるね」
と言われたら、めっちゃムカついたんです。
相手に悪気がないのはわかっていても、どうしても。
私の悲しみも幸せも私のものだから、
勝手に私の代わりに悲しまないでほしいし、
悔しがらないでほしいと思っていました。
でも、重い話だから、友だちに言うのも難しくて。
なので、「もうおもしろおかしくするしかない」と、
つらかったこと、恥ずかしかったこと、全部含めて、
ちょっと上の視点から自分を見てみたんです。 - そうやってカメラを上にずらしたら
「私、すごくがんばってたな」と思えました。
過去をエッセイにして、人を笑わせられたことで、
「私の過去はおもしろかった」ということが
自分にとっての真実になっていきました。
自分のなかで再生される物語自体が、
苦しいものからおもしろいものに変わったんです。
（明日に続きます）
2025-07-13-SUN
-
アフロさん＆岸田奈美さんの
アフタートークが聴けます！
「CHOOSE YOUR LIFE FES #18歳の成人式」の後日、
岸田奈美さんからご連絡がありました。
「あのあと、楽屋でアフロさんと話してたら、
ステージ上で答えきれなかった質問の回答を、
ふたりでガチで語ってしまいました」と。
それ、たぶん、みんな聞きたいです！ ということで、
ハッシャダイソーシャルのPodcastで
おふたりのアフタートークを
配信することになりました。
本編と合わせてお聴きいただくとよりおもしろいので、
連載終了後は、
ぜひこちらの音源をおたのしみください。
Podcastはこちら