ジャズやロック、笠置シヅ子さんのブギウギなど
さまざまなジャンルの音楽に挑んできた
演歌歌手の神野美伽さんが、
こんどは「シャンソン」を歌おうとしています。
数千人規模の会場で演歌を歌っていたとき、
人知れず、
数十人の前でシャンソンを歌っていた神野さん。
コロナと手術で「歌」を禁じられたとき、
神野さんを救ったのが「オー・シャンゼリゼ」。
そんな神野さんが歌う「はじめてのシャンソン」、
本番は11月15日、会場は赤坂の草月ホール。
チケットは、まだ、手に入ります。
神野さんのシャンソン、ぜひ聞きに来てください。
きっと、すばらしい会になります。
担当は「はじめてのシャンソン」係の奥野です。

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第1回  怖いけど、知らない自分に会えるから

──
本番まで、いよいよあと1ヶ月ほどです。
神野
あっという間ですね。
笹尾さんと出会ってからの時間を思えば、
それなりに経ってるんですけど。
──
最初は去年(2024年)の11月ですから、
10カ月とか、ですか。
神野
あのとき笹尾さん、
来年の11月にシャンソンの会をやろうよ、
なんてよく言ったなって思います。
──
ほんとですね(笑)。
いちおう読者のために説明すると、
コロナ禍で、
大きな手術をしたばっかりの神野さんが、
首にコルセットを巻いて、
声を出すのも大変な状態なのに、
インターネットの配信で
「オー・シャンゼリゼ」を歌った。
その姿に感動した画家の笹尾光彦さんが、
「はじめてのシャンソン」をやろうよと、
提案してくださったんです。

神野
でも、本当に、ここまで来ちゃいました。
この10カ月、わたし、
いろんなことを立て続けにやってきてて。
──
はい、笠置シヅ子さんが主人公の音楽劇
「SIZUKO」に主演なさって、
笠置さんのブギで、会場を沸かせたり。
神野
この10月には、年に1回の、
恒例の演歌のコンサートも控えているんです。
いままでずっと‥‥
もう何十年も続けてきたコンサートで。
──
はい、何度もうかがっています。
演歌の「カッコよさ」を教わりました。
神野
言うまでもなく、大切なコンサートなんです。
わたしの基本だから。
本来、それをやり切るだけでも、
かなりのエネルギーが必要なんですけど、
そこから1か月後に、
この「はじめてのシャンソン」がくるって。
──
よく考えたら、とんでもないです。
神野
演歌が終わるまでは、演歌に全集中。
そこから1ヶ月で一気に仕上げるつもりです。
と、言いながら、
12月にはジャズのコンサートもあるんですよ。
そっちの選曲や打ち合わせなども、
いまぜーんぶ、同時並行でかぶってきていて。
──
笠置シヅ子さん、神野さんの真骨頂・演歌、
シャンソン、ジャズ‥‥ひええ。
神野
ジャズはね、名古屋の中日ホールでやります。
3日間ジャズだけのコンサート。
去年、はじめて1日だけ出させてもらったら、
その日のうちに、
「じゃあ、来年も」って決まっちゃって。
さらに来年2026年の1月には、
新宿文化センターで演歌のコンサートがあります。
──
演歌→シャンソン→ジャズ→演歌‥‥!
神野
スケジュールが、
どんどん打ち合わせで埋まっていくんです。
ありがたいことです。
いろんなご縁をいただいているわけですから。
なかでも「SIZUKO」では、
とにかくすごいエネルギーを使ったんですが。
──
はい。まさしく圧巻のステージで、
会場も大盛り上がりでした。涙も出ました。
神野
そうやって目の前の課題に全力で取り組んで、
すべてを投入して、
終わったらすぐに切り替えて、また次の準備。
こう言うと慌ただしいですけど、
すごく楽しみにしてるんです。シャンソンも。
──
おお! ぼくらも楽しみです。
神野
まだ見たことないのわたしに絶対、会える。
そんな気がしています。
いまはまだ、まったく想像がつかないけど。
演歌、ジャズ、ブギ、ロック‥‥
シャンソンは他のどれより「見えない」ぶん、
「怖さ」や「恐怖感」と、
「楽しみ」の気持ちが入り混じっています。

──
やっぱり「怖さ」は、あるんですね。
神野
もちろんもちろん。恐怖ですよ。いつだって。
なんでこんなことを、
こんなにも長く続けてるんだろうと思います。
もうね、身体にわるいんです(笑)。
でも、じゃ何で辞めないのかって聞かれたら、
「一瞬のよろこび」を知ってるから。
──
一瞬のよろこび。
神野
うん。
──
それって、どういうものですか。
神野
わたしの知らなかったわたしに出会えるんです。
新しいことに挑戦するたび。
お客さまが歌を聴いて感動してくださることも、
もちろん、心からうれしいです。
でも、それに加えて、
自分にとっての高い山を登り切ることができた、
怖くて仕方のない挑戦をやり遂げられた、
そのときの感動、そのときのよろこびですよね。
──
なるほど。
神野
でも、まさかここへきて、
シャンソンを歌うだなんて思ってもみなかった。
もちろんね、たとえば1曲や2曲くらいなら
「シャンソンです」とは言わずに
歌ったことはあるんですよ。これまでにも。
──
ええ。
神野
わたしは、「歌」というものをお借りして、
自分の気持ちや、
そのとき言いたいことを表現してきました。
わたしには歌うことしかできないから。
で、そのなかには「シャンソン」もあった。
──
「オー・シャンゼリゼ」とか。
神野
そうです。その「オー・シャンゼリゼ」を、
自分で歌詞を書いて、
演歌のコンサートで歌ったこともあります。
でも「シャンソンだけ」のコンサートを
やることになるだなんて。
やっぱり、まったく思っていませんでした。
──
昨年、渋谷で「赤の画家」と会うまでは。
神野
はい。あの日、笹尾光彦さんと会うまでは。
 
(明日へ続きます)

SIZUKO! QUEEN OF BOOGIE
ハイヒールとつけまつ毛
(2025年8月@東京ドームシティ)

ブギの女王・笠置シヅ子さんを演じ、笠置さんの曲を歌いまくった舞台「SIZUKO」より。2019年に大阪で初演後、その後の公演がコロナ禍で中止になってしまったのですが、今年2025年に待望の再演を果たしました。動画は東京公演のようす。大いに盛り上がりました。(奥野)

2025-10-24-FRI

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